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2005年3月20日 (日)

東宝「レ・ミゼラブル」3/19マチネ

3月8日から「レ・ミゼラブル」の本公演が帝国劇場で始まった。今回のキャスティングについては以前まとめた通りだ。自分としては、本田美奈子のファンテーヌで1回、山口祐一郎×鈴木綜馬(芥川英司)+井料瑠美の元四季トリオで1回、20周年記念スペシャルキャストで1回、と予定していたが、本田美奈子が病気のため降板。なので今回の参戦は2回になる見込みだ(今のところ)。その第1回目を19日の昼に果たしてきた。

自分の中で「レ・ミゼラブル」「キャッツ」「オペラ座の怪人」「美女と野獣」はほぼ同格になっている。なので一番好きなミュージカルは何ですか、と聞かれた時にはちょっと毛色の違う「夢から醒めた夢」と答えることにしている。今年前半はこの5作品のうち4作品が東京にそろうという幸せな状況だ。美女と野獣もキャスト次第で京都、福岡に遠征予定である。

しかし観た数でいったら「レ・ミゼラブル」がダントツの1位だろう。ほかはそれぞれ何回観たか、おおよその数は把握できるが、これだけは全く数えられない。東宝の巧み、というより露骨なダブルキャスト、トリプルキャスト戦術にまんまとはまった結果でもあるが、やはり自分はそれだけこの作品が好きなのだろうと思う。

今回の公演期間中、この作品の公演回数は2000回を越える。間もなく6000回に達しようという「キャッツ」には遠く及ばないが、その愛され方で言えば決して引けを取らないものだ。むしろ、「キャッツ」や「ライオンキング」などに比べれば、ずっと日本人のマインドに合ったものではないか。どちらかといえばナニワブシの人情劇だし、音楽的にも日本人の心の琴線に触れやすいようなメロディーだ。

3時間を越える大作とはいえ、原作であるヴィクトル・ユゴーの「Les Miserable」は、新潮文庫版で5冊に及ぶ大河小説だ。1本のミュージカルにまとめるのは無理があるのではないか、という声もあるだろうが、実はそうでもない。小説「レ・ミゼラブル」は、ジャン・バルジャンやジャベールといった貧困や犯罪の蔓延した社会でひたむきに生きる者たちの人間模様をタテ糸にして、ナポレオンの登場からウイーン体制、7月革命に至る時期のフランスにおける社会的混乱と、パリという都市の下水道を始めとした特色ある構造について詳細につづったものである。そこから、歴史の部分と都市学の部分をごそっと取り払うと、あとに残るドラマ部分はおおよそこの作品に描かれている部分ぐらいなのだ。日本人の多くが子供のときに読んだ「ああ無情」も、だいたいその部分にあたるから、こちらのほうが馴染みやすいという側面もある。

もちろん急ぎ足であることは否めず、また今世紀に入りブロードウェー公演(すでに終了)が俳優組合との関係で3時間半から3時間ちょっとぐらいに短縮し、日本公演もそれにならったことでますますダイジェストな感じが強まってしまった。これはぜひ前に戻してほしいところだ。

キャッツやオペラ座の怪人が、エキセントリックな趣向やスペクタクルな演出で目を引くのに比べれば、あくまで直球勝負の作品である。それが20年の長きにわたり愛されていることは、日本人とミュージカルとの親和性を示すものであると信じたい。

歌声のバランスでまとまりのある舞台に

さて、今回観劇したキャストは以下の通り。

ジャン・バルジャン 山口祐一郎
ジャベール 鈴木綜馬
エポニーヌ 新妻聖子
ファンテーヌ 井料瑠美
コゼット 剱持たまき
マリウス 藤岡正明
テナルディエ 徳井優
テナルディエの妻 森久美子
アンジョルラス 小鈴まさ記

すっかりこの作品の顔になった山口。持ち味である声量豊かなボーカルは、四季時代に比べると非常に安定感が出てきた。いっぽう演技については毎公演変えてくるので新鮮味もある。正直あまりうまい演技とも言えないが、それだけ本人がこの役に「挑む」気持ちを持ち続けていることの証で、好感が持てる。安心して、しかも楽しみに見られるバルジャンである。

2001年の公演以来、久しぶりに復活した鈴木。こちらも細かい演技で見せるタイプではないが、ノーブルなバリトンを発するやや無表情なジャベールは、どうにもつかみどころのない雰囲気だ。ミュージカルの中では少ししか触れられないが、ジャベールというのは牢獄で産み落とされたという生い立ちを持っており、単純な冷血漢と言うよりは、かなり屈折した複雑な人間だ。そういう意味では原作のイメージに近い。「スター」独唱では存分に歌声で魅了し、自殺の場面では、悩みぬいてぼろぼろになった抜け殻のような演技という、ほかのジャベール役者とはやや異なる印象で舞台を去った。カーテンコールでは、本編中の無表情さとは対称的に、屈託のない笑顔と、進んでほかの役者(アンサンブル含む)と肩を組んだり、山口のボケに突っ込みを入れたりというナイスガイぶりを披露した。やはりこの人は日本のミュージカル界には欠かせない至宝の1人だ。

井料は、歌もうまく美人で、演技もそつがないので個人的には大好きだ。ファンテーヌ役としてももちろん申し分ないのだけれど、どうもこの人には弱点がある。それは、小さい声で歌えない、ということである。声楽については素人なので、とんちんかんな指摘だったら謝るが、例えば絶命のシーンなどはもう少しか細い声で、と思いたくなるし、他の役者と声のボリュームをそろえなければいけない場面で、どうも井料の声だけ響くことが多い。もちろん、小さい声で歌うことほど難しいのだろう。かつてオペラでエディタ・グルヴェローバの歌を聴いたとき、声の高さを全く変えずに、声の大きさだけをアンプのボリューム調整つまみを回すように自在に変えていて仰天したことを思い出す。そこまではいかずとも、岩崎宏美や島田歌穂はそれに近いことができていた。それがあってこそ、彼女たちはこの作品で不動の位置を確立できたのである。

良かったのはこの3人の声のバランスが非常に整っていたことだ。やはりミュージカルは演技の呼吸だけでなく、歌の呼吸も合っていたほうが美しい。前述のように、井料の声はバランスを崩す要因になるが、そこはつきあいの長い山口、鈴木で、実にうまく合わせていた。二人が全く違う歌詞を同時に歌う「対決」の場面も、2001年にはお互いに声を張り上げるような形だったが、今回はそれぞれの声を確認するようにしながら丁寧に作り上げていた。

バランスがいいと言えば、エポニーヌ役の新妻聖子、コゼット役の剱持たまき、そしてマリウス役の藤岡正明の3人も、きれいに歌声がそろっていた。特にASAYANボーカルオーディション出身の藤岡は、今回がレ・ミゼラブルどころかミュージカルに初参加ということでやや不安もあったが、歌は全く問題がなく、演技も熱意あふれるなかなかのものだった。その藤岡と、前回公演から参加している新妻、剱持は、年齢やキャリアが近いこともあるのか、呼吸の合ったところを見せていた。

山口-鈴木-井料と、新妻-剱持-藤岡、という2つのバランスのとれたグループによって、全体的に非常にまとまりのある舞台となった。ただ、この2つのラインがクロスする、たとえばラストでバルジャンの「お迎え」にエポニーヌが登場するような場面だと、バランスが突然狂い始める。これは少し残念だった。

バランスといえば、森久美子と徳井優のアンバランスさも、重要なバランスだった。見た目のアンバランスさももちろんだが、オペラで培った実力で、余裕を感じさせながら歌う森と、一生懸命、譜面通りに歌おうとする徳井。どうして、いいコンビだ。テナルディエが一生懸命さを感じさせていいのか、という批判はあるだろうが。

山本耕史アンジョルラスを切望

今回、アンジョルラスを演じたのは小鈴まさ記。アンサンブル出身だ。歌唱力に難ありという前評判だったが、きちんと歌えており、演技も十分に合格点のものだった。坂元健児も好きだが、こちらのほうがよりアンジョルラスらしい気がする。岸祐二、東山義久は未見。

だが、やはりアンジョルラスは、冷静な指揮官であると同時に学生を、民衆を率いるカリスマでもある。もう少し強烈な印象が欲しいのも事実だ。特に、岡幸二郎が華のあるアンジョルラスを演じてからは、どうも普通の演技では満足できなくなってしまった。

そこで望まれるのが、かつて子役時代にガブローシュを演じ、2003年の公演ではマリウスを演じた、山本耕史のこの役での復活である。今回のキャスト表が発表になったとき、マリウス役にその名前がなかったのは本当に残念だった。しかし、今はマリウスではなくぜひアンジョルラスで、という気持ちが強い。「新選組!」土方歳三役で身につけたものを、この役に生かすことができれば、それは初演の内田直哉も、岡もしのぐ圧倒的なアンジョルラス像ができあがるはずだ。東宝も、その交渉はしたのかもしれない。今回、アンジョルラスが4人もいて、変則的なキャスティングになっているのはその影響なのではないか。とにかく、次回公演ではぜひ山本アンジョルラスを実現してほしい。

きょうのおみやげ

きょうは、OMCカード会員の貸し切り公演だったので、出演者のサイン色紙などが当たる抽選会があった。

なぜか、ありがたいことに自分は劇場ではとても運がいい。

レ・ミゼラブルでは、カーテンコールのときに、スタッフが舞台に向かって投げた花束を、役者が拾って客席に投げ返すという趣向が定着しているのだが、かつて、村井国夫の投げた花束が自分に向かって一直線に飛んできたことがある。

また、パルコ劇場に「笑の大学」再演を観に行ったときには、「客席にランダムにプレゼント引換券が置いてある」と聞いて、入場したら自分の席にばっちり置いてあった。プレゼントは、西村雅彦特製カレンダーだった。

どちらも女優さんがらみではなく、おやじがらみであるという共通点がある。今回の抽選では何が当たるのかと聞けば、山口祐一郎サイン色紙か、鈴木綜馬サイン色紙だという。何か予感がした。

というわけで、

souma

当たりました、鈴木綜馬サイン色紙。
ありがとうございます。



レ・ミゼラブルのホームページ
http://www.toho.co.jp/stage/lesmis/welcome-j.html

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コメント

めちゃくちゃうらやましいです・・・去年、丸ビルの試食コーナーで鈴木さんに遭遇したときも、ファンすぎて涙目で固まった私です・・・こんど生色紙見せてください。お願いします。

投稿: はにわ | 2005年3月22日 (火) 22時53分

え?芥川英司が試食してたんですか?
そりゃまた貴重なシーンを見たものです。

いや、それともアルバイトで実演販売してたとか。

どっちにしても似合いそうな気がしますが・・・

投稿: ヤボオ | 2005年3月22日 (火) 23時12分

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