「劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生! / 電影版 獣拳戦隊ゲキレンジャー ネイネイ!ホウホウ!香港大決戦」
「特捜戦隊デカレンジャー」以来、日曜朝の番組は「響鬼」がちょっと面白かったぐらいでいまいちヒットがなかったが、今年は久しぶりに毎週欠かさず観るタイトルがある。「仮面ライダー電王」だ。
当初、制作が正式発表される前、そして基本的なコンセプトだけが明らかになった段階では、「こんどの仮面ライダーはバイクでなく電車に乗ってやってくる」という衝撃的な事実に大きな注目が集まった。「変身はスイカでするらしい」「電車がない沖縄ではどう戦うのか。移動はゆいレール沿線だけに限られるのか」とネット上でも虚々実々の議論がヒートアップした。
佳作になっている要因は、何といってもコメディータッチの作風が狙いどおりにツボにはまったことだろう。最初はなんか狙いすぎだなあ、というきらいもあったが、それが大ぶりにならずに着実に安打を重ねてくる。そのうちすっかりその雰囲気に愛着がわいてしまった。
最高なのが、時空を越える列車、「デンライナー」食堂車でのやりとりで、ここにいつも主人公と合体して仮面ライダーになる複数のイマジンという未来人たちが、文字通りだべっている。その狭い一室の雰囲気はさながら「部室」だ。ここでのイマジンたちの掛け合いが、声優たちの職人芸にも助けられ、上質のシチュエーション・コメディー(シットコム)のような面白さを醸し出すのだ。
このまま最後までシリアス路線でいくのかどうかは分からないが、途中で主人公の姉が婚約者をなくした悲しいエピソードが明らかになり、その婚約者と同じ名前の青年が登場したので、いよいよシリアスな展開になるのかと思ったら、ぜんぜんそんなことにはならなかったのでびっくりだ。それどころか、この青年と、お付きのイマジンがBLっぽい関係だったりして、ますますヘンな方向に向かいつつある。
さて、映画について。この映画は全体で100分ほどで、最初の30分ほどが「ゲキレンジャー」、残りが「電王」という構成になっており、途中休憩はない。
ここから先はばれますからご注意ください。
まずゲキレンジャー。完全に大人向けだった「特捜戦隊デカレンジャー」、完全に子供向けだった「魔法戦隊マジレンジャー」、誰に見せたいのかよくわからなかった「轟轟戦隊ボウケンジャー」と比較すると、ゲキレンジャーは基本的に子供向け、しかし大人だけがひっそりと楽しめる要素を散りばめてある、というところだ。その大人の楽しみの最たるものは伊藤かずえの出演である。個人的には伊藤かずえ以外に見るところがないので、ふた月ほどでリタイアしてしまった。
なので劇場版もさほど期待はしていなかったが、これが意外に面白かった。悪役の助手としてインリン・オブ・ジョイトイが登場し、子供が見ている前で容赦なくM字開脚を披露。それにつられてか、レギュラーである平田祐香もサービスショットを提供してくれている。やはりゲスト出演の小野真弓は、彼女の最大の萌えポイントである背の低さをうまく活用してナイスな演技をしていた。まあ、見どころはそのへん。悪役に石橋雅史が出ているのもスーパー戦隊ファンには嬉しいところだ。それにしても理央&メレがゲキレンジャーと共に戦うという展開には驚かされた。恐らくテレビシリーズの最後はそうなるのだろうな、と想像していたが、映画でそのカードを切ってしまった以上、別の方向性が用意されているのかもしれない。
続いて電王。やや肩に力が入りすぎたか、いつものまったりした雰囲気が薄く、吹き出してしまうほどの笑いも少なめ。しかし、スペシャルであることを十分に意識しており、それも電王らしく、少々斜に構えたスペシャルぶりを見せている。その典型は、設定上ありえない、あってはならない仮面ライダー4形態の揃い踏み。これは設定を自ら否定しているようなものだが、あえてそうすることで作る側が面白がっているフシがある。
設定や、シリーズのお約束、フォーマットを破ったり、それをネタにしたりするのはどちらかというとスーパー戦隊がよくやることだが、電王ではときどきそういうセリフもお目見えする。今回も、変身しようとするところで敵の攻撃を受けたモモタロスが「変身を邪魔するのは反則だろ?」と言うシーンがある。
ゲストとして、水戸の生んだスーパースター渡辺裕之が出演。電王を上回る力を持つ敵役「牙王」を演じている。いつも何かを食べている、というキャラ設定があり、なんとなく劇団☆新感線の「星の忍者」に出てくる、デーモン小暮閣下も演じた「愛喰我王(あいくらいのがおう)」を思い出した。
相当考えて臨んだという役作りは、どうやら「大人の余裕」を感じさせるものだったようで、いつもの渡辺裕之なギトギトしてメラメラしてウホな感じとは一線を画していた。あまり感情を表に出さず、薄ら笑いを浮かべている悪役。なかなか印象的な演技だった。
総じて、何が何でも劇場に行け!というほどの傑作では両編ともなかった(電王のラストシーンは、ちょっと感動してしまったが)。だが、子供に連れられていやいや行ったお父さんも、十二分に楽しむことができる作品であるのは間違いがない。
また、平田祐香や白鳥百合子といった、ベーシックな美人さんはやはりテレビよりもスクリーンのほうが映えることが確認できた。女優目当てで行くのもいいだろう。関係ないけど、東京ドームスカイシアターのゲキレンジャーショーも、撮影終了後の秋以降はキャスト出演があるだろうが、ぜひ伊藤かずえや平田祐香にも出演してほしいものだ。
「劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!」WEBサイト
「電影版 獣拳戦隊ゲキレンジャー ネイネイ!ホウホウ!香港大決戦」
WEBサイト
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント