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2004年10月17日 (日)

NHK「ミニモニ。でブレーメンの音楽隊」

脚本、演出、俳優の3拍子がそろった「ミニモニ。でブレーメンの音楽隊」は、数々の傑作を生んできたNHKドラマの歴史において、「男達の旅路」や「夢千代日記」「なっちゃんの写真館」などと並ぶ出色の出来といっていい。

1話25分で全12回。NHK教育テレビで今年初めに本放送、夏に再放送された。なぜ今さら書くかというと、HDレコーダーがいっぱいになってしまったため、DVDとして発売されているものはそちらを入手することにしてHDからは削除することにしたから。それで消すまえにもう一度ちょっとだけ見ようと思ったが、結局全部見てしまった。

全体を3部構成にしており、ある洋館を舞台にした3つのドラマが現代、高度成長期、終戦直後と時代をさかのぼりながら描かれる。メインの登場人物はそれぞれ異なるが、ある少年が共通して登場する。第一部、第二部は幽霊として、第三部は不治の病を負った患者として。そしてハーモニカで奏でられるあるメロディーが全編を通じた重要なモチーフとなっている。

このドラマはまず脚本が優れている。せりふ回しはいかにもNHK教育テレビ的な部分も多いが、その構成が緻密に計算されており、視聴者を物語に引き込んでいく。前にも引用したが、三谷幸喜の言うように脚本の魅力というの計算された構成力にある。

主人公たちの悩みや悲しみと人間的な成長を描くという基本的な話はそれぞれの章で完結している。しかし第一部で大人だった登場人物が第二部では中学生だったり、謎めいたせりふの種明かしが次の章に託されたり、と、章をまたいで貼られた伏線がスパイスとして小気味よく効いている。第一部から第二部へのつなげ方など、身震いするほどキレのある構成だ。

そして最終章の最後が第一部のファーストシーンにつながり、すべての謎と視聴者の中での心のこりが溶解した上で、実にすがすがしいラストシーンを迎えることになる。

脚本を担当したのは藤本有紀。「東京ラブ・シネマ」など、あまり話題にのぼらない作品を書いた人だが、相当な力量だと思う。今後の活躍を期待したい。

演出は、遠藤理史ら3人。第一部は学園ミステリー、第二部はミュージカル、第三部は正統派の家族ドラマと、テイストを変えながらしつらえている。若者たちを主役にしながら、不良や不純異性交遊を正当化せずにドラマを作るのは、NHKだけにしかできない芸当だ。それは「少年ドラマシリーズ」以来の伝統である。第一部は特に少年ドラマシリーズっぽいな、と思いながら見ていたが、あとで調べたところこの遠藤理史という人は少年ドラマシリーズで育ち、それを自分の手で作りたくてNHKに入ったのだという。さすが俺である。

そしてミニモニ。だ。第一部主演、高橋愛のソツのない演技、第二部における辻希美の強烈なかわいらしさ、そして最終章の加護亜衣が身にまとう圧倒的な存在感。三者三様の魅力がそれぞれの章の演出と奇跡のようにぴたりとはまっている。「あれ、ミカは?」という質問はなしにしてほしい。大丈夫、ミカも(それなりに)重要な役で出てるから。

すべての章に登場するメロディーは、各章の中では主人公の成長や、友達、家族との絆を支える応援歌として使われている。しかし、最後まで見終えると、このドラマが壮大な鎮魂の物語だと気づく。生きる人を楽しませると同時に、死者の魂を鎮めるという、音楽の持つ陰陽2つの側面と全体の構成とがオーバーラップしていく。

さらに、各章に登場している家族が、判で押したようなサラリーマン生活に見切りをつけ、夢を追い始める夫婦(現代)、順調な生活を送りつつ、一億総中流という保守的な様式に向かって突っ走る夫婦(高度成長期)、日本の復興のために家族や自らの生活を犠牲にすることもいとわない夫婦(終戦直後)と、それぞれ時代を映し出しているあたりも興味深い。ほかにも特筆すべき点が数多くあり、よく25分×12回でここまで描ききれたものだと感心するばかりだ。

こうした優れたドラマが、子供向け番組、アイドル番組として認識され、それは間違ってはいないが、多くの人の目に触れることなく埋もれてしまうのは実に惜しい気もする。だが、おそらく子供時代にこの番組を見た人が、また大人になっていいドラマを再生産してくれることだろう。少年ドラマシリーズを見て育った人材が、この「ミニモニ。でブレーメンの音楽隊」を生んだように。

200410161743000

「ミニモニ。でブレーメンの音楽隊」公式ホームページ
http://www.nhk.or.jp/drama/archives/minimoni/

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コメント

ブレーメン好きとしては、ここも要注目かと。
http://homepage3.nifty.com/nono_cry/okusokutai/">http://homepage3.nifty.com/nono_cry/okusokutai/

個人的にブレーメンといえば、

・無難すぎるために後の二人の露払いとなってしまった高橋
・フォーク♪フォーク♪フォーク♪ ののたんは奇跡 
・ロリ・巨乳・メイドな加護。強烈です。

でしょうか。

東京ラブシネマといえば、アルバトロス(答辞)にいた叶井俊太郎をドラマ化、本人に「あんなのおれじゃねー」といわしめた作品ですね。

しかし、よろしく頼むといわれても、何をどうすればいいのか。。。(w

投稿: kunedog | 2004年10月17日 (日) 19時54分

「ミニモニ。でブレーメンの音楽隊」は、次からはTBSで「金曜ドラマ ブレーメンの音楽隊」として放送するそうですが、TBSでの「ブレーメンの音楽隊」には、納得がいかない点があります。ミニモニの4人のうち、高橋愛さんが成海璃子さんに、加護亜依さんが加地千尋さんに、辻希美さんが石橋杏奈さんに、ミカさんが谷村美月さんにそれぞれ変更になっているためです。もうすでに「ミニモニ」という意味もなくなってしまったからです。

投稿: 真駒内本町 | 2008年1月30日 (水) 21時18分

情報ありがとうございます!

投稿: ヤボオ | 2008年1月30日 (水) 23時55分

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