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2006年12月29日 (金)

TARZAN(ターザン)

Rr

28日20時~22時20分
Richard Rodgers Theatre

この夏に開幕し、賛否両論を呼んでいるディズニーの新作。「美女と野獣」や「ライオンキング」同様、99年のディズニー映画を舞台化したものだ。今回の旅行を思い立ったきっかけである。

もともとこのディズニー映画「ターザン」はあまり評価が芳しくない。しかし自分としては「アラジン」より後のディズニーアニメーション映画(ピクサー社製を除く)の中では一番好きだ。フィル・コリンズの曲も良かったし、無理矢理主人公に歌を歌わせてミュージカル調にするディズニーの常套手段を捨てたことや、「蔓を伝ってジャングルを飛び回る」というターザンのシンボル的な移動手段に代わって登場した、スノーボードのように木の上をすべって高速移動する、という映像のスピード感が素晴らしかったことなどが好印象だった。

といっても、それが舞台化されたからといってすぐに見に行かなくては、と考えるほど評価もしていない。ではなぜこれがきっかけになったのかというと、この舞台のスタッフにPichon Baldinuが参加していると聞いたからだ。

この人は、アルゼンチンのパフォーマンス集団「De La Guarda」の中心メンバーだ。彼らがオフ・ブロードウェイで公演した「Villa Villa(ビーシャ・ビーシャ)」は、天井から人が長いゴムでぶらさがって数々のパフォーマンスを繰り広げることで話題を呼び、7年に及ぶロングランを記録した。オフでの公演終了後、日本にもやってきた。

自分は2回目のニューヨーク訪問時にこの公演を観たが、ブルーマンに匹敵する大きなショックを受けた。ブルーマンにはまだ「舞台」があるが、この公演にはそれすらない。ただ天井から人がぶら下がっているだけだ。ものや水が降ってきたり、客が天井へ連れ去られたりと、とにかく過激なショーだったため万人受けはしなかったが、あの狂乱と呼ぶにふさわしい80分ほどの公演は今も頭に焼き付いて離れない。

そのスタッフが参加する、となれば、とうぜん「ぶらさがり指導要員」ということなのだろう。どんなに奇抜であろうがマイナーであろうが、面白そうなものはどん欲に取り込む。これがディズニーの強みであり、日本のエンターテイメント産業に一番欠けているセンスでもある。

というわけで、この舞台はアニメ版の「スノーボードのようにすべる」からふたたび「蔓を伝って飛び回る」ターザンに戻った。これはアニメ版を観ていない人にも受け入れやすいだろう。

しかし開演して驚いた。「『De La Guarda』の人がディズニー作品に参加している」どころではない。まるでDe La Guardaとディズニーのコラボレーション、とでも言いたくなるほど、のっけからいきなりVilla Villaだ。全編にわたりスピード感のある「宙づり」がオナカ一杯に繰り広げられる。また舞台装置はほとんどなく、ステージをクリアーな「空間」として利用していること、これまで舞台では不可能だった視点(上から視点など)の実現なども、まさにDe La Guardaのノウハウだ。

Villa Villaに衝撃を受け、「もう二度と観るもんか」という以外の感想を持った人は必見の舞台。そうでなくてもぜひ観てほしい。驚くから。

もちろん、この舞台はそれだけではない。映画に登場する大量のゴリラを人間が演じると聞いて、「猿の軍団」や「宇宙猿人ゴリ」みたいになったら嫌だな、と思っていたが心配無用だった。特にゴリラのメイクをしているわけではなく、動きでゴリラを表現している。その動きが、宙づりとあいまって実に見事だ。この舞台のアンサンブルはすなわちゴリラなのだが、彼らこそある意味主役なのではと思うほど大活躍している。またゴリラのボスにあたる役を演じたSHULER HENSLEYは、完全にゴリラになりきっていて、見ているだけで楽しかった。

どうやらPichon Baldinuのほかにも、ダンス、照明、美術など、各分野のユニークなスタッフが集結しているようだ。それらの才能が相乗効果を発揮し、すばらしい舞台に仕上がっている。舞台に興味のある人なら「おおっこれは」と感じる点が1つや2つではない。

しかし、難を上げるとすればストーリーの部分だろう。ある程度知られている話、というのを差し引いて考えても、展開が平板すぎる印象は否めない。特に2幕はしんみりした曲も多いせいか、かなりだれる。ひとつひとつのシーンは悪くないが「見せ場」と呼べる場面がなく、最後も何だかぶつんと終わってしまった感じだ。

ぜひ、D社には脚本にもう少し手を加えて、最強の状態にしてから日本に売りに来て欲しいものだ。海劇場の次回作がなかなか発表されないが、もしそっちがもめてぽしゃったら、この「ターザン」が来ても個人的には嬉しい。ただ、今の脚本のままでは駄目だ。もっとも海でこれは物理的に不可能かも。春ならぎりぎりでできるかもしれないが、実はいちばんしっくりくるのはキャッツシアターかもしれない。この作品は既存の「劇場」「舞台」の概念を破壊する姿勢を備えているからだ。

馬鹿馬鹿しいものが許せない人には決しておすすめできないものの、そういう人にこそ見せて、怒らせてみたい気もする。そのあたりはやっぱり「Villa Villa」である。

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