三谷幸喜「新選組!」終了
NHK「新選組!」が終了した。
約50回に及ぶ「大河ドラマ」を最初から最後まで通して見たのは、小学校時代の「獅子の時代」、中学時代の「峠の群像」、大学時代の「独眼竜正宗」以来か。大河ドラマに限らず、社会人になってからひとつのドラマをこんなに長期間見続けたのは初めてだろう。
そもそも「新選組」を素材として取り上げたことの評価、身分や時代といった現実の壁を冷徹に描きつつも暖かいタッチで描気出す人間模様、キャスティングの妙、俳優達の演技、心に残る音楽などなど、論じるべき点は多数ある。しかしそのひとつひとつをここに述べるのには、正直言って自信がない。それは多くのブロガーに任せるとしよう。
自分にとってこのドラマで最も注目していた点は、やはり緻密な計算に基づく構成力が持ち味の三谷幸喜が、その手腕をこの長大な巨編に発揮しうるかどうか、である。
最終回を見届けたきょう、自分は断言したい。三谷幸喜はその難題を見事に成し遂げた。
49回すべてとは言わないが、そのほとんどをそれぞれ一遍の舞台のように完成された作品に仕立て上げ、全体を通してみるとまたそれが一遍の作品として美しい流れを保っている。多くの大河ドラマはラストに向かうにつれて急ぎ足となり、雑な印象を残してしまうが、この「新選組!」は11月以降、ひとつひとつのエピソードを、風呂敷でもたたむように丁寧に閉じていった。そして最後には何も残さず、ふっと消えるようにきれいに終わる。こんな豪腕の作家を、自分はほかに知らない。
舞台や映画ならそれも可能かもしれない。しかしテレビドラマという、個人の感性だけでは作品を仕立てにくいメディアを使い、NHK、それも大河ドラマという伝統に守られた枠組みの中でそれをやってのけたのだ。
刑場に向かう近藤勇(香取慎吾)に対して、その母・ふで(野際陽子)が声をかける。
「近藤勇、よく戦いました!」
その言葉は、そのまま三谷自身に向けた言葉であっただろう。
これほど素晴らしいエンターテインメント作品を導き出す人材と、それに共鳴して作品を作り上げるスタッフ、キャストが存在することを、日本人は誇りに思っていい。松井の本塁打に多くの日本人が感じるような、なんだか知らないが嬉しくてたまらない気持ち。それに似たような感情を、いま自分は大いに満喫し、心の中で快哉を叫んでいる。
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コメント
初めまして。TBもさせていただきました。
ほんとにいいドラマでした。ありがとう。。
投稿: Yuseum | 2004年12月12日 (日) 23時18分
そうですね。「新選組!」は、BLOGコミュニティーによって視聴者が増えていった初めての大河ドラマといえるかもしれません。
投稿: ヤボオ | 2004年12月13日 (月) 10時13分
TVばかり見ているのに風邪をひいた不届き者です。申し訳ありませんでした。
そして、終わっちゃいましたー、どうしよう。
投稿: たるみ | 2004年12月13日 (月) 12時32分
えっ誰ですか、そんな失敬なことをカゲで申し上げているのは。私がとっ捕まえて意見してやりますよ。
とりあえず、冒険の旅に専念してみてはいかがでしょうか。
投稿: ヤボオ | 2004年12月13日 (月) 18時06分
ようやく落ち着きを取り戻しました。あ~本当に終わっちゃったんですね(涙)ヤボオさんの三谷考察、「うんうん!」って頷きながら拝見しました。三谷幸喜、本当によく戦いました!心から拍手を送りたいです。
投稿: ぽぽん | 2004年12月14日 (火) 13時44分
ぽぽんの姉貴、実は我が家には「眠狂四郎全集」のDVD-BOXがあるんでやんすよ。Vol1だけですけど。
投稿: ヤボオ | 2004年12月15日 (水) 01時08分
ヤボオ師匠!ギャッ!狂四郎様のDVD-BOX!いいなあ、いいなあ~!私はとりあえず『大菩薩峠』のDVD-BOXを買う予定です。ああ、雷蔵DVD、全部揃え隊。『新撰組!』DVD-BOXもそろえ隊!
投稿: ぽぽん | 2004年12月15日 (水) 19時55分