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2005年12月25日 (日)

東宝「レ・ミゼラブル」山口祐一郎@ヴァル

「レ・ミゼラブル」大阪公演を観てきた。今年春の帝劇公演では、組み合わせが悪くて見逃していた新キャストがあり、特に「アイーダ」で好演していたシルビア・グラブはぜひ観ておきたかったのだ。

今回のキャストは下記のとおり。

ジャン・バルジャン 山口祐一郎
ジャベール 岡幸二郎
エポニーヌ 坂本真綾
ファンテーヌ シルビア・グラブ
コゼット 西浦歌織
マリウス 泉見洋平
テナルディエ 佐藤正宏
テナルディエの妻 瀬戸内美八
アンジョルラス 岸祐二

網かけしたところが初見キャスト。半数以上だ。印象に残ったところを列挙しておく。

まずシルビア・グラブのファンティーヌ。歌声に迫力がある、重量級ファンティーヌの誕生だ。しかし演技では随所に可愛らしい表情を見せ、それがけなげさ、はかなさにつながっている。息を引き取る場面、そしてバルジャンを迎えに来るシーンでは大きな感動を呼ぶことに成功していた。

佐藤正宏、すなわちWAHAHA本舗座長のテナルディエは、歌は迫力に欠けるものの、細かい演技が好感触だ。テナルディエというと眼光の鋭い男、という印象があるが、このえびす顔のテナルディエはいつも笑っているように見える。それが「バットマン」でジャック・ニコルソンが演じたジョーカーのようで実に不気味であり、新鮮に感じた。

意外にも、そして実に良かったのが岸祐二。原作ではクールな指揮官、というイメージのアンジョルラスだが、岸は情熱を前面に出した燃える男として演じていた。これはこれでいい。歌声は驚くほど伸びがあり、恵まれた体格を生かした大きな演技も、革命のリーダーという役どころに説得力を持たせていた。

以前ここに書いたと思うが、彼は「激走戦隊カーレンジャー」のカーレッドである。そして、日本のレ・ミゼラブル初演でアンジョルラスを演じた内田直哉は、「電子戦隊デンジマン」のデンジグリーンである。スーパー戦隊シリーズは、アンジョルラス役と縁が深い。

ところでこの日の山口祐一郎は、やりたい放題だった。同じ役を演じていても、毎回演技が違うという安定感のなさが山口の嫌われるところでもあり、大きな魅力でもあるわけだが、歌い方が春に見た時とはだいぶ違う。「バルジャンの独白」は、歌うというよりほとんど叫んでいた。また気分次第でタメをとるために、指揮者が合わせるのに苦労していた。さらに「裏切りのワルツ」では勝手にセリフまで変えて笑いを取る始末である。

しかしそこまでやっても「レ・ミゼラブル」の確固とした世界観は揺らぐことがない。それほど、この作品は力強いのだ。だから他のキャストも、山口を見倣え、とは言わないが、もう少し個性を生かした演技をしてもいいと思う。

カーテンコールでも、山口は(これはいつものことだが)スパークしていた。カーテンコールの「これが最後ですよ」といういわゆる「締めのあいさつ」は、見るたびに違うネタを披露してくれるので楽しみにしていたが、今回は岡幸二郎とともに、それぞれリトル・コゼットとリトル・エポニーヌを連れて登場。袖に下がると思いきや振り向いて何回も4人で客席におじきをして、大いに笑いを取っていた。

全体的に、満足感の高い出来だった。やはりこの作品は素晴らしい。もう何回観たのか自分でも分からないが、観るたびに新しい感動を発見することができる。発見といえば、梅田芸術劇場は帝劇に比べ、1階席の傾斜角度が高い。そのため、今まであまり見えなかった俳優の演技や、細かい動きを良く見ることができた。1幕最後の「ワン・デイ・モア」で、バルジャンは旅立ちの支度をしているが、カバンに詰めているのはコゼットと初めて出会ったときに着せた服、プレゼントした人形、そして司教にもらった銀の燭台といった品々。ひとつひとつ、思い出をしまいこんでいるのだ。それらの品が、帝劇ではよく見えない。これは、演出効果としてはマイナスだろう。どうもレ・ミゼラブル=帝劇というイメージがあるが、違う劇場で観れば違う部分も見えてくる。そういう視点で考えれば、来年春の日生劇場公演や、いずれ行われるであろうリニューアルされた帝劇での公演にも、期待したいところだ。

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レ・ミゼラブル 大阪公演のホームページ

http://www.umegei.com/m2005/les_miserables_spe.html

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