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2005年6月 5日 (日)

四季「美女と野獣」 花をたずねて三千里

うまい料理を食って満足し、福岡空港へと向かう帰り道。

キャナルシティの前を通りかかったら「美女と野獣」の看板が目に入った。

一応キャストだけでも確認してみるか、と覗いてみると、ベルを木村花代が演じているではないか。

いやあ、知らなかったなあ。今回はあくまでイカを食べるのが目的だったのだが・・・。まあ仕方ない、せっかくだからついでに観ていくか。ヒマだからな!

すいません。嘘をつきました。

さて、「美女と野獣」は95年-98年の東京ロングラン以来だから、だいぶ久しぶりだ。キャッツやレ・ミゼラブルと並ぶ好きな作品でありながら、なかなか観る機会に恵まれなかった。京都にも何度となく行こうと思っていたのだが、どうせ観るなら花ちゃんベル、と決めていたので、うまくタイミングが合わなかったのだ。

その花ちゃんベル。

このキレイさは、奇跡だ。

とても言葉では表現できない。マコも、ジェリーロラム=グリドルボーンも、ディアナも、ソフィーも、エルコスも良かったけど、このベル役はまた格別の出来である。

前半の青いスカート姿は日本人がやるとどうにも違和感があるのだが、これかばっちり決まっている。どうも、花ちゃんのルックスは、こういうマンガな格好が似合うようだ。そして第二幕の舞踏会で披露するドレス姿は、本当にタメ息が出るほど美しい。ジェリーロラムのときはニヤけている自分に気付いたが、今回はそんな自覚をする余裕もないほど見とれていた。

もちろん見た目の話だけではない。比較的自分の解釈で演じるタイプなので、ある程度枠にはまった演技を強いられるベル役がどうなるか不安な部分もあったが、全くの杞憂に終わった。一幕では稟とした強さと、父の前でふと見せる弱さをメリハリのある演技で表現し、二幕では野獣の中に自分との共通点を見いだした瞬間から一気に心を開いていく一途な側面を強烈にアピールした。

これまで、数多くの女優がこのベルを演じた。堀内敬子のベルは本当にかわいらしくて、会場の男性客はみんな自分同様口が半開きになっていた。だがそれだとベルよりも、敬子ちゃんの印象が残ってしまう。濱田めぐみはその天賦の才能をいかんなく発揮し、「ベルそのもの」を忠実に舞台上に現実化してみせた。しかし今度は逆に、濱田の個性が感じられず、インパクトに欠けた。

今回のベルは、いったんベルというキャラクターをアニメーションの中から抽出して、その要素を木村花代というフィールド上に再構築している。だから、ベルそのものでもあり、同時に花ちゃんの魅力も伝わってくるのだ。そしてその2つの相乗効果で、観客に衝撃的なまでの印象を残す。これは観ておいたほうがいい。花ちゃん萌えの野郎どもは、直ちに福岡に結集すべし。来週も出てるかどうか分からないが……。

柳瀬大輔のビーストも良かった。「ジーザス・クライスト=スーパースター」でイエス役を演じてから確実に一皮むけた感のある柳瀬。安定した歌声や笑いの取り方など、かつての芥川英司に勝るとも劣らない魅力的な野獣である。

拾いものだったのが道口瑞之のルミエール。「Be Our Guest」で最大の見せ場をリードするこのローソク人間は、「不良中年」のイメージが強い。初演では御大、光枝明彦が奮闘していた役だ。いっぽう道口は「夢から醒めた夢」メソ役の学生服姿が似合う若い役者。ちょっと合わないかな、と思っていたところとんでもない。器用で、口がうまくて、実は少し頑固なところもあり、そして何よりエッチなルミエールを好演した。笑いを取るところは確実に決めていたし、Be Our Guestは自分が今まで観た中で最高といえるぐらいに大いに盛り上がって、万雷の拍手を誘っていた。その演技スタイルは、確かに下村尊則を手本にしたものかもしれないが、道口も下村並みに器用な役者のようだ。さらに自分なりの演技を盛り込んでいけば、一層面白いルミエールがの誕生を期待できる。

田島雅彦のガストンも好印象。やや迫力には欠けるかもしれないが、その馬鹿っぷりには愛嬌があり、恨まれながらも町の人々がついてくる、ガキ大将キャラを表現することに成功した。そして二幕では、一点して凶悪な表情を見せた。その落差がガストン、そしてそのガストンをヒーローに祭り上げてしまう人々の中に潜む、深い闇を気付かせてくれる。

全体的に、若い役者がのびのびと演じている、という印象の公演だった。それでいて、カンパニーとしてのまとまりを感じさせたのは、やはり作品の世界観が明確だからだろう。97年末にブロードウェーで観たときは、どの役者も「ディズニー映画なんてカンケイないぜ」というように、自由にそれぞれの演技を楽しんでいた。それでもちゃんとまとまるのである。

また、以前のロングランでは、「ディズニーミュージカルを、四季が翻訳上演している」という雰囲気だったのが、もうこの作品は「キャッツ」や「ジーザス・クライスト=スーパースター」同様、すっかり四季のものになっている。翻訳上演をしながら、それを自分たちのものとして取り込んでしまう演劇界のリヴァイアサン、劇団四季。その上で飲み込んだものよりも優れたものを創造できるようになれるかどうかが、今試されている時期だと思う。それに失敗すれば、浅利慶太が劇団を去ったあとの四季は、空中分解してしまうはずだ。

そしてそれに成功すれば、野村萬斎の「自分は日本の演劇文化を海外に広げる『逆・劇団四季だ』」というコメントに、大人気なく激昂するようなこともなくなるだろうに。

きょうのおみやげ

福岡シティ劇場が通算上演回数2500回を越え、その記念品が四季の会会員に配布された。一辺5センチほどのガラスの立方体の中に、レーザー照射によって刻まれたビーストのシルエットが浮かび上がる。ずっ しりと重く、なかなか豪華な感じのする一品だ。2500

「美女と野獣」公式サイト
http://www.shiki.gr.jp/applause/bb/

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