存在と時間
ピンポーン。
土曜の午前11時。
当然のように寝ていたところ、ドアホンで起こされた。
勧誘の場合が多いので無視してもいいが、宅配便だったりするとあとで面倒なので出ることにする。
「へい、何でございやしょう」
「排水口の洗浄に上がりました。」
あっ。忘れてた。いつもこの部屋だけすっぽかしているので、大家から今回は確実にお願いしますよ、と念を押されていたのに。
「すいません、室内に入れていただいてよろしいでしょうか?」
室内の様子
よろしいわけがない。
「あの申し訳ないんですが、ちょっとだけ散らかってるので、ほかの部屋を優先していただけないでしょうか?」
「ああ、いいですよ。でも散らかってても大丈夫ですよ。作業するのは、流しと、洗面台とかその周りですから」
洗面台とか、その周り
「わかりました。お手数おかけします」
スクランブル発令。とりあえず関係ない部屋に押し込めるものは押し込み、ゴミはまとめて、掃除機をかける。流しはもとより使ってないので問題ない。30分で作業終了。
「こんにちは~よろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞどうぞ。こちらが洗面台で、その奥がお風呂場。流しはこちらです」
入ってきたのは26,、27の男性職員。相手はこのマンションの各部屋を回っているのだから構造は熟知しているはずだが、あえて言ったのは「関係ない部屋は覗くなよ」という無言の圧力である。むかし、共産圏に取材したドキュメンタリーとかでは必ずその国の広報官がそういう動作をしていた。
「ああ、あと清掃はしませんがトイレもチェックするように大家さんから言われてるんで」
トイレ?
映像使用不可
「ダメです。
ダメです。
ダメです。」
ただごとでない雰囲気を察したのか、
「じゃ、洗面台とかの作業してますから、その間に片づけてください」
バレバレだ。
第二次スクランブル発令。
トイレに閉じこもり、サンポールやトイレクイックルを駆使して清掃。床に散乱したトイレットペーパーの芯、その他言えないものを袋に閉じこめる。
幸い、先日渡英する前に客死した場合のことを考えトイレだけはざっと掃除しておいたのだ。恥ずかしい書籍や映像資料はもはや隠しようがないし、笑ってもらえるだろうからそのままでもいいが、トイレが汚いのはちょっとシャレにならない。
「ふうー。トイレどうぞー」
「ありがとうございます・・・キレイじゃないですか。」
やった。ホメられたぞ。
「ははは、トイレって言ったらぎくっとされたんで、死体でも隠してあるのかと思いましたよ、いやいや冗談。」
君がそれを言うな、君が。
教訓。
例え1人暮らしの部屋といえども社会に存在している以上、社会との文脈を完全に絶った空間というものは存在しない。車上あらしのときにも思ったが、それがいつなんどき人目にさらされることになるか分からないのだ。
ハイデガーの指摘するところの「世界内存在」(In-der-Welt-sein)とは、きっとこういうことなのだろう。違うと思うけど。
また一歩、実存くんに近づいた。
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コメント
うわ~
きたなすぎです!
投稿: eccolo | 2005年5月23日 (月) 17時41分
いやいや、ゴミを出さないゼロエミッションな生活を・・・
投稿: ヤボオ | 2005年5月23日 (月) 23時12分
TV「片づけられない男」特集のためのヤラセじゃないですよね…。
V6が訪ねてきてくれるのを待っているとか…?(それは汚ギャルのみ)。
(号泣)
投稿: たるみ | 2005年5月24日 (火) 15時07分
V6!「マシンハヤブサ」ですね、望月三起也の。なつかしいなあ。
テレビ版の主題歌がすぎやまこういち作曲なんですよね。もちろん歌は水木一郎でカッコよかった。
さて、私は片づけられないのではありません。片づけと片づけの間隔が、ほかの人よりちょっとだけ長いのです。ま、今年もお盆前には・・・
投稿: ヤボオ | 2005年5月25日 (水) 00時21分
僕も昨日、相方に「部屋にものありすぎ!もっと捨てなさい!ため込みすぎ!」と怒られました。
ごみ減量化政策をメシの種にしているので、吟味して分別して、リサイクルできるものはしようとしているのですが、マニアックすぎて引き取り手がないのです(´(エ)`;)
そうです、私も片付けられないのではありません。むやみに使い捨てる風潮に抗っているのです。エコな人なんですよ。地球の温暖化は進む一方ですが、どうして世間の風は冷たいのでしょうか。
投稿: ぬのくま | 2005年5月29日 (日) 11時41分
私の場合、怒ってくれる人がいないのをいいことにますます増長して、また余計なものを買ってしまいまました。詳細は上のエントリーで・・・
投稿: ヤボオ | 2005年5月29日 (日) 23時33分