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その2 ロビーパフォーマンス »

2005年3月26日 (土)

四季「夢から醒めた夢」
その1 観劇前に小一時間

※今回のシリーズは激しくネタバレしますのでご承知おきください。

四季のオリジナル作品、「夢から醒めた夢」である。何回か書いたように、自分の一番好きなミュージカルだ。

好奇心おう盛な少女ピコは、交通事故でこの世を去った少女の幽霊、マコと出会う。事故以来、悲しみに打ちひしがれている母をなぐさめるため、1日だけ立場を替わってほしいというマコの願いを聞き入れたピコが、幽霊の世界でさまざまな出会いを経験していくさまを描きながら、生命や思いやりの大切さを暖かいタッチで歌い上げていく。

赤川次郎の童話を原作に、子供向けミュージカルとして87年に誕生。翌年、一般向け作品として仕立て直された。そのため児童文学っぽい雰囲気が残っている。その上ファンタジーときては、どう考えても大の男には抵抗感があるだろう。

しかし、一度観たら忘れられなくなる作品である。それは音楽の力によるところが大きい。スコアを書いたのは三木たかし。日本演歌界においてその名は燦然と輝いている。石川さゆり「津軽海峡冬景色」を筆頭に無数のヒット曲を持つ。猪俣公章の死去によって活動への影響が心配された坂本冬美を救った「夜桜お七」も彼の作だ。ポップスにおいても、岩崎宏美「思秋期」や伊藤咲子「君可愛いね」、キャンディーズ「哀愁のシンフォニー」など、記憶に残る曲を世に送り出している。いずれも日本人の心の琴線に触れる、一度聞いたら忘れないメロディーラインが特徴で、それがそのまま「夢から醒めた夢」の印象につながるのである。

そして口あたりこそやさしいが、テーマは意外に重い。「死」にどう向き合うか、ということを軸に、「生」とは何かを正面から問いかけてくる。さらに戦争や貧困、飢餓といった根本的な問題から、リストラに受験戦争といった身近な課題まで、数多くの苦悩がモチーフとして取り上げられる。それが三木の音楽と、巧みな脚本、そして初演からこの舞台を支えてきた保坂知寿や光枝明彦、野中満寿夫ら、芸達者な俳優が紡ぎ上げてきた演技によって、明るく楽しい作品になっているのである。だから観終わったあとも、ずっしりと腹の底に響くような後味が残る。

口あたりのよさと、重いテーマ。2つが同居しているところにこの作品の魅力がある。それを象徴しているのがラストシーンだ。このシーンには、ピコ1人しか登場しない。そればかりか、舞台装置も何もない、空虚なステージだ。こんなに寂しいフィナーレは、ミュージカルとしては異例だろう。これが「本質的に、人は孤独なもの」という現実を冷徹につきつける。しかし、その現実の中で歓喜に満ちあふれた表情をするピコ。観客の目には、彼女の周りに多くの登場人物の姿が見える。その笑顔と、存在しない登場人物を見せているのは、この作品が訴えかける「思いやり」だ。冷徹な現実と、暖かい思いやりを同時に見せるという、計算された構図がそこにできていることを見逃してはいけない。

「感動的な作品」であることは間違いない。しかし、この感動がもたらすものはさわやかな涙だけに止まらないことも心しておくべきだろう。

(注意!ここから長くなります。)

思えば自分とこの作品との出会いは97年の12月、大阪でのことだ。その前日はNHKホールで、オペラ「ワルキューレ」を鑑賞したのを覚えている。たまたま大阪に行く用事があり、ついでにMBS劇場(当時四季が大阪公演の拠点にしていた)で何か観てこようと思ってチケットを前日予約したのがこれだった。作品としては何でも良かったのである。確か、何か輸入ミュージカルを上演する予定だったのが急きょ中止になり、「夢から醒めた夢」と「ユタと不思議な仲間たち」の連続上演が決まったのだった。

チケットを取ってから、どんな作品なのか四季の会会報で調べた。なんでも保坂知寿が小学生を演じるらしい。なんだかマニアックそうな舞台だな。しかし堀内敬子ちゃんも出るじゃないか。こりゃ楽しみだ。といういいかげんな気持ちで臨んだ。

始まってみるとなかなか面白い。保坂知寿の小学生ってのはどう考えても無理があるわけだが、それもだんだん気にならなくなってくる。終わって新大阪に向かう頭の中では「愛をありがとう」がリフレインしていた。魂が浄化され、「明日からは他人に優しくしよう」とか本気で考えていた。もっとも新幹線が東京に着くころには「あんなエッチな体つきの小学生がいてたまるものかい」とか思っていたので、すでに浄化作用は薄れていたが。

続く98年の首都圏公演は松戸、東京、ひたちなかで鑑賞。思い出深いのは東京の日本青年館だ。起伏のない自分の人生において珍しく特筆すべき日になったが、その話はさらに小一時間を要するから割愛する。

2000年には福岡公演に遠征。キャナルシティにある福岡シティ劇場に行ったのは「オペラ座の怪人」以来2回目だ。このときはすでに敬子ちゃんが四季を去っており、保坂ピコ&鈴木京子マコというベテランコンビだった。このときに演出、衣装を一新、曲の一部も手直しがなされた。開幕前のロビーパフォーマンスもこのときから始まった。霊界空港や部長の歌などは前のほうが良かったな、とも思ったが、エンターテインメント性が前面に出て、この作品にかける四季の意気込みが伝わってきた。

その新演出が東京に上陸したのは同じ年の10月。ここで木村花代マコの誕生だ。「エルリック・コスモス」以来気になっていた花ちゃんとの再会に、敬子ちゃんショックが完全に払拭された。

2001-2年の全国公演、名古屋公演には参戦せず。この間に樋口麻美ピコ誕生。2003年の東京公演では木村花代ピコも誕生し、樋口・木村の同期対決がマニアックな評判を呼んだ(自分の中で)。残念ながらこの時には花ピコは観ていない。

そして迎えた今年の公演。キャストは初日まで隠されていたが、最初の週でいきなり3パターンのピコ-マコがキャスト表に並んだ。

・ピコ 樋口麻美 - マコ 木村花代
・ピコ 木村花代 - マコ 花田えりか
・ピコ 吉沢梨絵 - マコ 紗乃めぐみ

花ちゃんはピコを演じた翌日にマコも演じる。まるで、レ・ミゼラブルの初演で滝田栄と鹿賀丈史がジャン・バルジャンとジャベールを交互に演じていたみたいだ。

こりゃ、全部観るしかないな。

というわけで、3月26・27日の2日間で3公演を観ることにした。誰も読まないと思うが、きっちりレポートさせてもらう。

200503270123000 

「夢から醒めた夢」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/yume/index.html

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コメント

「誰も読まない」じゃなくて
「『誰』しか読まない」の間違いですよね?
うふふ。堪能しました。ステキ。

投稿: 誰 | 2005年4月13日 (水) 17時53分

ありがとうございます。
ほめられて調子に乗ったわけではありませんが、さらに続きを掲載する予定です。

悪夢はまだ続く・・・

投稿: ヤボオ | 2005年4月14日 (木) 01時30分

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