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2005年6月19日 (日)

「WE WILL ROCK YOU」日本公演

先月、ロンドンで観てきた「WE WILL ROCK YOU」の日本公演が先月から始まっている。来日公演としては異例の3カ月ロングランだ。

ネタバレを含むので、最初に結論を。

「興味あるけど、ツアー版はちょっとなあ・・・」という人がいたら、すぐにその考えを捨てて観に行ってください。大丈夫です。

ここから本文。

ミュージカルのツアー公演というのは、たいがい期待できない。アメリカのヒット作品だと、ブロードウェーで出ているのが一軍、西海岸で出ているのが二軍、米国内ツアーが三軍、ワールドツアーに出るのはその次、という程度なのだろうか。正確には知らないが、どうもそのぐらい、満足度は低いのである。「どうせあたしらドサまわりだしさ~」「日本人なんて、適当にやってりゃ喜ぶのよ~」という意識が見え隠れ、どころかありありと伝わってくることも少なくない。

最近だと「シカゴ」が代表的で、99年の来日公演はずいぶんがっかりさせるものだった。2003年の来日ではそれよりはだいぶましだったようにも思うが、とうていあの作品のブラックで乾いた笑いを表現しきれてはいなかった。なのに連日満員御礼、追加公演も決定。これでは日本の客がナメられても仕方がない。今年もやってくるが、果たしてその出来はどうか。

だから今回も、あまり期待はしていなかった。そのために、この日本公演があることを知りながら、わざわざロンドンで観ておいたのだ。

洋楽に詳しい友人と連れだって、会場の新宿コマ劇場へ。コマでミュージカル、というのは安達祐実の「オズの魔法使い」以来だ。

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まず目に入った、フレディ・マーキュリー像。ドミニオン劇場に飾られているものを模して作られているが、その第一印象は「げっ。しょぼ……」。嫌な予感は確信に変わって、ややうつむき加減に入場した。

チケット販売には苦労しているという噂で、土曜にもかかわらず空席が目立つ。ますます消沈している中、幕が上がった。

ところが、である。

どの役者も、非常によく声が出ている。演技もいい。またツアー版にありがちな、ばらばらな感じもなく、呼吸のあったやりとりがカンパニーとしてのまとまりを印象づける。そして何より、「日本人相手なんて、チャンチャラおかしくて真面目にやってられないわ~」といういい加減さが全くない。

ウエストエンドにはない客席を使った演出も盛り込まれ、楽しませてくれる。日本向けのギャグや日本版特別アンコールも用意されるなど、サービス精神にもあふれていた。

終わってみれば大満足の出来。ここまでのものが観られるなら、わざわざイギリスで観るまでもなかったと思うほどだ。この作品の脚本は緻密な構成よりもセリフ回しの面白さを重視しているため、日本語字幕でその面白さを味わうことができたということも大きかったが、それだけではない。ツアー版でこれほどのレベルの舞台を観られたことは、まったくの驚きである。

友人に、全編に散りばめられた洋楽ネタについて解説を受けて、さらに理解を深めていたところ、興味のある指摘が。

「英語がオーストラリアなまりだった。彼らはオーストラリアから来たのか?」

えっそうだったのか。さっそくパンフレットで確認したら、そのとおり。2003-2005年、足かけ3年のロングランをオーストラリアで実現したカンパニーが、そっくりそのまま来日していたのである。

つまり、この公演はツアー版ではなかった。

そうなれば、個々の俳優の実力も、全体のまとまりも、あって当然である。

なのに、この情報はほとんど公開されていない。公式サイトを見ても、そんな解説は見あたらない。ただ、キャストのプロフィールを見るとみなオーストラリア出身とか、ニュージーランド出身とある。パンフレットにも、この情報は正面からは書かれておらず、スタッフのインタビューの中ではさりげなく書かれているだけである。よく見ると、「後援」としてオーストラリア大使館の名前がある。

そこでオーストラリア大使館のサイトを訪ねてみると、ばっちりこのことが書いてあった。

http://www.arts.australia.or.jp/events/0505/wwry/

これですっきりした、とはいかない。ならばなぜその情報を宣伝の中で言わないのか。

これは、来日公演の集客における悪しき習慣である。あまりミュージカルを観たことのない人であれば、「ブロードウェーミュージカル日本公演」というと、ブロードウェーで演じている人達がやってくるのだと思うだろう。その勘違いを利用して集客するのである。もちろん中にはブロードウェーの舞台に立った人も多くいるかもしれないけど、実際には三軍、四軍なのだから、これはウソだ。ただ最近はだいぶ状況が変わってきている、という声もあるので、一概にツアー版はダメだとは言わないが、ツアー版とはそういうものだ、ということを説明しておく義務はあるのではないか。

今回も、わざわざ「オーストラリアから来た」と言って、ウエストエンドで演じている人達が来る、という夢をこわすことはない、という判断なのだろう。主催者の気持ちも分からないではないが、今や牛肉の産地を偽っても問題になるご時世だ。堂々と「オーストラリア産」を名乗ってチケットを販売するのが筋というものだろう。客にも、カンパニーにも失礼な話だ。

しかしツアー版、翻訳上演以外に、海外でロングランを達成したカンパニーをまるごと持ってくる、という輸入の仕方があることは初めて知った。これなら、オリジナル言語で、しかもある程度レベルの高い舞台を日本国内で観ることができる。ぜひ、今後もこうした試みを実現してほしいものだ。

そのためには、この公演がまずまずの成功を収めなくてはならない。先に書いたように、現在は苦戦を強いられているようだ。自分も最低もう一回は観にいく。まだ迷っている人もぜひ足を向けて欲しい。

WE WILL ROCK YOU日本公演のホームページ

http://www.wwry.jp/

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コメント

ど~も。洋楽に詳しいかどうかは別にして、本日同行した"友人"というヤツであります。
いやぁ~、ヤボオ氏のような、ここまでの深い考察にまでは及びませんでしたが、興行主サイドやっぱりオーストラリアのことは明示するべきですよね~。
ちょっとバレますが、"オーストラリア"に気づいてこそ笑える場面・セリフも(ちょっとだけど)あるんですからね~。気づかなかった人は100%楽しめなくても知ったことじゃ無いってのでしょうかねぇ。詐欺じゃん、と言いたい。
演ずる側が、あれだけローカライズに心を砕いているってのになぁ。(カタコトの日本語を交えてまで日本の観客を楽しませようという姿勢は感動的です。)
ミュージカル初心者の小生でも、かなり楽しめました。
ヤボオさんに大感謝!!

この感動を与えてくれたヤボオ氏とWWRYのメンバーに・・・

"May the Force be with you, always....."

投稿: 譲二 | 2005年6月19日 (日) 06時33分

ネットで本名書いちゃだめじゃん。と一瞬本気で書いた自分はダークサイドに転落ですか、そうですか。

そんなわけで来週はいよいよ暗黒面が支配します。

投稿: ヤボオ | 2005年6月19日 (日) 22時42分

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