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2006年12月31日 (日)

Hairspray(ヘアスプレー)

Nsimon

30日14時00分~16時30分
Neil Simon Theatre

「ピンク・フラミンゴ」で悪趣味映画の帝王になったジョン・ウォーターズが88年に監督した映画「ヘアスプレー」をミュージカル化。2003年のトニー賞受賞作だ。このミュージカルを、また映画にするプロジェクトが現在進んでいる。互いにネタ不足に悩むハリウッドとブロードウェイのもたれあいも、ここに極まれりだ。

60年代のボルチモアを舞台に、太ってるけどダンスが得意な女子高生・トレーシーが地方テレビのダンス番組で人気者になるが、そこに根ざした人種差別を知り、体当たりでその状況を変えていく。

社会的なテーマを含んではいるが、基本的にはコメディで、とびきり明るいダンスシーンが次々に炸裂する楽しい舞台である。全編にわたり、60年代の「ちょっと古き、良きアメリカ」のムードが満載で、アメリカ人ならずとも、むこうのテレビ番組を見て育った世代には郷愁を感じる作りになっている。

あえて映画と比較すると、ストーリーはほぼ同じ。細かい点でいくつか設定上の変更、登場人物の絞り込みはされているものの、大きくは変わっていない。

しかし、印象はだいぶ異なるように感じた。映画は何しろ監督がジョン・ウォーターズだからピンク・フラミンゴほどではないにしても、悪趣味なシーンが続出する。そして悪趣味な世界観に浸っているうちに、現実社会に存在するさまざまな差別が馬鹿馬鹿しく思えてくるという「価値観の転倒」とも言うべき現象が観客の心の中に起きる。例えはよくないが、「シカゴ」を観ているうちに、殺人がさしたる重大問題ではないように感じられてくるのと同じだ。その新しい世界観においては、デブもゲイも差別されず、人種差別ももちろんない、一種のユートピアだ。

そこには、実際の社会において支配的な価値観を尊重している限り、差別は本質的になくならないという、自身ゲイであるウォーターズの過激な思考がうかがえる。これは一理あると思う。発生した差別をなくそうとするのではなく、そもそも差別が発生しないようにするためにはどうするか、という発想だ。そのために既存の価値観や常識を破壊してしまえ、というのが正しいかどうかはこの際置いておく。個人的にはちょっと賛同。もちろん、体質的に受け入れられない人も多いだろう。だから舞台化され、トニー賞を取ったと聞いたときにはやや意外だった。

舞台の印象はだいぶ違う。その「毒」の部分がぐっと軽減され、かなりマイルドになっている。なるほど、こうでなくては多くの支持は得られないだろう。意地の悪い言い方をすれば「いかにもトニー賞を取りそうな」雰囲気になっている。トニー賞の審査には、地方の興行権を持つプロデューサー達も多数参加しており、彼らは「ブロードウェイで成功した」というふれこみの作品を地方に出すのが仕事だ。そのため、あまり前衛的にすぎる内容の作品は敬遠され、無難なものに落ち着くきらいがある。数年前に「ユーリン・タウン」が賞を逃したのもそのあたりの事情と言われる。たしかに保守的な地方で興行するのに「ションベン横町」では具合が悪いだろう。

とはいえ、映画の主張を否定しているわけではなく、やや口当たりを良くしただけのことだから、目くじらを立てるほどのこともない。もし舞台を先に観て、「このテイストは好きだけど、ちょっともの足りないかな」と思ったら映画を見るといい。

この日トレーシーを演じたのはShannon Durig。プロフィールを見る限りほとんど新人のようだがトレーシーらしい可愛い演技で観客の喝采を浴びていた。この役を演じるには特殊な体型(!)が必要のため、なかなか人材の発掘も大変だろうが、そこは層の厚いブロードウェイ、さすがである。また親友のペニーを演じたDiana DeGarmoが秀逸だった。かなり電波なこの役をアキバ系腐女子ファッションで演じているが、メガネ属性の人ならその素顔のキュートさを一発で見抜くことができる。ラストシーンで生まれ変わったようなファッションを披露するが、「やっぱり」という感じの魅力だった。

来年、ヘアスプレーはツアー版の来日が噂されている。ツアー版、というとあまり期待できないことも多いが、どんなトレーシー&ペニーが見られるか興味があるので、実現の際には足を運んでみようと思う。

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コメント

はじめまして。
『劇団四季・WICKED』を検索して
こちらに辿り着きました。
僕はMUSICALが大好きなので
とても興味深く、楽しく拝見しています。
二年前にCANADAのTORONTOで『hairspray』を
観て、凄く楽しかったのを思い出しました。
(英語は分からず、後に結構社会的問題を
取り上げた作品と聞き驚きました。)

僕は【自称劇団四季熱狂的信者】なので
いつか劇場でお会いするかもしれませんね。
今年も沢山の色んな作品を観たいと思っています。
でわでは。

NYCに、行きてぇ~!!

投稿: IHO | 2007年1月24日 (水) 17時32分

IHOさん、はじめまして~

ヘアスプレー、舞台版は楽しさ100%の作品になってましたね。あれはあれで好きです。

原作となった映画を観ると、舞台では押さえ気味の社会ネタやブラックな笑いが満載で、これまら好きなんですが、見終わった後の感覚は映画も舞台も同じような爽やかさが残る。不思議なものです。

投稿: ヤボオ | 2007年1月24日 (水) 23時16分

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