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2005年1月10日 (月)

四季「コーラスライン」

年は開けたが、体調は悪い。もっともこの数年体調が良かったことなんてほとんどないのだから、これが普通と言えば普通だ。

年末年始も家に閉じこもって消化のよいモチばかり食べてテレビを見ていた。今年は例年にも増してつまらない番組ばかりだった。NHKの紅白歌合戦にいたっては、視聴率を見るまでもなく、この10年ほどで最低の出来だった。本当に、観るべきところがマツケンサンバしかなかった。

だがこれ以上汚い部屋に閉じこもって過ごしていると、なんだか死にたくなってくるので、無理にでも外に出ることにした。部屋を片づけるという選択肢は、ない。もちろん会社に行くためには外出するが、それはもとより生きている時間ではない。

それで「コーラスライン」だ。また四季かよ、という批判は甘んじて受けるとして、この作品は決して新年にふさわしいものとは言えない。舞台装置はシンプル。まっすぐに引かれた白い線(コーラスライン)以外には何もない。音楽にしても、「ONE」や「WHAT I DID FOR LOVE」は耳に覚えのある有名な曲だけど、さほど印象的ではない。それにテーマは「漠然とした不安」だ。およそ晴れ晴れとした気分にさせてくれる要素はこれっぽっちもない。

にもかかわらず、この作品を選んだのには理由がある。しかしそれを語ることは今はやめておこう(木村花代ちゃんが出ているからに決まっている)

このミュージカルもキャッツと同様、ストーリーらしきものはない。1人の演出家が、オーディションに集まったダンサーたちに質問を投げかける。前半は、自分たちの過去についての質問。ダンサーたちはそれぞれに生い立ちやこの世界に入ったきっかけ、これまでの苦労などを語る。家庭不和や容姿が劣っていること、マイノリティーであること、ゲイであることなど、それなりに本人たちには深刻な悩みではあるが、さほどドラマチックでもない話が次々に披露される。後半、1人のダンサーが足の痛みを訴えて退場すると、演出家は今度は将来について聞く。「今、踊れなくなったらどうするか?」するとダンサーたちは、また口々に心配やそれに対する気持ちの持ち方を語り始める。

全体を通じて、作品を覆い尽くしているのは漠然とした不安感である。それは過去に起因するものなのか、将来に対するものなのか、現在の状況についてなのか、よく分からない。それを探るために演出家は質問を投げかけているようにも見えるが、結局その不安の原因は突き止められることがなく、そして解決策も示されることなく、とりあえず何となく前に進んでいこうや、というアイマイな結論だけ出して幕を閉じる。

この作品がブロードウェーで幕を開けたのは1975年。ベトナム戦争が終結した年だ。この舞台に描かれている不安は、敗戦という現実を前にし、自信を失ったアメリカに広まっていたそれである。原案・振付・演出のマイケル・ベネットはその不安に対して向き合うためにこの作品を作ったという。しかしその不安とはすべての人が生きていく上で常に抱えている性質のものであり、よほど調子のいいときだけ、それを忘れることができるのにすぎない。だから、この作品はロングランに成功したのだろう。セリフの中には、この不安をアメリカのショウビジネスがロンドン勢のミュージカルに押されて自信を失いかけているという状況になぞらえているものもあるが、これは後に付け足されたものなのか、よく分からない。

いずれにしても、アメリカが自信を取り戻し始める90年代に入って、コーラスラインのロングランは終了した。今、アメリカは最高に調子づいている。そんな今こそ、日本はこの作品をかみしめるべきだろう。別に救いにはならないが、しかし少なくとも不安を抱えながら生きている自分たちの姿を確認することはできる。そこが何らかのスタートラインになるはずだ。

この作品に、ドラマはない。オーディションといういかにもドラマのありそうな素材を扱いながら、である。運を掴み、人に選ばれて、というのは結局毎日の生活の中で普通に行われていることだ。だからオーディションという側面だけを切り取ってみても、そこにはビジネスがあるだけで、人生などない。

そう、オーディションだとか面接だとかいうのは、茶番にすぎないのである。

自分がこの舞台を観た日、モーニング娘。の第7期メンバーオーディションの結果が発表になった。

結果は「該当者なし」。この用意された結末のために振り回され、怒られた6人の最終候補者には気の毒というほかはないが、この茶番性こそオーディションなのである。

やはり7期には、Berryz工房から嗣永と(以下略)

200501100324001
「コーラスライン」のホームページ
http://www.shiki.gr.jp/applause/chorusline/index.html

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