食玩ブームに意見する
たまにはウェブログらしく、社会的事象について考察をめぐらせてみよう。
近年、急速に市場を拡大させているものに「食玩」がある。本体の菓子よりもオマケに重点を置くという商品自体は、さほど新しいものではない。その原点はカバヤ食品のビッグワン・ガムだろう。1978年の発売で、販売価格は100円。中にはプラモデルと大きめのガムが入っていた。100円でプラモデル、というのは子供にとっては魅力的な価格設定で、いかに材質がチープであろうと、ガムがとてつもなくまずかろうと、ずいぶんと買い込んだ記憶がある。
それ以降さしたるヒットもなかったこの食玩だが、99年にフルタ製菓が発売した「チョコエッグ」で華麗に復活。そのフィギュアを制作した海洋堂は、オタク向けのガレージキットメーカーから一躍産業界の檜舞台に躍り出る。いまだ従業員は数十名だが、その名は全国にとどろくようになり、今やその名前が見られないコンビニエンスストアはほとんどない。
しかし気になっているのは、いまの食玩はほとんどが大人向けであるという点だ。食玩の魅力は、子供でも気軽に楽しいおもちゃを入手できることにあったと思う。それがどうだ。喜んで食玩を買っているのはいい年をした大人である。日本は一体いつからこんな幼稚な国になってしまったのだ。しかも財力にものを言わせて、10個、20個とまとめ買いに走ることも珍しくない。ものが売れることで経済効果を生むのは結構だが、その消費基盤はあまりにも脆弱ではないのか。
しかも大人は菓子などに興味がないから、おまけを取り出して菓子はすぐに捨ててしまう。ビックリマンチョコのときに引き起こした問題を、成人になっても繰り返しているのだ。どんなものであれ、食べ物を粗末にするのは恥ずべき行為である。
そんな中、全日空が客室乗務員のユニフォームを一新したのを記念して、歴代のユニフォームを着た乗務員をモデルにフィギュアを制作して、食玩として売り出すという話を聞いた。「ANAユニフォームコレクション」というのだそうだ。
思わず我が耳を疑った。もちろんそれは子供向けではないだろう。しかも、なぜ客室乗務員を商品化する必要があるのか。航空機の乗務員は、単なるサービス係ではない。万一の事故の際、もっとも客に近いところにいる保安要員なのだ。それを面白半分にフィギュアにするなど、常識を疑う。
さらにそれは10種類あり、中身の分からない状態で購入するため、マニアは数十、場合によっては数百という単位で買い、不要なものをオークションに出品し売りさばくのだという。ネット社会の暗部を見たようで、気が重くなった。
すぐに全日空に抗議しようと思ったが、どのような製品なのか分からないでは的確な批判ができない。それで、まず買ってみることにした。
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