スティーブン・スピルバーグ「宇宙戦争」(ばれます)
世の中には、2種類の映画ファンがいる。スピルバーグが好きな映画ファンと、スピルバーグが嫌いな映画ファンだ。スピルバーグを嫌う人は、彼の映画には知性がないと言う。でも、映画に知性なんてクソクラエな自分としては、当然スピルバーグが大好きなんであります。
一時期、嫌いになっていたときもあった。妙に社会的な作品を作っていた頃である。しかし「シンドラーのリスト」でアカデミー賞を獲ってからは、またこっちの世界に戻ってきてくれた。そして、それ以降は作るたびに馬鹿映画の巨匠として不動の地位を確立しつつある。
そして今回の「宇宙戦争」。また一歩、その階段を上ったような気がする。スピルバーグの最高傑作として誰もが認める「1941」には一歩及ばなかったかもしれないが、出色の出来と言っていいのではないか。
何が驚いたかって、H.Gウェルズの原作、そして1953年の映画「宇宙戦争」のイメージをそのまま受け継いだことである。通常、著名な監督が原作のある映画やリメイクに取り組む場合、独自の視点でイメージを再構築するものだ。
だがこの映画で見た光景は、小学2年生のときに読んだ「 宇宙戦争
CGなどの技術的な進歩はもちろんだが、スピルバーグ自体も進歩している。それは、モンスターの描き方だ。97年の「ロスト・ワールド」の後半、高級住宅街を練り歩くティラノサウルスを見て「スイピルバーグは怪獣の撮り方を知らねえなあ(恐竜だけど)。日本の怪獣映画のビデオを10本も送りつけてやろうかな」と思ったものだ。しかし、どうやら誰かが本当に送りつけたらしい。今回の3本足ロボットの見せ方など、随所に日本の怪獣映画、それも黎明期の、怪獣が恐怖の対象として描かれていたことの作品の影響が強く見て取れる。押しも押されぬスター監督なのに、ちゃんと勉強しているところが泣かせるではないか。
もっとも、「父と子」の絆などを描いた人間ドラマは、ロスト・ワールド同様ぜんぜんダメで、これは全く進歩していない。それでこそスピルバーグというものである。
人には全くもってお勧めできない映画であるが、自分としては大満足。最近、観る映画がどれも満足度が高くて嬉しい限りだ。
ところでこの映画に、ひとつだけ大きな疑問が残る。
いったい大阪ではどうやって3本足ロボットを何体も撃破したのだろう?
「世界最強の国」の軍隊もかなわない敵を、関西人だけはいとも簡単に倒してしまったという伝説だけが映画の中で語られる。きっとスピルバーグは来日したとき、大阪でとてつもなく恐い経験をしたに違いない。
「宇宙戦争」ホームページ
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント