深田恭子「富豪刑事」
「富豪刑事」(テレビ朝日)が最終回を迎えた。
深田恭子がかわいい、という以外に全く見るべき点のない番組だったが、その恭子りんかわいさに毎回録画して観ていたのだから世話がない。
脇を固める役者陣には西岡徳馬に山下真司、升毅、相島一之、寺島進と芸達者をずらりとそろえ、デカレッドのオマケまでついていた。ゲストも毎回豪華で、古田新太や及川光博など、きら星のごとく並んでいたがそのあたりはこの人の解説に任せる。
これだけのキャスティングをしながら全く生かしきれていなかった。こんな脚本俺でも書ける、と思った人は自分をはじめゴマンといただろう。演出も何もかも安っぽくて、あばれはっちゃくじゃないけど情けなくて涙が出そうだった。最終回に近づいてくると、もう作品の完成度を上げようという気構えを放棄し、なかばやけくそというか、開き直った感が漂い始めた。それはそれでちょっと面白かったけど。
あえてほめるべきところを挙げれば、夏八木勲の演技。映像化された作品が、原作の面影を残すものである必要はないと思うが、夏八木演じる主人公の祖父は、小説に描かれていたイメージにあまりにもぴったりで、20ウン年前に読んだ記憶を鮮明に呼び起こしてくれた。
もともとこの「富豪刑事」は、主人公(男性)が事件解決のために引き起こす、馬鹿馬鹿しいほどの無駄遣いが痛快な小説だ。
今回のドラマ化にあたっては、恭子りんのかわいさだけで貴重なアナログ地上波の周波数帯を長時間にわたって占有するという、壮大な無駄遣いを成し遂げることで、その痛快さを表現しようとしたのだろうか?
最終回の、主人公が金をばらまいて難を逃れるシーン。あれは原作では、ドラマ第4話に出てくるべきエピソードなのだが、その回では描かれなかった。原作の中で最も印象的な場面だったのに、どうしてだろうと不思議だったが、ここで使うために残しておいたとは。この演出だけは納得だ。日本中を、そして世界を舞い散る一万円札。それは今後確実に岐路に立たされるであろうテレビメディアが、最後に咲かせたあだ花なのかもしれない。
「富豪刑事」のホームページ
http://www.tv-asahi.co.jp/fugoh/
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コメント
原作をやはり十数年前に読んで、これほど面白いものはない!とはまった身としては…今回のドラマは…あまりにも原作をゆがめているように思えます。筒井康隆は怒らなかったのか。
深田恭子はかわいいけど、だけどなあ…あれでは主人公が只の世間知らずでドキュソな行動ばかりとる困ったちゃんになってしまいます。富豪刑事は富豪故に奇想天外な作戦で核心に迫る(故に旧態なやり方で育ってきた布引刑事とコントラストが際だつ。布引は単なるいじめっ子キャラじゃない)、というのがあの小説の魅力だったわけで。
ここはやはり稲垣吾郎とか…独特のクサさを持った俳優が良かったと思います。夏八木勲の祖父役は確かに当たりですね。
まあ、この小説自体、映像化が難しいということも否めません。小説という媒体のなかでかなり実験的表現を試みたという点もありますから。
ドラマをみてはじめて「富豪刑事」を識った人は、是非原作(新潮文庫に収録)を読むことをおすすめします。さすが筒井康隆、とうなる作品です。
投稿: ぬのくま | 2005年3月18日 (金) 05時29分
ほとんどドラマとして評してはいけないレベルでしたが、これが現在のテレビ業界の実力なのだと思います。いずれこの局も再び乗っ取り対象になるでしょう。テレビメディアの黄金時代は、終焉が近づいています。
筒井康隆のミステリーといえば「ロートレック荘事件」も好きでした。「富豪~」よりはずっと後の作品ですが。
投稿: ヤボオ | 2005年3月18日 (金) 11時49分