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2007年3月 4日 (日)

四季「夢から醒めた夢」福岡公演 野中万寿夫、ヤクザからヤクニンへ

ピコ 吉沢梨絵
マコ 花田えりか
マコの母 織笠里佳子
メソ 飯村和也
デビル 野中万寿夫
エンジェル 有賀光一
ヤクザ 吉原光夫
暴走族 西尾健治
部長 田中廣臣
老人 維田修二
老婦人 北村昌子
夢の配達人 荒川 務

自分の一番好きな舞台である「夢から醒めた夢」だが、京都公演初日以来、どうも足が遠のいていた。キャストがさほど魅力的に思えなかったのがその理由だ。苫田亜沙子のマコは見たかったが、京都や名古屋への遠征を決意させるほどの吸引力はなかった。

福岡も、同じようなキャストだったら行くことはないだろうな、と感じていたところに衝撃のニュースが。

デビルを、野中万寿夫が演じる。

どうやら、光枝明彦の「脇役の切り札」というポジションの継承者は、はっきりと野中万寿夫に定められたようだ。確かな演技力と笑いを取る技術、そして抜群の存在感を持つ野中なら、十分にその任に当たることができるだろう。

そして、なんとエンジェルが有賀光一ではないか。初めてではないようだが、レアキャストであることには違いない。もちろん自分は未見だ。さらにいつか見たいと思っていた吉原光夫のヤクザも登場。極めつけはいつも巡り合わせが悪く見られなかった荒川務の配達人。これだけ見たいキャストがそろったら、福岡に行くしかあるまい。例えマコが趣味に合わない花田えりかであってもだ。もし花田マコがいなかったら、俺は3倍ぐらい足を運んでいるに違いない。花田マコは自分が際限なく散財してしまわないようストッパーとして機能してくれているわけだ。そう考えれば、腹も立たないさっ(あまりね!)。

そんなわけで10カ月ぶりの夢から醒めた夢、8カ月ぶりの福岡シティ劇場に参戦だ。

注目の野中デビルだが、見た目のインパクトが強烈だ。京都公演のエントリーにコメントをいただいたKooさんのご指摘どおり、WAHAHA本舗の梅垣義明にそっくりである。普通にオカマだ。思わず笑いがこみ上げてくるが第一声の「堕ちろ~」でこらえきれずに爆笑。さすがは野中、期待通りである。

妙なポージングを連発するなど、小刻みに笑いを取っていたが、全体的には無理に笑いを誘うことはせず、手堅く演じている印象を受けた。「ぐははははー」も光枝ほど連発しない。何しろ見た目がくどいので、演技もくどかったら味が濃すぎるだろうから、それぐらいでちょうどいいのかもしれない。今後もこの路線で行くのか、あるいは最初は抑え気味にしておいて、少しずつ濃くしていくのか、興味が沸いてきた。

対する有賀エンジェル。鈴木涼太や藤原大輔のエンジェルは、いかにも人のいい、優しい雰囲気なのに、肝心なところで役人としての立場に固執してしまうというギャップが面白かった。しかし有賀エンジェルは、最初から最後まで「真面目な青年」キャラクターである。なるほどこういうエンジェルもいいな、と思わせる新鮮な演技だった。有賀ファンにはもちろん、エンジェルの「嫌な側面」を見るのが嫌だ、という人にもお勧めである。

吉原ヤクザは想像していたよりカッコよかった。遠目に見ると若いころの夏八木勲(「夏木勲」に改名する前の「夏八木勲」)のようではないか。しかしそのために、あの昭和初期な衣裳が似合わないように感じる。ヤクザは霊界空港のキャリアも長いのだろうから、少しは古めかしくてもいいが、もうちょっと新しいヤクザ風にしてもいい。アロハとか。だめか。

そして荒川配達人。今まで見た中で、もっともにこやかな、というより、ニヤけた配達人である。いかにも荒川務らしい、70年代スマイルだ。そこにあのアイドルボイス。田村正和が「古畑任三郎」で自分をデフォルメしたような演技をしていたが、この配達人はまさしく「荒川務であること」を最大限強調したようなキャラクターである。ただし、ものすごくうさんくさい。詐欺師というか、インチキ手品師のようだ。これは面白い。個人的には大ヒットである。北澤裕輔の謎めいた配達人とも、 味方隆司のつかみどころない配達人とも、下村尊則のデンジャラスな配達人とも異なる。何と幅の広い解釈の可能な役どころだろう。配達人が誰か、というのもこの芝居を観る大きな楽しみのひとつでもある。

それにしても、吉沢梨絵のピコはますます磨きがかかってきた。もはや役と完全に同化している。保坂知寿でさえ笑いと取っていなかった普通のセリフを、言い方を変えて笑わせたりもしていた。吉沢は四季の女優陣の中で、今や唯一とも言える「間」で笑わせることのできる役者だ。保坂の継承者としてはまだまだ修行が足りないかもしれないが、それに最も近く、そして期待したいのはやはりこの人だ。別に保坂になる必要はない。吉沢梨絵として、今後もさらに存在感を増していってほしい。

京都公演初日と比べ、みな演技に力が入っていて、体感温度が2~3度高いぐらいハイテンションないい舞台だった。今月限りなのが残念なほどだ。全国公演もどこかで観たいが、その後東京で凱旋公演もお願いしたい。これだけのキャストが全国を回れば、それは凱旋という言葉にふさわしい成果を挙げられるに違いない。

Fukuoka3

大好評の開演前ロビーパフォーマンスは、この地、福岡で誕生した。演出がリニューアルした最初の公演がここだったのである。あの公演を観ておいたことはいい記念だ。

以下、コアな人だけに向けたアナウンス。今回のロビーパフォーマンスに関する注意点です。村岡萌絵ちゃん降臨で注目のハンドベル隊ですが、2階ロビーに出現します。気付かない人も多いので、早めに行けば難なく萌絵ポジを確保できるでしょう。ただし、椅子がありませんので床に直に座って待つことになります。ひとり地べたに腰をおろし、カメラなど構えていると、ただのカメラ小僧にしか見えず、相当痛いです。そんな人を見かけたら、それ、たぶん俺だ。

最後にひとこと言いたい。萌絵ちゃん!ユー、マコやっちゃいなよ!

「夢から醒めた夢」公演ホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/yume/index.html

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コメント

初めてコメントさせていただきます。

いつもながらの、きっちりしたレポ、興味深く読ませていただきました。
今回のキャストには、とても心惹かれていましたが、
福岡「マンマ」を控えて、遠征は極力セーブしないと。

野中デビル、本当に観たいです。
全国公演で、関西にきてくださることを期待してます。

それと、福岡のグルメレポも、「マンマ」で初めて福岡に行くので、
参考にさせていただきます。
あ、でも、私には少し贅沢かも(笑)

投稿: nakamura | 2007年3月 4日 (日) 21時21分

福岡行きましたか!
しかも、最初の週末公演とは目が高いですね。

私も野中デビルを見てみたいですが、関東近県での鑑賞を楽しみに巡回してくるのを待とうと待とうと思います。

投稿: よしぼう | 2007年3月 4日 (日) 22時55分

nakamura様、初めまして!
野中デビルは、しばらく固定でしょうか?そうあって欲しいです。

わたしこれ観た日がマンマの発売日だったんですよね。
直前に気付いて、飛行機を早い時間に変更して、キャナルシティ近くのマンガ喫茶からネットでチケット取りました。

福岡は食べ物が本当においしくて、大好きです。帰ってきたそばから、マンマ遠征が待ち遠しい!

投稿: ヤボオ | 2007年3月 4日 (日) 23時53分

よしぼう様

こんにちは。野中デビルは一見、いやいや三見ぐらいの価値がありますよ。たぶん少しずつ変わっていくと思うので、定点観測しなければ。

調べものは大の得意です!

投稿: ヤボオ | 2007年3月 4日 (日) 23時55分

うわっ、福岡!ですか。
ヤボオさん、神出鬼没ですね。

写真、ハンドベル至近じゃないですか!狙ってましたね(笑)
配達人はちょうど荒川さんだったようで。アイドルボイスですよねー(笑)

投稿: fudoh | 2007年3月 5日 (月) 23時55分

福岡や大阪は楽しいのでついひょこひょこ行っちゃいますねえ。マイルは貯まるけど、お金は貯まらん……

東京も京都もハンドベル隊は狭いところにいたので押し合いへしあいでしたが、今回は広いスペースなので鑑賞しやすいです。
萌絵萌えクラブのみなさんは迷わず福岡にレッツゴーでしょう!

投稿: ヤボオ | 2007年3月 6日 (火) 00時08分

萌絵萌えクラブ(爆)
その萌絵ちゃん、今回もソロパート有りですか?
…とは言っても福岡はさすがに遠い。私は京都再訪に絞ります!

投稿: fudoh | 2007年3月 6日 (火) 01時19分

それもちゃんとやるよ!(byエディ)

投稿: ヤボオ | 2007年3月 6日 (火) 01時40分

初めましてではありませんが(前に四季チケットでお世話になったことがあり、その折にこのブログを教えていただきました)、コメントは初めてさせていただきます。
教えていただいてから、ちょくちょく読ませていただいており、今回万寿夫さんのデビルに惹かれ福岡のチケットを取りましたが、子供の初めての引越しと重なり、結局断念しました。はやり予想通りのデビルであったことがうれしく、全国公演も継続するであろうと期待し、まだ、関西には複数の公演日もありますので、その時に行きたいと思います。

また、知寿さんのことはとても残念でなりませんが、ご本人が決められて幸せを感じてもらえれば、いちファンとしてはそれが一番うれしいです。

他CFYの田邊ボビーも交代直後は鹿鳴館の久雄を思い出させるような部分が残っていたりして、はらはらしましたが、1500回記念で観たお2人は完全に新旧交代がうまくいったと思わせる息がぴったり合ったものでした。

他、ウィキッドはとても楽しみにしています。名古屋のアイーダが始まりますが、濱田めぐみを期待しています。

四季のことを書き過ぎましたが、また、読ませていただきますね。

投稿: さえ | 2007年3月11日 (日) 08時53分

さえ様、その節は大変お世話になりました!おそらくあの劇場の最高の席で、とても感謝しています。とすっかりお礼が遅くなりまし申し訳ありません。
また、こんなヤクザの人生並みにお粗末なブログを読んでいただき、恐縮です。

CFYの記念公演ご覧になったんですね。羨ましい。なんとか千秋楽までにもう一度京都に遠征したいと考えております。

四季は、いま世代交代の大きな波を迎えていると思います。ここを乗り切れるかどうかで、むこう10年ぐらいの劇団の命運が決まるのではないでしょうか。本当は四季以外にも頑張って欲しいんですがね。例のフランス革命のミュージカルしかできないとことか・・・(いや、フランス革命のミュージカル自体は好きなんですが)

投稿: ヤボオ | 2007年3月11日 (日) 21時18分

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