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2006年8月13日 (日)

山口祐一郎×市村正親「ダンス オブ ヴァンパイア」(バレます注意)

クロロック伯爵 山口祐一郎
アプロンシウス教授 市村正親
サラ 大塚ちひろ
助手・アルフレート 泉見洋平
宿屋の亭主・シャガール 佐藤正宏
シャガールの女房・レベッカ 阿知波悟美
女中・マグダ 宮本裕子
ヘルベルト 吉野圭吾
せむし男・クコール 駒田一

もし、この東宝ミュージカル「ダンス オブ ヴァンパイア」、観ようかどうしようか迷っているなら、観ておいた方がいい。そして、ここから先は読まないで、すぐYahoo!オークションなりオケピにアクセスを。

もう観ちゃったよ、あるいは観る予定の全くない人、お待ちしておりました。どうぞ中へ。

自分のこの作品への評価は「惜しい!」である。見どころ満載の素晴らしい作品だが、いくつかケチをつけたくなる点があり、それがどうも引っかかっている。しかし、「レ・ミゼラブル」以外の東宝ミュージカルの中では、屈指の出来映えではないか。だからぜひ観ておいてほしいと思うのも事実だ。

先にケチのほうから言っておく。この作品はポップなコメディーだ。しかし、あえてそれをコメディーとせず、無理やりロマンチックなグランドミュージカルに仕立て、そう宣伝している点が気にくわない。ウィーンまで観に行ったわけではないので、オリジナルがそうなのか、東宝がひん曲げているのか分からないが。これは、天下の帝劇で12500円も取って上演するような作品ではない。「山口祐一郎・市村正親ふたり会」とでもして、パルコ劇場あたりで7500円ぐらいで公演するべき作品だ。上演時間もあと30分短くして。そうしたらもっともっと、面白い作品になっただろうに。

さて、それを除いて考えれば、この「ダンス オブ ヴァンパイア」はなかなかの傑作と言っていい。

この作品は、「ローズマリーの赤ちゃん」から「戦場のピアニスト」に至るまで、ハリウッドの一線で活躍を続ける映画監督、ロマン・ポランスキーが1967年に監督した「吸血鬼」を、本人がオリジナル演出を手がけてミュージカル化したものだ。ロマン・ポランスキーの吸血鬼といえば、パロディー精神に満ちたホラー・コメディーとして名高い。

この舞台版でも、そのパロディー精神がいかんなく発揮されている。そして映画ではホラー映画のメソッドに向けられていたそのパロディーの矛先は、今度はミュージカルのメソッドへと向けられている。

冒頭の吹雪シーンに続く、村人たちが酒場で盛り上がるシーン。どこかで見たような酒場で、どこかで聞いたようなメロディーで全員が「ガーリック!ガーリック!」とニンニクの効用をうったえて大合唱。あれは、明らかにミュージカルにありがちな酒場の場面をコケにしているのだ。

そして、いかにもミュージカルっぽく始まっていながら、次第に異なるテイストになっていき、有名な「衝撃のラストシーン」を経て、冒頭とは全く異なる雰囲気で幕を閉じる。最初と最後で色彩が違う、というのは映画ではしばしばなされている試みだが、このクラスの大劇場での舞台では、なかなかお目にかかれない仕掛けだ。そういう意味で、オチを知っていても十分に衝撃的なラストだった。

そして音楽がいい。何しろ担当したのはジム・スタインマン。映画「ストリート・オブ・ファイヤー」の主題歌、「Tonight Is What It Means To Be Young」を作曲した人だ。洋楽好きな人には、ミートローフのプロデューサー、なんて説明をしなくても知られた名だろう。ドラマ好きな人には「ヤヌスの鏡」の主題歌「今夜はANGEL(Tonight Is What It Means To Be Youngのカバー)」や「スクール☆ウォーズ」の主題歌「ヒーロー(Holding Out For A Heroのカバー)」を作曲した人、といえば、どんな曲を書く人か分かると思う。

アンドリュー・ロイド・ウェーバーの作品に作詞で参加したり、ミュージカルとのかかわりも深いことから、最初はきちんとミュージカルっぽい音楽から始まる。しかし物語が進むにつれ、演出のテイストが変わってくると、音楽も次第にスタインマン風味が濃くなってくる。特に2幕の「夜を感じろ」あたりはまさしくスタインマンそのものだ。

「衝撃のラスト」が、まさかあの曲で盛り上がることになろうとは予想だにしなかったが・・・。

出演者について言えば、山口・市村は当然のごとく最高の演技を披露している。2人とも、コメディータッチの演技はお手のものだ。しかし最初にケチをつけたように、作品全体がコメディーっぽさを否定している面があるので、どうも抑え気味だったような気もする。2人が思う存分、競って笑いを取りに走るような舞台をいつか見てみたいものだ。

もちろん、2人ともおかしな演技をしているだけではなく、コメディータッチの演技の上に、多くのものを表現していることは言うまでもない。市村は、どんな状況でも(あのラストシーンでも)前向きに、勇気を持って進む不屈の闘志を、そして山口は、たとえようもない圧倒的な孤独を、適確かつ大胆な演技と歌で観る者に力強く伝え、感動を呼んでいる。

基本的に好きな作風の舞台であり、見応えも十分だ。かえすがえす、制作者側の「コメディー」への理解が薄かったことが残念ではあるが、ぜひ、手を加えながら再演を続けてほしい舞台だ。

Vam

ロビーの柱に飾られた写真は、なかなか雰囲気がある。

「ダンス オブ ヴァンパイア」のホームページ

http://www.toho.co.jp/stage/vampire/top.html

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