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2006年10月 1日 (日)

松浦亜弥×石川梨華「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」(少しばれます)

非常にいい出来の映画である。

冒頭の、渋谷を舞台にした衝撃的なシーンから強制送還、脱出、拘留、スケバン刑事任命まで、息もつかせない展開で大いに引き込まれる。

「探偵物語」で有名な大ベテラン・丸山昇一の脚本には無駄がなく、その後もいいテンポで物語が進み、だれるところがない。どこまで自分の力で演出しているかは疑問ながらも、深作健太は自分なりに父親の作風を受け継ぎ、それをよりスピーディーに、そしてポップに繰り広げていこうとする姿勢が垣間見えて好感が持てる。

松浦亜弥の演技は期待どおり、100%役を飲み込み、そこに自分なりの解釈を加え、全く新しい麻宮サキ像をつくりあげた。石川梨華も、これは期待以上に悪役を見事にこなしている。もはやテレビ版第一部で「ゲームなんだよ!」の名セリフを残した河合その子を軽く越え(低すぎるハードルか?)、海槌麗巳を演じた高橋ひとみをも凌駕しているではないか。美勇伝の三好絵梨香、岡田唯もいじめられっ子を好演。竹内力はさすがの存在感で、映画全体を引き締めた。窪塚俊介も、あっちの世界に行ってしまった兄ほどではないにせよ、不可思議なオーラを放って映画全体の雰囲気づくりに貢献した。

アクションシーンもCGやワイヤーを駆使して意外なほどの迫力に仕上がっている。石川と松浦のタイマン勝負は、石川のセクシーなボンテージファッション(フィギュア化きぼう)とあいまって、目がスクリーンにクギづけだ。

スケバン刑事という作品へのリスペクトも忘れず、ヨーヨーやセーラー服といった記号はもちろん、時代錯誤の決めゼリフまでもきちんと折り込み、現代風にアレンジはされているものの、まがうことなきスケバン刑事、と映画になっている。また、原作の和田慎二がテレビ版第3部で「サキが自分のために闘っている」と激怒して、以来映像化の道が絶たれてしまったことに配慮してか、孤高ながらも友のために命を賭けて闘う麻宮サキ、という構図が明確に描かれていた。

そして言うまでもなく、斉藤由貴と長門裕之の出演は、旧作を愛してやまない自分のようなファンにとって、涙が出るほど嬉しい。しかもそれに頼り切らず、あくまで盛り上げ要素と割り切っているとことも高く評価できる。

とにかく、スケバン刑事テレビ版・劇場版のファンとしても、原作のファンとしても、単に映画ファンとしても、全く非のうちどころがない。なんくせつけようにも、最初の爆破シーンがちょっと合成しょぼかったとか、何で大谷雅恵なんだとか、些細なことしか思いつかない。お涙頂戴のぬるい恋愛映画一辺倒になっている日本映画界に活を入れるには十分な快作、いや傑作と言っていい。

だが、それでもなお、どうもこの作品には何かが欠けているような気がしてならない。それは主に旧作との比較によって感じられるものなので、この作品の評価に何ら影響するものではない。ここからはスケバン刑事ファンのつぶやきと思って(よろしければ)読んでいただきたい。

その足りないものは何か。旧作では、まだ新人の斉藤由貴や南野陽子といったアイドルが、演技もろくにできないのにアクションに挑み、その上時代錯誤の啖呵まで切らされる、というその姿に萌えていた(当時その言葉はなかったけど)という側面があり、そこをいくと松浦亜弥は既にアイドルとしては中堅以上であり、しかもどんな仕事も着実に成果を残すプロ根性の座った存在である。明らかに似つかわしくない仕事をけなげにこなしている、という感情はとうてい持てない。そういう足りなさはある。

また、上記のようにほとんどの面で及第点を取っているために、優等生的にまとまってしまい、原作者を激怒させてまで暴走して作ったテレビ版第三部のような、とんがった魅力に欠けている、ともいえる。

しかし最大の点は、この作品には「怒り」が感じられないという点ではないか。

テレビ版スケバン刑事は、田中秀夫ら、東映のテレビシリーズを長年支えた気鋭の職人たちが作り上げた作品である。しかし、彼らはみな、映画の世界にあこがれてそこに身を投じた人たちである。いつかは本編を、という気持ちは常にあっただろう。スケバン刑事には、彼らの映画へのあこがれが色濃くにじみ出ており、映画黄金期のさまざまな作品へ、多くのトリビュートがなされている。それは同時に、「なんで俺たちがアイドル主演のテレビ番組なんか作らなきゃいけないんだ」という怒りの裏返しでもある。

だが、第二部あたりからこのスケバン刑事をいう素材を生かして、単なるアイドル番組ではない、自分たちの作りたいものを作ってしまおう、という雰囲気が出てくる。原作とはどんどん離れていくが、その制作姿勢が「怒りをバネに、闘いを挑む」というサキのキャラクターに奇跡的に符号したことで、結果的にテレビ史に残る傑作を生んだのだ。それがいささか暴走したのが第三部で、これは映画ファンにはたまらない出来だったが、もはや「スケバン刑事」ではなかった。

今回の映画には、そうした怒りが感じられない。助監督経験もそこそこに、いきなり監督デビューしてしまった深作健太に、それは臨むべくもないだろう。もちろん、それを責めるつもりはない。

作品への評価が決まるのはこれからだが、世間の雰囲気としては、この往年の名作のリメイクを歓迎しているように思える。ビジネス的にみても、高校生当時にスケバン刑事を応援していた世代は、いま30代後半であり、一番カネを使いやすい世代になっており、追い風が吹いている。

そうなると続編の制作も十分ありうる話だと思うが、シリーズとして走り続けるためには、スケバン刑事を支えてきた大きな原動力である、「怒り」を取り戻せるかどうかが、カギではないか。

もっともこの歓迎ムードの中で、それは非常に厳しい注文かもしれない。ならば、また別の原動力を探すことだ。それが何かは、深作監督らに大いに悩んでもらいたい。

Yoyogirl

「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」のホームページ
(このURL、よく取れたなあ)
http://www.sukeban.jp/

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何の因果かマッポの手先・・・ フイに出会ったダチのため ”期間限定!”スケバン刑事、麻宮サキ!! 『タイマンはりてぇなら、一人でこい・・・』 [続きを読む]

受信: 2006年10月 4日 (水) 22時27分

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