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2004年10月 2日 (土)

市村正親のこと、そして

銀座2丁目に、「ニューキャッスル」という小さなカレーのうまい店がある。「カライライス」として有名なそのカレーは、確かに独特の味わいでリピートして食いたくなるが、量が少ないのが難点だ。

その店のレジに、市村正親が店の人達と納まっている記念写真が貼ってある。日比谷などで公演があるとき、よく訪れているのだそうだ。店の主人いわく「実に気さくで、いい方ですよ」。

ふつう店の人は芸能人を評してそう言うものだが、恐らくそれは本当だ。別の人からもそう聞いた。ある都内の劇場を担当していた、Iさんの話である。

Iさんとは、彼がその前の職場にいたときに一緒に仕事をした関係で、ときどき入手困難な公演チケットを何とかしてもらったりしていた。

ある日、やはりIさんに取っていただいた公演を観終わったあと、劇場の出口にIさんが立っていた。お礼を言おうと思ったが、あいさつをしそびれてしまった。

その数か月後、Iさんが急病でこの世を去ったと聞いた。あのとき、あいさつをしなかったことは、今となっては痛恨の極みである。

市村正親は、そのIさんを「今、○○で飲んでるから来なよ」などと呼び出したりして、一緒に飲んだりしたのだという。これは、市村の気さくさを伝えていると同時に、Iさんの人柄を示すエピソードでもある。

温厚で実直な性格のIさんは、誰からも好かれ、信頼されていた。告別式では、その劇場で公演したキャストやスタッフも、多数かけつけたという。

今はただ感謝することしかできないけれど、Iさんのことは一生忘れてはいけないと思う。

Iさんはいま、合羽橋道具街近くの美しい寺院に眠っている。訪ねると、いつも新しい花が供えられている。

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