東京ディズニーシー「タワー・オブ・テラー」大公開
オリエンタルランドが210億円を投じて東京ディズニーシーに設置した新アトラクション、「タワー・オブ・テラー(TOT)」が9月4日、ついにベールを脱いだ。
フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド(MGMスタジオ)、カリフォルニアのディズニーランドに隣接したディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーに次いで3番目の「タワー・オブ・テラー」だ。いずれも前代未聞の「室内フリーフォール」であることは共通しているが、米国の2つは正式名称が「トワイライトゾーン・タワー・オブ・テラー」であり、かの有名な米国のテレビドラマ「トワイライトゾーン」の世界観をベースにしている。しかし今回東京にできたものは単なる「タワー・オブ・テラー」であり、そのバックグラウンドストーリーは完全にオリジナル仕様だ。
フロリダのTOTが完成して以来、いつか乗りに行ってやろう、そうだ新婚旅行はここにしよう、と決めていたが、結婚相手が見つからないうちに日本にも出来てしまった。なんだ、結婚なんてしなくて良かったぜ。
というわけで、複雑な心境で楽しみにしていたわけだが、凝ったバックグラウンドストーリーを金のかかったサイトで小出しに紹介したり、ホテルが完成していく様子をチラチラと見せるなど、オリエンタルランドの術中にまんまとはまり、今年の春ごろからはまさに指折り数えてそのオープンを待ち望んでいた。
そのオリジナルなバックグラウンドストーリー、できればその金のかかったサイトをぜひ隅々まで読んでほしいのだが、かいつまんであらすじを説明すると、こうだ。
アメリカの大富豪にして探検家のハリソン・ハイタワー三世は、アフリカの秘境で「呪いの偶像」とも呼ばれる「シリキ・ウトゥンドゥ」を入手。自らが創立したホテル・ハイタワーで1899年の12月31日に開いたパーティーの席上で披露した。新聞記者に呪いについて執拗な質問を受けたハイタワー氏は機嫌を損ね、シリキ・ウトゥンドゥに対しある“不敬”な行動を取ってしまう。その直後、偶像とともにハイタワーが乗り込んだエレベーターが落下事故を起こした。しかしこじ開けられたエレベーターの中にハイタワーの姿はなく、ただ「呪いの偶像」だけが鎮座していたという。このハイタワー氏の「失踪」(遺体が確認されていないため)事件から13年が経過。廃墟となったホテル・ハイタワーに愛着を持つ婦人活動家ベアトリス・ローズ・エンディコットは、このホテルの保存のために「ニューヨーク市保存協会」を設立し、一般の観光客にホテル内を見学させるツアーの実施を決めた。彼女は少女時代にハイタワー氏に会っており、探検家として敬意を感じていた。だが彼女の父、コーネリアス・エンディコット三世はハイタワーと並ぶ資産家であり、氏の存命中は不倶戴天の商売敵だった。ちなみにホテル・ハイタワーに隣接した港に繋留している豪華客船SSコロンビア号もエンディコットがオーナーだ。エンディコットは、ホテル・ハイタワーを取り壊し、そこに新しいホテルを建設しようと目論む。ベアトリスは、そんな父の計画を阻止するために、保存協会を立ち上げたのだ。そのアイデアを彼女に提供したのは、なぜかホテル・ハイタワーの内部に詳しい男、スメルディングだ。たまたま知り合いになった2人はホテルへの思いが一致して意気投合していた。だがその素性はいっさい不明である。一方、その保存協会が企画したホテル見学ツアーを中止せよ、と申し入れてきた男がいた。彼の名はマンフレット・ストラング。ニューヨーク・グローブ通信の記者で、ハイタワー失踪直前の姿を目撃した人物でもある。あの呪われたホテルに一般の観光客を呼び入れるなど、とんでもない、と主張するが、彼女は耳を貸さない。そのため彼女は、この新聞記者が取材でつかんだある重要な情報を入手するに至らなかった。ハイタワーの忠実な部下で、まさにエレベーターに乗る直前まで彼につきそっていた男の名が「スメルディング」だということを……。そしてついに、ベアトリスは見学ツアーの開催を高らかに宣言する。そのツアー参加客こそ、このアトラクションのゲスト、というわけだ。
以上。ほとんど「サルでも描けるまんが教室」で竹熊健太郎が述べる世界観↓のようだ。
まあ、そうしたバックグラウンドストーリーなど全く知らずとも、アトラクションを楽しむことができる。しかしこれらを頭にたたき込んでおくと、より楽しむことができるのもまた事実だ。
さて、前置きが長くなったがさらに前置きが続く。
東京ディズニーリゾートが新しいアトラクションを設置する場合、正式オープンの2週間前ぐらいから、一般客に公開して運営面の最終チェックを行う。マニアの間で「スニーク」と呼ばれる試乗期間だ。いつから行うのかはもちろん発表されない。今回は有料のパッケージツアーにプレビューを組み込んだプログラムなどもある関係で、一般スニークはないのではないか、とも言われていた。
しかし8月22日の朝、スニークが始まったという情報がネット上に流れる。すぐにでも行きたかったが、一応会社に勤めている手前そうもいかず、土曜日を待つ。スニークは毎日実施するという保証はないため、空振りになる可能性もあるが、それはそれ、人事を尽くして、である。
待ちに待った8月26日(土)。起床は当然4時半。5時15分発の電車に乗り、5時57分に舞浜到着。小走りでモノレールの始発(6時ちょうど)に乗り込む。
いつもは遠慮して座らない先頭車両の最前列に陣取る。だってこの車両には俺しか乗っていない。
小雨がぱらつく中、入場ゲートに並ぶ。まだほとんどのゲートに1組ずつ、という状況だ。
オープン直前、ミッキー先生登場。
8時にゲートオープン。はやる気持ちを抑えながら、早足でアメリカンウォーターフロントへ。
だが、アトラクション前にずらり並んだキャストが口をそろえて「本日のタワー・オブ・テラーへのご案内は現在のところ未定となっております。どうぞほかのアトラクションでお楽しみください」と連呼している。
ざんねん、今日はナシか!と思ったが、それにしてはキャストの数が半端ではない。
また、これまでの経験上、本当にやらないならハッキリそう言うはずである。TDRで「現在のところ」とか、奥歯にものがはさまったような言い回しをするのは、行間を読め、というサインだ。昨日まで発券していなかったというファストパスの発券機にもキャストが待機している。そのうち、子供の身長が規定を満たしているか計る物差しのようなもの(正式名称不明)を持ったキャストも現れた。何人かのキャストがちらちらと時計を見ている。これは期待していいだろう、とその場を離れずに待機することに。
その間、外観を撮影。もともと撮影には自信がないが、曇っているのと、このために前日に買ったばかりのカメラなので、写真のできがわるいのはご勘弁を。
正面の「HOTEL HIGHTOWER」の看板には、うっすらと「TOWER OF TERROR」の文字が浮かび上がってくる。
正面玄関に立つキャストは、タスキのようなものをかけている。このタスキには「New York City Preservation Society(ニューヨーク市保存協会)」と書かれている。
向かって左側にファストパス発券機が並んでいる。奥にあるのは物販コーナー「メモラビリア」だ。
午前9時ジャストに、「それではこれよりご案内いたします」との声。自分はまずこのアトラクションで最初に発券された時間帯のファストパスを記念にもらっておこう、と思ったのでファストパス発券コーナーに向かったが「まだ発券してません」とにべもなく言われ、ちょっと出遅れてスタンバイ列に。だがもちろん待ち時間はゼロだ。
※ここから先は、まだ乗っていない人は読まない方がいいでしょう。「ここから先に行ってはならん!私の忠告を聞け!」
※「なぜ忠告を聞かなかった!」
まずホテルのロビーに入る。ここからだいぶ薄暗い。フラッシュはOKかどうかよく分からなかったので、使わずに撮影。
絵画やステンドグラスなど、いたるところにハイタワー氏の肖像が。彼がどんな性格の人間だったのか、よく分かる。
ホテルのフロントもありし日のまま保存されている。
これが事故を起こしたエレベーター。
フロントの横を過ぎ、保存協会のツアーガイドによる簡単な説明を受けてから、ハイタワー氏の執務室に入る。
執務室に入ると、机の上には蓄音機、そして横にはシリキ・ウトゥンドゥの像が。
ここでハイタワー氏の記者会見の音声をレコードに録音したものを聞く。プレショーの最後にアッと驚く仕掛けが用意されているが、最初は本当に「アッ」と言ってしまうこと受け合いだ。
部屋を出ると、ハイタワー氏が世界から集めてきた宝物が無造作に置かれた倉庫のような部屋へ入る。
そしてついに、エレベーターに乗り込む。ここからは撮影禁止だ。ちなみに、建物の中に入ってからエレベーターに登場するまで、20分ほどかかった。混雑状況によってはもっとかかるかもしれない。特に、エレベーターの前でかなり待たされたが、これはまだ案内や注意のノウハウが確立されていないためだろう。エレベーターの直前で離脱も可能だから、絶叫アトラクションが苦手、という人もプレショーだけ見てもよいのではないか。
エレベーターのレーンは3レーンあるが、乗り場は全部で6つ。六本木ヒルズのエレベーターのように2階建てにでもなっているのかと思ったがどうもそうでもないらしい。
エレベーター内部は「スターツアーズ」より狭く、定員は21人。安全バーではなく、自動車と同じ3点式のシートベルトを締めて動き出すのを待つ。このあたりから、どんどん恐怖心が沸いてくる。
キャストが手を振って、エレベーターの扉が閉まると、ああやっぱり乗らなきゃよかったという気持ちに。何しろ4時半起きだから、1時間ちょっとしか寝ていない。もし本当に死んだら、このアトラクションの公開は延期になるんだろうか。歴史に名前が残るかも…とかあほなことを考えているうちに、キャストが「いってらっしゃ~い」と手を振って扉の向こうに消えてしまう。もう引き返せない。
エレベーターはゆっくりと上昇を始め、いくつかのフロアに止まってドアを開け、凝った部屋のセットやナレーション、映像でさんざん怖がらせる。そして一気に急上昇を始める。
その後に待っているのは・・・
掛け値なしの純粋な恐怖。
同じ「落ちる」感覚でも、スプラッシュ・マウンテンのようなスカッとする爽快なフォールではない。詳しくは書かないが、だいぶ趣味の悪い動きであるとだけ言っておこう。
搭乗しているのはほんのわずかな時間に過ぎない。終わった瞬間は、「なーんだ、こんなものか」という気もした。しかし、キャストが現れて、「お出口はこちらでございまーす」と案内するので、シートベルトを外し、立ち上がろうとしたら足が動かなかった。歩き始めても、地に足が着いている感じがしなかった。
建物の出口には、スプラッシュ・ダウンフォト同様、落下直前に撮影した写真の販売コーナーがある。1枚1260円。番号を選んで伝票を発行してもらい、メモラビリアのレジに持って行く。レジが空いていてすぐに伝票を渡せる状態だと、プリントが間に合わないのでレジのキャストと2~3分どうでもいい会話をする時間を与えられる。「すぐに乗れましたか?」「恐かったですか?」など、実に表面的な話題なので、キャバクラに慣れている人は腕の見せどころだろう。
メモラビリアを出て、ファストパス発券所に行ってみるとすでに発券を開始している。
恐らく10時からのファストパスがあったと思うので、残念ながら「最初に発券された時間帯のファストパス」は入手できなかったが、まあ記念ということで。
そしてすぐに2回目のスタンバイ列に並ぶ。最初から2回は乗ろうと思っていたし、待ち時間15分と言われたので体が勝手に反応してしまった。しかし、驚いたことに2回目のほうが恐かった。1回目は恐怖もあるが、同時にドキドキ感もあったからだろうが、少なくとも1回乗ったらぜんぜん平気、というアトラクションではないことは確かだ。
ディズニーリゾートらしく、筐体の動きだけでなく、演出で恐怖を感じさせているのは予想通りだ。落ちるスピードは米国版より遅いという噂もあるし、純粋なフリーフォールとしては東京ドームシティの「タワーハッカー」や、107メートルもある八景島シーパラダイスの「ブルーフォール」のほうが恐いだろう。
しかし、思ったよりもフォールそのものの恐怖も大きかった。むしろ、演出によって物理的な運動による恐怖を緩和している、という見方もできる。体は正直だから、1回目乗ったあとに体が動かなかったのも、2回目により恐怖を感じたのも、そのあたりに原因があるのかもしれない。
だから、しょせんディズニーのだから、と甘く見るのは危険だ。絶叫系が苦手、という人はまず避けたほうがいいだろう。キャッチコピーは「東京ディズニーシー史上最“恐”」とうたっているが、確実に「東京ディズニーリゾート史上最“恐”」である。
しかしそれだけ恐いのに、いまこのエントリーを作成しているとまた乗りたくなってくるのだから始末が悪い。これがいわゆるひとつのディズニーマジックか?
ところで、初めて乗った記念に1260円払って写真を購入した。
自分で言うのもなんだが、なかなかいいリアクションを取っているではないか。「隣が空席なのはどうして?」とか聞くのはナシだ。
「タワー・オブ・テラー」公式サイト
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コメント
昨日TOTを体験しました!こちらの記事で、あの楽しさの余韻に浸っております。トラバもさせていただきました!
投稿: alquimist | 2006年9月 7日 (木) 17時04分
こんにちは。こんな有害サイトにいらしていただき恐縮です。
ディズニーシーは、ディズニーランドとはまた違った毒性(?)があるらしく、最近ひんぱんに訪問しています。ゴハンもランドよりはうまいところがありますし(高いけど)。
なのでこんなふうにガツガツまわるよりも
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2005/12/_.html
こんなふうにまったり過ごしたほうが楽しいかもしれません。
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2006/04/post_5fdf.html
投稿: ヤボオ | 2006年9月 8日 (金) 10時03分
ごぶさたしております。
譲二でございます。
ちょっと本題とズレるかも知れませんが・・・
ヤボ夫さんが今回も引用された「サルまん」ですが、「21世紀保存版」として再販されましたね。
小生も再読のために購入しようと書店に行ってみたのですが・・・在庫検索では「入荷済み」というのに、ギャグのコーナーには全く見当たらない。
で、恥をしのんで(苦笑)店員さんに探してもらったら・・・
「ホラーコミック」に分類されてました。
ま、あの画風だとねぇ。
小ネタでした。
投稿: 譲二 | 2006年9月 9日 (土) 20時21分
それは「ブラック・ジャック」単行本の表示に、当初「怪奇コミックス」と書かれていたのよりも衝撃的ですね!
サルまんはいまなおその輝きを失わない、永遠の名作です。
投稿: ヤボオ | 2006年9月 9日 (土) 23時37分
すんばらしー
投稿: ま | 2011年4月16日 (土) 23時26分
ストーリーが怖さをひきたてる
投稿: ま | 2011年4月17日 (日) 08時33分
悲しいすでにtotの公式サイト削除されてしまっている
投稿: ため息 | 2011年4月17日 (日) 11時10分
シーの再開が待ち遠しいですな
投稿: ヤボオ | 2011年4月17日 (日) 14時14分
ヤボオさん
そうですね
投稿: ま | 2011年4月17日 (日) 16時04分