軽食の店・ルビーでAランチ
ホテルを後にして、タクシーで那覇へ向かう。
小一時間ほどかかるが、その間運転手さんがさまざまな話をしてくれた。子供のころ、アメリカー(米兵)に撃たれる危険を冒して基地内に缶詰を盗みに行った話、貧しく、背も低かったためにいじめられたこと、集団就職で京都に出て、働くうちにボディビルに出会って体を鍛えるようになり、沖縄に戻って県大会で優勝したこと、見せるだけの筋肉ではないことを示すために、今は短距離走にも凝っており、100m11秒台で走れること、子供たちは自分のことを尊敬してくれていること、貧しい時代に自分を含め4人の子供を必死の思いで育ててくれた母親は今も健在であること・・・。沖縄の戦後の歴史、そして沖縄県民の苦労、そして沖縄の家族というものを考えさせてくれたいい話だった。個人タクシーの方で、名刺もいただいたので、次の機会にもぜひお願いしたいと思う。
さて、那覇での残り少ない時間、何をするか。自分は、昨年やり残したことをここで済ませようと考えた。
それは、「Aランチ」を食べること。
昨年の沖縄食堂めぐりで、食べ逃したメニューが「Aランチ」である。沖縄の食堂には、たいてい「Aランチ」「Bランチ」「Cランチ」があるが、これらはだいたい構成が決まっている。Aランチはカツにハンバーグにその他揚げ物っぽいおかずがどっさり出てくる。Bランチだとそこから何か減る。Cランチだとさらに減る。女性とかだと、このぐらいでもまだ多いぐらいの量だから、Aランチのボリュームはほとんど暴力である。
一説によると、米兵向けに、注文しやすいようにAとかBとかのメニューを作り、アメリカ人はこういうものが好きなんだろう、というイメージで構成されたものらしい。
そのAランチを去年食べなかったことをこの一年間ずっと後悔していた。それでこの日はAランチに費やすことに決めたのだ。
店は、「デイリーポータルZ」の林雄司さんのレポートにも出てくる、「軽食の店・ルビー」に決めた。軽食の店と言いながらぜんぜん軽食ではないのがこの店の特徴らしい。
Aランチの食券を780円で買う。沖縄の食堂において、この値段は飛び抜けて高い。
まずスープが出てくる。林さんのレポートにある「上等なスープ」である。ひと昔前の中華料理店でコースについてくるスープみたいな感じの、たまごスープだ。嫌いじゃない。
スープを飲み終えると、Aランチのお出ましだ。
手のひらよりでかいトンカツ、主役級なのに脇へ追いやられているハンバーグ、ハムにポークにたまごにウインナー、千切りキャベツとびっしり敷き詰められたマカロニサラダ。見ているだけで嬉しくて笑いがこみあげてくる。
確かにこのボリュームはすごい。しかし、カツは面積はあるが厚さはそうでもなく、ハンバーグも柔らかいので、意外にスムースに胃に収めることができた。昨年、北谷の「なじみ食堂」で見たAランチはさらにボリュームがあった。あれは食いきれない。絶対に。
というわけで、御飯を残してしまったがおかず部分は完食。
なんだ、御飯を残してるじゃないか、と言うご批判は甘んじて受けよう。しかしこれには理由があったのだ。別に大人の分別を身につけたわけではない。
その理由というのは、
空港でA&Wに行きたかったのだ。
沖縄フードの名残を惜しむかのように、ハンバーガーをサロンパス味のルートビアで流し込む。うむ、満足だ。思い残すことはない。
ま、そのあとロビーでソフトクリームも食べたけどね。
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