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2007年6月 9日 (土)

四季「ジーザス・クライスト=スーパースター」ジャポネスク・バージョン開幕

ジーザス・クライスト 柳瀬大輔
イスカリオテのユダ 芝 清道
マグダラのマリア 高木美果
カヤパ 青木 朗
アンナス 明戸信吾
司祭1 阿川建一郎
司祭2 田辺 容
司祭3 川原信弘
シモン 神崎翔馬
ペテロ 飯田洋輔
ピラト 村 俊英
ヘロデ王 下村尊則

ジーザス・クライスト=スーパースター(ジャポネスク・バージョン)が9日、初日を迎えた。このバージョンを観るのはこれで4回目。前回はこのとき。その前は四季劇場・秋のこけら落としだから98年。その前はいっきに遡って茨城県民文化センターで観た87年の全国公演だ。この全国公演と、それに先立つ日生劇場の公演でこの初演版の演出が久しぶりに復活し、当時は「江戸版」と言われていた。そのほうが短くていいので自分も江戸版と呼ぼう。

1987年と言えば、レ・ミゼラブルの初演を観たのもこの年。それ以来自分は劇場に足を運びだしたのだ。あれから20年も経つのか。俺も年をくったものだ。体重以外の成長は見られないが。

もちろん、思い出深いだけでなく、大好きな演目のひとつでもある。セリフや展開の面白さではなく、純粋に演技と演出とで勝負する作品ではあるが、60年代の分かりやすいロック、1時間40分という短い上演時間、そしてキリスト教徒ならずとも知っている聖書をベースにしたシンプルな物語にも助けられ、決して敷居は高くない。「アクビの出ない芸術的な作品」といったところだ。

キリストの物語にもかかわらず、白塗りに隈取り、舞台セットがわりの大八車、尺八や鼓など和楽器とロックのコラボレーション。このキテレツな演出は1973年の初演当時、さんざんな評価だったという。それを「黒歴史」にせず十数年後に復活させるあたりが、四季というか浅利慶太の執念深さを示している。まあその執念深さのおかげで「夢から醒めた夢」はロングランのレパートリーにもなったことだし、いちがいに否定はできない。

自分はこの大八車の使い方が好きだ。この舞台ではセットらしいものがないが、5台の大八車が変幻自在の動きをすることで、山になったり谷になったり建物になったり道になったりとさまざまな情景を映し出す。このアイデアは大したものだと観るたび感心する。

その他の変わった趣向も、ねらいはある程度納得の行くものであり、また現代の感覚ではさほど突き抜けてアバンギャルドということもなく、すんなりと楽しむことができる。まだ劇団四季も若さがあふれていたころ、若気の至りでこしらえちまいました、という雰囲気もあるが、それが魅力でもある。最近はすっかり拡大路線で「大企業化」しつつある四季だが、創造へ向けた情熱をたぎらせていた時代があったということをこの作品は感じさせてくれる。定期的にこの江戸版を上演することで、四季の中の人も何かを取り戻そうとしているのかもしれない。

現在はほとんどの海外製ミュージカルは演出までをパッケージ化して輸出しているため、自由な演出を施すことはできない。四季の場合、自由にできたのはキャッツまでだ。海外のものがそのまま(かどうかは異議もあるだろうが)日本語で観られる、というのはありがたいが、同時にこういうヘンなものが生まれなくなるのもさびしい気がする。「美女と野獣」のようにコテコテに作り込んだ作品で別の演出を、というのも難しいが、「アイーダ」のような割とエッセンスの薄い作品なら、演出を変えることでもっと面白いものが生まれるかもしれないのに、と思う。

さて今回のキャストは、最近すっかり固定メンバーになりつつある柳瀬ジーザスに芝ユダコンビ。最初は線の細い悩める青年のようだった柳瀬はだんだん風格が備わってきた。実に堂々としたキリストである。逆に芝のユダは最初はパワフルな荒々しいユダだったのが、非常に繊細で、ジーザスへのラブラブな感じが気持ち悪いほどよく出るようになった。冒頭、マリアを近づけることをたしなめるシーンは、かつては理性からの行動に見えたが、もはやただの嫉妬にしか見えない。それだけに裏切り、そしてその最期には何とも言えない悲しさが漂う。

そのマリアは高木美果。キャスト表では木村花代が前に書いてあるのでそちらを期待していたのは確かだが、高木マリアにも興味があったのでこれはこれでいい。高木といえば昨年「オペラ座の怪人」クリスティーヌ役に大抜擢された韓国出身の女優だ。「海」劇場で一度観ており、その歌唱力と雰囲気が大いに気に入っていたがすぐに消えてしまい残念に思っていた。しかしオペラ座大阪公演のキャストには久しぶりに名を連ね、江戸版のマリア役も射止めた。今後の活躍が楽しみだ。高木マリアは観劇前の想像どおり、純粋さと妖艶さをそれぞれほのかに漂わせたいいマリアだった。そして決して力む様子を見せず、自然にのびていくような心地よい美声は健在。これは花ちゃんファンには警戒すべき強力なライバル出現だ。

そして、この作品で唯一笑いを取ることを許された役、ヘロデ王にはやっぱりこの人、下村尊則。さすがの存在感だ。休養十分で少し痩せたか?バトンもいつもより余計に回っている。1シーンにしか出演しないのに強烈な印象を残す、忠臣蔵で言えば垣見五郎兵衛のような美味しい役だが、本当にこの3分程度のシーンだけでもこの作品を観る価値があると思わせてくれる。

村のピラトはあいかわらず安定している。前回は同じファントム役者の高井治がカヤパを演じ、この豪華なコンビ(?)を堪能できたが、今回カヤパを演じたのは青木朗。低音がぜんぜん出てなくて残念。明戸アンナスはいい感じに馬鹿っぽくてよかった。

シモンやペテロといった使徒役や、男性アンサンブルは少しパワー不足か。女性アンサンブルはみな頑張っていて、歓喜から失望、そして残酷さへと移り変わっていく表情が隈取りにもマッチして実に豊かに現れていた。

今回、芝もジーザスにキャスティングされており、プログラムにヒゲジーザスの写真も掲載されているが、本当に出てくるのなら見たいものだ。その場合、ユダはキムスンラ、じゃなかった金森勝になるらしい。うむ、ますます見たくなってきたぞ!

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ロビーに展示されていた初演デザイン画。87年に購入したプログラムの表紙は、確かこれだった。

「ジーザス・クライスト=スーパースター」のホームページ

http://www.shiki.gr.jp/applause/jesus/index.html

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コメント

芝ジーザスはすごく興味あります!
でもユダも観たいし…忙しすぎて一回しか観に行けなさそう…
でも思ったんですけど、芝さんはジーザスとユダの両方を演じるのであれば、
エビータには新チェが現れるということなんでしょうか?

投稿: 凛 | 2007年6月10日 (日) 21時32分

新チェは十分にありうるんじゃないですかねえ。それにしても芝、下村レベルのインパクトのある役者はそうそう出てきません。

そういえば、吉原光夫は最近ドコ行ったんでしょう??

投稿: ヤボオ | 2007年6月10日 (日) 23時44分

僕も初日に観劇しました。
“江戸版”を観劇するのは
数年振りの3度目でした。
初めて江戸版を観劇した時の
驚きといったらありませんでした。
その時は既に“エルサレムヴァージョン”を
観ていたので、度肝を抜かれました。
本当に斬新な作品ですよね。
今月、また観にいく予定です。

僕もヘロデ王が大好きで
観劇も“彼”目当ての割合が高いです(^^)

投稿: IHO | 2007年7月 1日 (日) 10時44分

あのヘロデは本当に最高です。
ヘロデといえば下村、という印象が強すぎて、この先どうなっちゃうんだろうと心配になってしまいます。1シーンであれだけ印象を残せる俳優なんて、そうはいないですからねえ。

投稿: ヤボオ | 2007年7月 2日 (月) 00時25分

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元々、歴史物ミュージカル好きなので「JCSジャポネ版、待ってました!」という感じ。また念願の「モリグチのマリア」キャストインということで初日から果敢に行ってみました。 [続きを読む]

受信: 2007年6月11日 (月) 02時55分

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