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2005年8月17日 (水)

四季「アイーダ」

「アイーダ」は初見である。ブロードウェーの評価もいまひとつであり、四季もさほど力を入れていない(ように見える)ので、さして食指が動かなかったのだ。2000年の冬にニューヨークに行ったときも、すでにアイーダは開幕していたが、「ライオンキング」に足を向けてしまった。しかし今回の公演も千秋楽が発表され、永久に観る機会を失うかもしれない、と思いこの機会に観ることにした。

舞台は現代の博物館から始まる。そこに展示されているのは古代エジプトの遺跡。そこから一気に時間をさかのぼり、ファラオの時代でストーリーが展開していくのだ。

この始まり方は、つかこうへいの「飛龍伝」のオープニングに似ている。それで、飛龍伝のような血の吹き出るような悲痛なラブストーリーを想像したのだが、そうではなかった。基本的にオペラ「アイーダ」と同じ物語だが、アイーダ、ラダメス、アムネリスの三角関係をよりメロドラマタッチで描いており、野郎にはちょっと厳しい。特に前半のぬるい展開は、エルトン・ジョンの生暖かい音楽とあいまって、体がカユくなるシーンの連続。どうにも眠くなってくる。

後半になると、次第にテンポもよくなり、それなりに引き込まれる。残念なのは、印象に強く残る曲が少ないことか。ラストシーンには賛否両論があるだろうが、自分は賛成派である。つかこうへいの作品もそうだが、悲しい終わり方をする舞台ほど、最後にひと工夫を凝らし、観客が明日に向かって元気に歩いていけるよう配慮するものだ。

というわけで、作品としては予想どおり物足りないものだったため、興味はいきおい役者の演技に移る。四季がどんなに“作品本位”を訴えようとも、演劇とはそうしたものだ。

この日、アイーダを演じたのは井上智恵。この役は長く濱田めぐみが務めていたため、宣伝のポスターや映像などに登場するのはすべて濱田だ。それに慣れていると、出てきた瞬間「えっ」と思ってしまう。

最初に言っておくが、井上智恵という役者は好きだ。確かな歌唱力と、ガッツのある演技でファンも多い。しかし、この人の顔はあまりにも日本人顔で、外国人の役をするとどうも違和感がある。「エビータ」でもそう感じた。それに加えて、今回のメイクだ。あまりにもヘンで、笑ってしまう。これはいかがなものだろう。

まあ観ているうちに慣れてしまい、さほど気にはならなくなってきたが、こんどは「誰かに似ている」気がしてきた。誰だろう。

そうだ。

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テレビ版「がんばっていきまっしょい」のイモッチだ。

そう思うと、再び笑ってしまい正視できなくなってきた。

濱田はもともと美人だが、薄い顔なのでどんなメイクも似合う。井上の場合はそうはいかない。であれば、もっと役者にあったメイクを考えるべきではないのか。四季の場合、役者が変わっても同じようなメイク、かつらになる。しかしブロードウエーの「美女と野獣」ベルや、ウエストエンドの「マンマ・ミーア!」ソフィなどは、役者の顔だちや髪質をうまく生かしたビジュアルになっていた。この公演パンフレットに作詞家ティム・ライスのインタビューが載っているが、その中で「オペラでは出演者の容姿が役にふさわしいかどうか考えないが、それはどうかと思う」と述べている。四季は、その言葉の裏にある指摘に真摯に耳を傾けるべきだろう。

アムネリス役にはシルビア・グラブ。高嶋政宏の奥さんだ。この人の実力は折り紙つきで、また華やかな雰囲気がアムネリス役にはぴったりである。前半の弱さ、かわいらしさと、終盤の強さ、気高さの表現が対称的で、しかも自然に決まっており、素晴らしい演技だった。この公演を観る限り、完全にアムネリスの印象がアイーダを上回っていた。四季もよくこんな人材を客演で担ぎ出せたものだ。考えてみれば、四季は以前から高嶋ファミリーには接近していて、東宝ミュージカルの看板の1人である高嶋兄はともかく、高嶋政伸のほうは四季の会会報「ラ・アルプ」に登場したりしている。いずれ、兄も引っ張りこむかもしれない。ぜひライオンキングのムファサとか、マンマ・ミーア!のハリー・ブライトでも演じてほしいものだ。

今回の配役に不満があるわけではないが、やはり濱田めぐみのアイーダも観ておきたいし、四季の舞台に戻ってきた沢木順の演じるゾーザーも観たいものだ。こう考えると、やはりくだんのキャスト発表方法改悪問題に、怒りを感じざるを得ない。

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「アイーダ」のホームページ

http://www.shiki.gr.jp/applause/aida/index.html

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