« 「リボンの騎士 ザ・ミュージカル」2回目 | トップページ | 四季「オペラ座の怪人」出ました!佐野正幸ファントム »

2006年8月26日 (土)

「リボンの騎士 ザ・ミュージカル」3回目&総評

先週先々週に引き続きコマ劇場へ。明日が千秋楽なので、これが最後だ。

こんなに楽しい舞台が1カ月で終わってしまうなんて、本当に残念だ。公開前はチケットの売れ行きが芳しくなく、オークションでは定価割れが続出していたが、公開してから日増しに人気が高まり、この日は楽前ということもあるだろうが、いつもは売れ残っている後ろのほうの端の席まで一杯になっていた。公演を続けるに従って動員が伸びていく、というのは何よりの評価だろう。

この日のキャストは、松浦亜弥らの特別主演のない、モーニング娘。+美勇伝オンリーの、下記のようなキャストだ。

大臣 吉澤 ひとみ
サファイア 高橋 愛
家臣ナイロン 小川 麻琴
ヌーヴォー・淑女 新垣 里沙
魔女ヘケート 藤本 美貴
トルテュ・淑女 亀井 絵里
リュー・淑女 道重 さゆみ
リジィエ・淑女 田中 れいな
大臣の息子 久住 小春
牢番ピエール・淑女・近衛兵 三好 絵梨香
牢番コリン・淑女・近衛兵 岡田 唯
王妃 マルシア
王・神さま 箙 かおる(宝塚歌劇団)
フランツ王子 石川 梨華

フランツ王子は石川梨華が演じ、ピエールは三好絵梨香が演じる。その関係で牢番が3人から2人に。松浦のような強いオーラのある人間も貴重だが、そうした存在がいないぶん、キャスト全体がカンパニーとしてまとまった雰囲気になった。出演者が一人少なくなっただけで舞台の印象が変わる、というのも新鮮な発見だった。

それにしても、楽しい3週間だった。卒業する小川麻琴以外は今後も観る機会はあるのだが、あの舞台を観られないのは甚だ寂しく、おニャン子クラブの名曲「終わらない夏休み」でも歌いたい気持ちだ。

最初に観たときの繰り返しになるが、出演者のオーラを最大限に引き出す宝塚の手腕は素晴らしい。出演者全員がいきいきと輝いているのを観ていると、なんだかこちらまで元気になってくる。

別に「役者ではなく作品を観ろ」という四季の理屈が間違っているとは言わない。しかし、舞台作品というのは役者が演じてこそ完成するものであり、その役者の存在感を高めることが、作品の質を高めることも事実だ。そして、日本には歌舞伎以来、「役者を見せる」ことで成長し、発展してきたエンターテインメントの文化があることにも目を向けなくてはいけないだろう。

また、今回そのポテンシャルを見せつけた宝塚マジックは、役者の見せ方だけではない。日本人女性が歌いやすい旋律を意識して作られた楽曲は、すなわち日本人が聞いて最も心地よい旋律でもある。そこに、古き良き日本語が乗せられた歌は、心に響く美しいナンバーばかりだ。

また、芝居のケレン味というか、カタルシスをどう感じさせるかということも知り尽くされている。例えば、フランツ王朝率いるゴールドランド王国がシルバーランド王国に戦争を仕掛けるというくだりでは、戦闘シーンは登場しない。舞台上で群衆戦を描くのは難しいということもあるが、戦いをテーマにした映画や舞台で、そのカタルシスを感じさせるのは実は戦闘シーン以外の場面であることが多いのだ。そのひとつが、この舞台でも採用している「戦いを前にして仲間が集結する」といシチュエーションだ。フランツのもとに手練れを率いて馳せ参じてくる騎士の姿を、回転しながら上下するコマ劇場の舞台装置を生かし、ほれぼれするほど格好良く描いていた。これはもう、「人生劇場 飛車角と吉良常」の鶴田浩二と高倉健を見ているかのようにゾクゾクしてくる。そのゾクゾク感が、全編にわたり散りばめられているのだ。

返すがえす、終わってしまうのが惜しい公演だ。ぜひ早いうちの再演を望みたい。もちろんDVD化にも期待だ。商売先行と言われてもいいから、DVDはキャスト4パターン全部出して欲しいものだ。今から楽しみである。

最後に、自分が観た出演者全員について、短く感想を。

吉澤ひとみ(大臣)
大きな動きと派手な顔立ちは、宝塚メソッドとの相性は抜群。秀でてうまいわけではないが、安定感のある演技と歌は、まさしく舞台上でもリーダーだったといえよう。

高橋 愛(サファイア)
根っからのヅカファンとして主役に抜擢された高橋の起用は、決定直後から賛否両論を読んでいたが、結果的には大成功といえる。高橋は客席や場の空気をどう変えていくか、という計算ができる希有なアイドルだ。今後も舞台での活躍が期待できそう。

小川麻琴(家臣ナイロン)
自分を捨てて、体当たりで演技をすることを吉澤ひとみから学び続けた成果を、ここに結晶させた。結果的に吉澤を越えることができなかったのは五期の限界か。しかしモーニング娘。内の立ち位置を自らつかみ、期待された役割を着実にこなしてきた小川の卒業には、感慨深いものがあるのも確かだ。

新垣里沙(ヌーヴォー・淑女)
もともとつんくプロデューサーに、存在としての華がある、と見いだされたわけだが、その華がようやく開花してきたようだ。今回は出番は少なかったものの、舞台上でその存在感は際だっていたように思う。加入してからの成長ぶりは群を抜く新垣だが、今後もさらに成長していくのか。

藤本美貴(魔女ヘケート)
「その願い、かなえよーう!」でこの舞台の美味しいところを全部持って行ってしまった感のある藤本。藤本の頑張りもさることながら、出演者のキャラクターと物語の世界観が合致するとここまで面白いことになるのだ、という好例だ。セリフの発生には難があるものの、歌い方が芝居がかっているのでミュージカル向きかも。どうですか?アムネリスあたりでオーディションを受けてみては。

亀井絵里(トルテュ・淑女)
あほなキャラクターが板についてしまった亀井だが、時折見せる目線の鋭さが印象的なアイドルである。その鋭さが、騎士という役に生きた。意外に?声量のあるところも披露できたのは彼女にとっても収穫だろう。

道重さゆみ(リュー・淑女)
道重と田中は、「かわいい」ことだけを強調する役である。これはおいしい反面、難しいことでもあるだろう。アイドルのかわいさと、役者のかわいさはまた別ものだから。しかし道重は持ち前の図太さでそれを切り抜けてしまった。それにしても、どんどんエッチな体つきになっていくのはちょっと気になる。

田中れいな(リジィエ・淑女)
もはやモーニング娘。内では敵なしのれいなだが、今回は控えめな役どころ。「意地でも一緒に踊るけんね!」と博多弁が入るのは演出上の遊びだが、そこでもう少し存在をアピールしてもよかったか。道重の「うさちゃんピース!」のように。

久住小春(大臣の息子)
日増しに如才なさを示し、モーニング娘。の内部でも頭角を現してきた久住。よく通る、伸びのある声はセリフでも歌でも客席に一番よく届いていたのではないか。「きらりん☆レボリューション」で声優に挑戦していることも生かされているのだろう。

石川梨華(フランツ王子、牢番ピエール・淑女)
今回の公演のMVPを選ぶとすれば、それは紛れもなく石川梨華だ。どの役も全力で演技し、観客の目線を一身に集めていた。しかしそれは才能だけでなく、彼女自身の努力によるものであることが、そのひたむきな演技を通じて伝わってくる。目指せ、姫川亜弓!

三好絵梨香(牢番ピエール、牢番トロワ・淑女・近衛兵)
落ち着いたお姉さんキャラで、職場とかにいたら絶対好きになってしまうタイプであり、同時に男が身を滅ぼすきっかけになるのも実はこういうタイプだったりする。そんな三好の牢番ピエールは、石川の野心的なピエールと比べると、常に迷いを浮かべた、悩める青年タイプだ。その迷いがふっきれた後の、さっぱりとした表情が印象的だった。フィナーレで魅せた脚線美はもっと印象的だったが。

岡田 唯(牢番コリン・淑女・近衛兵)
なんだか分からないが妙に目を引く岡田唯は、どの役を演じていても演技は一緒。しかしそれでいてどの役に馴染んでしまうから不思議だ。彼女が今度どういう方向性に行くのか皆目検討がつかないが、その不透明さが彼女の魅力でもある。

箙かおる(王・神さま)
宝塚の職人集団、専科に属する大ベテラン。歌も演技もそりゃモーニング娘。とは比べものにならないが、その実力を存分に見せながらも、前面に出て舞台を引っ張っていく、という雰囲気ではなく、未熟な出演者を見守りつつ後押ししていく、という存在になっているのは、さすがオトナの余裕というべきか。そこから娘。たちが学んだことは、少なくなかったはずだ。

マルシア(王妃)
「ふりむけばヨコハマ」を歌っていたころのマルシアは好きだったけど、最近のマルシアはどうも好きになれない。だから「レ・ミゼラブル」でも彼女の出演する日は避けてチケットを取っていたが、この舞台を観て、なかなかいいじゃないか、と思った。特に、杯に自白剤(?)を盛られて秘密をぺらぺら話してしまうシーンの狂いっぷりが出色の出来だった。一部では、四季の舞台に参加という仰天プランのうわさもある。他の作品で観る日も遠くないかもしれない。

松浦 亜弥(フランツ王子)
その華やかなオーラは群を抜いており、彼女がいるだけで舞台の空気が一変する。持ち前の器用さで、王子役を難なくこなしていたが、正直、松浦ならもっとできたのでは?という気がしないでもない。昨年あたりからかなり歌ではかなり声がでなくなっており、その影響もあったか。ならば次は歌の少ない、演技力で勝負の舞台での活躍ぶりを観たいものだ。その前に「スケバン刑事」に大期待だが。

本当に、今年の夏はこの舞台と出会えたおかげで楽しい思い出ができた。心からこの舞台を支えたキャストとスタッフに、感謝したい。

Koma

第1回目エントリー

http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2006/08/post_e2c3.html

第2回目エントリー

http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2006/08/post_1250.html

公式サイト

http://www.ribbonnokishi.com/

|

« 「リボンの騎士 ザ・ミュージカル」2回目 | トップページ | 四季「オペラ座の怪人」出ました!佐野正幸ファントム »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「リボンの騎士 ザ・ミュージカル」3回目&総評:

« 「リボンの騎士 ザ・ミュージカル」2回目 | トップページ | 四季「オペラ座の怪人」出ました!佐野正幸ファントム »