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2006年9月25日 (月)

ブライアン・シンガー×ケビン・スペイシー「スーパーマン リターンズ」(ちょいばれ)

長い長い紆余曲折を経て、ようやく完成したスーパーマンの新作映画。ティム・バートン監督、ニコラス・ケイジ主演という話も頓挫、「チャーリーズ・エンジェル」のマックG監督もいちど決定しながらお流れに。最終的にブライアン・シンガーが「X-MEN ファイナル・ディシジョン」を諦めて監督し、新人を起用するという形で決着した。

ブライアン・シンガーは現在のハリウッドで最も実力のある監督の一人だと思う。何しろ出世作「ユージュアル・サスペクツ」を撮ったときにはまだ20代だ。その後はどちらかというとプロデューサー的なセンスを発揮し、バランスの取れたエンターテイメント作品を次々に世に送り出している。その極めつけがX-MENシリーズだ。衣装を黒に統一するなど、大胆なアレンジを加えながらも原作へのリスペクトあふれる演出を展開、ずらり並んだオスカー級のスターとシェイクスピア演劇出身のベテラン俳優も自在に使いこなして見事に大ヒット作を作り上げた。

これは大いに期待ができそうだ。そしてもうひとつ、レックス・ルーサーをケビン・スペイシーが演じると聞いたとき、その期待はさらに高まった。もはやジーン・ハックマンと一体化していたこの名物悪役キャラを、彼以外の誰が演じられるだろうと考えていたが、これは最高にナイスなキャスティングだ。シンガーとのコンビも「ユージュアル・サスペクツ」以来となる。

今回の作品は、スーパーマンや彼を取り囲む人々の内面もより深く描いた、やや大人っぽい映画になるようだ、と宣伝で聞いていた。それは自分にとってはやや不安要因だった。スーパーマンの魅力は、何と言っても列車を素手で止めるとか、弾丸よりも早く走るとか(いや、それはエイトマンか)、牛を素手で倒すとか(いや、それは大山倍達か)、とにかく荒唐無稽なことをやってのけて、それに拍手かっさいするといういかにもアメリカ的なエンターテインメントだと思うからだ。

しかし実際に観てみるとそれは全くの杞憂だった。あいかわらずスーパーマンは大いにばかばかしい活躍をしてくれて、何も考えることなく楽しめる快作に仕上がっている。考えてみれば現在のデジタル技術を使えば、イマジネーション次第でいくらでもばかばかしいことを視角化できるわけで、スーパーマン映画を作るにはいい時代になっているといえる。スーパーマンが飛び立つ瞬間を、本当に無重力のように表現できているのにはビックリだ。そういうところをなぜ宣伝しなかったのか。恐らくストレートにスーパーマンの映画、と宣伝すると冷めた若者や泣きたい女性に受け入れられないだろう、と少しおとなしめのPRを繰り広げたのかもしれない。それでもあまり盛り上がらず、どんどん上映館が減ってしまっているのは残念だ。

ケビン・スペイシーのレックス・ルーサーは期待どおり。ジーン・ハックマンのルーサーは、いかにも食えない悪党、という雰囲気が印象的だったが、その食えなさをさらに煎じ詰めたような食えなさ加減で、最高に楽しませてくれた。シンガーとのコンビネーションによる演出もばっちりで、いったいレックス・ルーサーにカツラをかぶせるなんてことを誰が考えついたのだろう。それも話題沸騰中の「ヅラ刑事」のモト冬木のように、そのヅラを重要なアイテムにしている。このケビン版ルーサーだけでこの映画を観に行く価値がある。いきなり最初のシーンがレックス・ルーサーから始まるというのも、この監督がこの映画で何をしたかったのか、雄弁に語っている。

そう考えれば、もっとルーサーに出番を与え、もっとハジけたルーサーを見せてくれても・・・と思わないでもない。しかしそれではこれが「スーパーマン リターンズ」ではなく「レックス・ルーサー リターンズ」になってしまう。そのあたり踏み外さないのが、シンガー監督の希有なセンスである。ユニークな演出と、誰にでも受ける大衆性のバランスを取れるのが、この人の持ち味だ。個人的には、「ユージュアル・サスペクツ」のような、度肝を抜く構成で刺激を与えてほしい気もするが、スーパーマンという素材を扱う以上、それは望めないのだろう。

ところで、この作品は物語上、1978年の映画第1作「スーパーマン」の続編、という形を取っている。だからロイス・レインはスーパーマンの正体に気付いていない。歴史上なかったことにされている「電子の要塞」や「最強の敵」はまだしも、戦いあり、恋愛あり、笑いあり、感動ありの一大娯楽活劇「冒険編」を無視したのは意外だった。まあ1984年版ゴジラが1954年版ゴジラの続編という形を取っているようなものか。わかりにくいかニャ。

Smark

「スーパーマンリターンズ」の公式WEBサイト
(重いわ音出るわ、最低のつくり)

http://wwws.warnerbros.co.jp/supermanreturns/

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コメント

毎回楽しく拝見させていただいています。また初めてコメントいたします。スーパーマンですが本作は冒険編の5年後か6年後(あいまいですいません)の事とどこかで(あいまいですいません)見たのを記憶しています。あの男の子の設定が冒険編の後ですと言ってると思いますが。

投稿: すーぱーまうす | 2006年9月25日 (月) 17時26分

ぬおっ!確かに!

スーパーマンとロイス・レインが××したのは(表現古っ)冒険編ですもんねえ。

やっぱりDVDなど買って見直してみる必要がありそうです。何しろ24年も前(!)の作品ですから、記憶がかなーり怪しくなっております。まっ当時のほうが確実に記憶力はよかったはずなんですが。

今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: ヤボオ | 2006年9月25日 (月) 23時04分

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