四季「キャッツ」花は桜木、女は花代
東京の桜もピークを過ぎて、だいぶ葉桜になりかけているこの週末、キャッツシアターに「花見」シーズンが到来だ。木村花代のジェリーロラム=グリドルボーン登場である。
先週の関西遠征は空振りに終わってしまったが、「江戸の敵を長崎で」ならぬ「京の敵を大崎で」というわけで、いそいそと出かけていくことに。いや、別にカタキじゃないんだけど。
グリザベラ | 奥田久美子 |
ジェリーロラム=グリドルボーン | 木村花代 |
ジェニエニドッツ | 高島田 薫 |
ランペルティーザ | 王 クン |
ディミータ | 遠藤瑠美子 |
ボンバルリーナ | 松下沙樹 |
シラバブ | 南 めぐみ |
タントミール | 高倉恵美 |
ジェミマ | 熊本亜記 |
ヴィクトリア | 宮内麻衣 |
カッサンドラ | 永木 藍 |
オールドデュトロノミー | 石井健三 |
アスパラガス=グロールタイガー/バストファージョーンズ | 村 俊英 |
マンカストラップ | 青山祐士 |
ラム・タム・タガー | キムスンラ |
ミストフェリーズ | 松島勇気 |
マンゴジェリー | 百々義則 |
スキンブルシャンクス | 岸 佳宏 |
コリコパット | 牛 俊杰 |
ランパスキャット | 永野亮彦 |
カーバケッティ | 劉 志 |
ギルバート | 范 虎 |
マキャヴィティ | 赤瀬賢二 |
タンブルブルータス | 塚下兼吾 |
自分にとって花ちゃんジェリーロラムは何と2005年の2月以来。2年も観てなかったのかと我ながら驚きだ。その後「美女と野獣」ベル、「異国の丘」愛玲、「コーラスライン」ヴァル、「壁抜け男」イザベル、そして「クレイジー・フォー・ユー」のポリーと、様々な役を演じてきた木村花代の存在感は、四季の中でますます大きくなりつつある。だからもうちょっと長く出てほしいと思っているのは俺だけではないはずだ。ひょっとして固定ファンのいるこの女優をちょこちょこ出すと営業的にうま味があると四季は考えているのだろうか。あるいは単にヲタの右往左往する様を面白がっているか。上等じゃねえか、踊らされてやるぜ!
この日は親切な方のおかげで回転席最上手という絶好の花見ポジションを確保できた。「ネーミングオブキャッツ」の「ジェリクルキャッツを知っているか?」を、ジェリーロラムの肉声で聞ける位置である。ジェリーロラムはその途中で2階に行ってしまうが、視線はホーミングモードで自動追尾。いい加減首が痛くなって正面を向いたら目の前にオールドデュトロノミーが憮然とした表情で座っていた。こりゃ俺はただ一匹の猫には選んでもらえないな。
さらにこのポジションが生きるのはバストファージョーンズのナンバーだ。手が届きそうなところにある階段にジェリーロラムは腰を下ろす。最初は前にいるシラバブの毛繕いなどしながらおとなしくジェニエニドッツらの歌を聴いているが、バストファージョーンズが歌い出すと大あくびをして寝てしまう。うわ、可愛い。ほどなく階段下にいたジェミマにちょっかいを出されて飛び起きるが、ジェミマと分かりニッコリ。それがちょうど「♪毎晩宴会~」のあたりだが、この日は自ら料理をねだることはせず、「アンタ、もらって来なさいよ!」とばかりにシラバブの後頭部を2、3度こずく。しかし南めぐみのシラバブは意思表示が控えめすぎるのか、お皿が廻ってくることはなく、やや不満気味の表情でナンバー終了。いつもはジェリーロラムの妹に見えるシラバブだが、この日は妹というより、妹分?
アスパラガスのナンバーでは、タガーのようなオーバーアクションで観客から拍手を求めるなど、落ち着いたナンバーの中でアクセントをつけた演技を披露。そしてグリドルボーンとしての登場では、ソノクイがだいぶ伸びるようになっていた。ちょうど自分の席からはグロールタイガーに尻尾を踏みつけられて悶絶する表情の一部始終を正面から見ることができたが、思わず声に出して笑ってしまうほどナイスなリアクションだった。そして以前観たときより、だいぶ悪女度がアップしている。ろくでもない女に引っかかって人生を棒に振るという野望を持っている自分としては、喜んで惑わされてみたくなる小悪魔ぶりだ。
キリがないからこのへんにしておくが、全体的に、この2年間演じてきた数々の役が着実に体内に吸収されている印象を強く受けた。直近のポリーの演技は特に色濃く反映しており、コミカルな動作が板に付いている。なぜグリンダにキャスティングしないのか理解に苦しむ。ってまだ言ってるよ。大丈夫、いずれ絶対演じることになるから。
それにしても、ジェリーロラムという猫はシラバブだけでなくみんなと仲がいい。特に仲良しなのはどうやらジェミマであるようだが、タントミールやランペルティーザとも笑い合う場面が多いし、雄猫たちとも平等に(ここ重要)親しくしている。人気者でしっかり者の学級委員タイプ、という「涼宮ハルヒの憂鬱」における朝倉凉子のようなキャラクターだ。ただ、どうも無口キャラのヴィクトリアだけは苦手にしているようだ。長門ユキと対立関係にある朝倉が、無口キャラを嫌うのは当然か?
この日はほかにも、韓国ライオンキングから舞い戻ったキムスンラがタガー、現在キャスティングされている中ではもっとも安定感のある松島勇気がミストフェリーズと、なかなか魅力的な顔ぶれだった。
キムスンラという俳優は、同じ茨城県出身ということで贔屓目もあるかもしれないが、好きな俳優のひとりだ。鋭い目線と荒川務級のアイドルボイスのアンバランスさがいい。そして全身で漂わせる不思議な色気がある。彼の演じるタガーは、芝タガーや阿久津タガーとは対称的な、あくまで二の線で行くタガーだ。韓国のライオンキングでスカーを演じてきたことで、何かまた違った雰囲気、うまく言えないが大人っぽさ(年齢的には十分大人だが)が加わったように思う。少し笑わせ方にオジサンが入ったような気も・・・。君はキヨミチの真似はしなくていいんだからね!
松島ミストは相変わらずキレのいい動きで楽しませてくれる。どうやら松島が演じるミストフェリーズが演じるグロールタイガーの子分は相当グリドルボーンが好きらしく、ソノクイ後には「でへへへへ」というマイクが拾わない笑い声を発していた。グロールタイガーが二人きりになろうとしているのに、なかなかグリドルボーンの側を離れようとせず、蹴りを入れられてやっと引っ込む場面も。チャレンジャーだな。
全体的に、どの役も安定した、そして花ならぬ華のある役者がそろったことで、心から楽しかったと思えるいい公演になった。ぜひこのレベルをキープしてほしいが、今後四季はアイーダにオペラ座の怪人にマンマ・ミーア!にウィキッドと開幕ラッシュを迎える。割を食うのは必至の情勢だ。できれば去年の阿久津タガーのように、アッと驚く新キャストをときどき投入してほしいものである。
シアターに向かう途中の橋が、桜の花びらを集めるかのように放水していた。ちょっと虹もかかっている。
キャッツのホームページ
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コメント
うわっ!のろけに来たら…ヤボオさんも「花見」に行かれてるじゃないですか(笑)さすがっ!
マチネですか?
お互い間に合ってよかったですね。ただこの形の急なキャス変、もしや何かあった?…だけが心配です。
天の声での異動ならよくあることなので問題ないですが。。
投稿: fudoh | 2007年4月 8日 (日) 16時19分
うーむ一体何があったんでしょうねえ。他に2演目しかないわけだから、玉突きもないでしょうし。
それにしても全国の花代ファンは振り回されっぱなしですな。もはやグリドルボーンを越えた悪女ぶり?
投稿: ヤボオ | 2007年4月 9日 (月) 00時31分
次はどうやら花マリア@秋らしいですよ。
いろんな意味で次JCSジャポネは期待できるかと。
もしかしたら私よりヤボオさんにとって。(←意味深?)
チケの準備はよろしいですか?(笑)
投稿: fudoh | 2007年5月19日 (土) 14時09分
ややや、それはすごい情報です!
心して観に行かなくてはっ。
全国公演には味方デビル登場、福岡はいきなり「??」なキャスト、オペラ座の怪人はどうなるか分からず、ユタは相変わらず不安定、猫屋敷はそれらのあおりをことごとく受け、という状況で、もうエビータや壁抜けは予想もつきません。せめてジーザスは安定キャストを望みたいですね。
投稿: ヤボオ | 2007年5月20日 (日) 00時49分