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2007年6月 9日 (土)

「レ・ミゼラブル」開幕 帝劇の中心でウメコォーッと叫ぶ

いや、本当には叫んでないですよ。あくまで心の中で……。

とにもかくにも8日にレ・ミゼラブルの今年の公演がスタートした。昨年は日生劇場で1カ月限りだったので、ロングランは2年ぶりだ。

今回は、4人のバルジャン役を1度ずつ観ることにした。まずは、まだ観たことのない別所哲也だ。

ジャン・バルジャン 別所哲也
ジャベール 鹿賀丈史
エポニーヌ 坂本真綾
ファンテーヌ 渚あき
コゼット 菊地美香
マリウス 藤岡正明
テナルディエ 斎藤晴彦
テナルディエの妻 阿知波悟美
アンジョルラス 岡幸二郎

今回の公演は20周年記念ということで、OBや、現役で出演している役者がすでに「卒業」した役を演じる20周年記念キャストというのがいくつかの公演に登場する。この日もそれにあたり、鹿賀丈史ジャベール、斎藤晴彦テナルディエ、岡幸二郎アンジョルラスが顔をそろえた。もっともこの試みは初めてではなく、以前「2000回公演記念キャスト」ということで同様の企画があった。そこで伝説の鹿賀ジャベールが復活し、大いに話題になった。ちなみにそれは俺のたっての希望によるものだ。

しかし、この日の目玉は記念キャストではない。今年からコゼット役としてカンパニーに加わった、菊地美香が初めて登場するのである。

菊地美香といって分からなければ、モコナだ。モコナで分からなければデカピンクだ。そう、あの菊地美香である。

もうちっと詳しく説明すると、菊地は2004年に放送された「特捜戦隊デカレンジャー」でデカピンク(ウメコ)を演じていた。デカレンジャーは、この数年のスーパー戦隊シリーズでは図抜けた傑作であり自分は毎週死ぬほど楽しみにして視聴していた。そして菊地と、デカイエロー(ジャスミン)を演じた木下あゆみの2人を世に送り出したという意味でも特筆に値する。

そしてその後、菊地は声優として、「ツバサ・クロニクル」(NHK教育)と「xxxHOLiC」(TBS)という2つのCLAMP原作のアニメーションでモコナ役を演じた。ちなみに「ツバサ」にはデカレンジャーでボス(の声)を演じていた稲田徹も出演している。さらに言うなら、ツバサには坂本真綾も参加しており、今回舞台上で再び共演することになったわけだ。

そうしたことから、この日の帝劇にはウメコ狙いのヲタが大量に入場。そして、以前から坂本真綾の出演日には声優ヲタが出没することが知られている。さらに、この日は開幕2日目にして最初の週末、さらに記念キャスト出演日ということで、本来(?)のレ・ミゼラブルヲタも結集。そのため極めてチケット確保が困難な公演となった。しかし、その特撮ヲタ、アニヲタ、ミューヲタの3つが重なり合うところに俺がいる。言ってみれば俺は特異点だ。特異点といったら最近は「仮面ライダー電王」だが一昔前なら「超時空世紀オーガス」だ。なんだかよく分からない話になってきたが、俺はその場にいなくてはいけないような気がしたので、なんとかチケットを入手し三つどもえの闘いに参戦してきた。

そのウメコ。かつて東京ドームシティの「特捜戦隊デカレンジャーショー 素顔の戦士たち」で生で見たことがあるが、そのときの印象は「意外に大きい」というものだった。しかし、さっそく民衆の一人として出てきたウメコを見ると(レ・ミゼラブルではバルジャン、ジャベール以外はメインの役以外に何役も演じる)、やっぱり小さい。さてはウメコが大きかったのではなく、ジャスミンが小さかったのか。とにかく小さくてかわいいので、どの役で出てきてもすぐそれと分かる。

そしてついにコゼットとして登場。うひょーかわいい。期待通りだ。歌はどうか。実は不安だったのだ。しばらく進み、「ブリュメ街」でいよいよ歌披露。

♪不思議ね~ 私の人生が始まった そんな感じ~

んー、まずはひと安心といったレベル。声はきれい。コゼットらしい澄んだ声だ。音程も取れている。ただ声量がないのと、「歌う」ことに精一杯で、歌詞をセリフとして観客に届けるのがおろそかになりがち。しかし恐らく初日ということで緊張していたのだろう。今後、固さが取れればぐっと良くなるのではないか。成長を見守っていきたい。大丈夫、ほかにチケットを取った日も、コゼットだけは全部菊地美香だから

今回の公演でほかに登場した新コゼットはまだ見ていないので比較はできないが、過去のコゼットと比べれば、最近でいえば河野由佳クラスだろうか?剣持たまきや純名りさには及ぶべくもないが、早水優よりはずっとまし。安達祐実には楽勝。しかし、自分はコゼットにはあまり歌唱力を期待していない。コゼットは、バルジャンの「守りたい」という気持ちに共感したくなるような存在であり、マリウスが一目惚れしたのがうなずけるようなルックスであることが大事だと思う。要するに、可愛ければいいのだ。だから自分の中でいまだに最強なのは初演の斉藤由貴コゼットである。

さてコゼット以外の話も少し。って少しかよ。

初見の別所バルジャン。別所哲也という俳優は好きだが、ミュージカルではどうなんだろうなあ、と敬遠していた。実際に見てみるとおおむね予想どおりで、熱い演技と全身で表現する姿勢は素晴らしかったが、やはり歌が弱い。もっともソロナンバー「彼を帰して」は感動的に歌い上げていたので、歌が下手なわけではないようだ。歌うと同時に語る、というのは極めて難しいことなのだろう。声質は、少し聞いていてつらい。まあ「マンマ・ミーア!」で渡辺正の声に慣れてしまったことを考えれば、これも複数回観劇すれば平気になってしまうのかもしれないが。

鹿賀ジャベールは、前回記念公演で登場したときはややおだやかな、どこかひょうひょうとしたジャベールだったが、今回は初演のときの、ぎらぎらした鋭い切れ味のジャベールに戻っていた。あのテーマ曲に乗って舞台に登場するだけで劇場全体に緊張が走るような圧倒的な存在感である。ただやはり年齢的な問題もあり、声の張りや伸びは往年のそれではない。

斉藤テナルディエは本当に変わらない。初演から今にいたるまで、ずっと同じペースで、同じ演技をしている。年齢を感じさせないのは大したものだ。

岡アンジョルラスは、歴代アンジョルラスの中でも他の追随を許さないカリスマ性をいかんなく発揮。余裕からか、結婚式のシーンでは(給仕役として登場)初めて見る動きで大きな笑いを獲得していた。岡も、ジャベール役に転じたあたりから、以前ほどは声が出なくなっているような気がする。

もと宝塚星組娘役トップの渚あきによるファンテーヌは、菊地美香と同じように、ルックスも声も非常にきれいで好感が持てるのだが、声量に欠ける。やはり「夢やぶれて」はもう少し歌い上げてほしいところだ。こちらも少し固さが取れるのを待つとしよう。

というわけで、全体的に歌に関してはややものたりない出来となったが、そのムードを打ち破るパワーを発揮していたのが阿知波悟美のテナルディエ妻だ。阿知波は初演のときに鳳蘭のアンダーで出演していたので、ある意味記念キャストのようなものだが、迫力ある歌声とはじけた演技で客席を大いに盛り上げていた。インパクトのある容姿ながら、どこか少女趣味的なかわいらしい面もあるこの役は、最近森久美子の「一人勝ち」状態が続いていたが、久しぶりにいいテナルディエ妻が登場だ。

演出面では、数年前の短縮でカットされたシーンが、いくつか復活した。仮釈放されたバルジャンが泊めてもらえず騒動になる宿屋のシーンなどである。これは嬉しいが、大半はカットされたまま。できればもとのバージョンに戻してほしいところだ。
また、ガブローシュの「嘘つき!」から始まる歌が途中でカットされ、それに伴い弾丸を拾うときの歌も差し替えられている。これは現在ブロードウェーで上演されているものに準じたようだ。恥ずかしながらブロードウェーでは歌詞が聞き取れなかったので、登場シーンの歌を繰り返して歌っているのだと思い少しがっかりしていたが、実は違う歌詞だったことが分かった。これが印象的な内容なので、これから観る人は楽しみにしていただきたい。

なんだかんだと言いながら、最も数多く観ているミュージカルはレ・ミゼラブルだ。事実上、東宝はこれ1本だけで四季に対抗できているのだから、やはりこの作品の威力はすさまじい。何度観ても決して飽きることのない素晴らしい舞台だ。東京公演は8月までだが、そのあと福岡公演が予定されている。ちょうどその頃には新ドナも出ているだろうし、また福岡に……。

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20周年ということで、ロビーのあちこちに記念の展示が。1階には「司教様の部屋で記念撮影できる」という、微妙なコーナーが半笑いを誘っていた。

レ・ミゼラブルのホームページ

http://www.tohostage.com/lesmis/top.html

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