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2004年10月10日 (日)

那須博之「Devilman」(今日もどこかでばれてます)

他人にはお勧めできないが、自分としてはそれなりに満足だ。

ご存じの通り、永井豪の漫画「デビルマン」(72年~)は、20世紀に描かれた最高の漫画と評する人も多い傑作だ。そして、恐らく日本で最初にハルマゲドンを描いた作品である。自分が読んだのは連載終了から10年以上経った84年。当時ハンサムな高校一年生だった自分も、とてつもない衝撃を受けた記憶がある。その2年ほど前、りんたろうの映画「幻魔大戦」でハルマゲドンという言葉は覚えたものの、その本当の意味を知ったのはこのときだろう。

「デビルマン」は、まさしく現代の黙示録[Apocalypse Now]だ。黙示録を映画化しようというのだから、それはうまくいかないのが当たり前だ。断片的にでも、その福音を自分たちなりに解釈して伝えることができればそれでいい。

しかし今回の「Devilman」を監督した那須博之は、そのほぼ全てを1本の映画に収めようとした。実に果敢というか、無謀な試みだが、その意気や良しである。印象的なシーンやセリフは律儀に押さえているし、キャラクター構成も多少の組み替えはあるものの、かなり原作に忠実である。

元来、自分は「原作に忠実」という評価軸は持っていない。メディアが違えばもはや別物であって、原作のある/なしは誰が出演しているか、というのと同じように、興味を持つか否かを分ける一要素に過ぎない。だから何かが映像化されるたび「原作のほうが面白い」「原作はこうじゃない」とヒステリックに叫ぶ人たちには辟易している。

しかし「デビルマン」に関しては例外を認めてほしい。この作品の真価は世界観やストーリーを越えたところにある。やはりその言葉にならない何かを伝えられなければ「デビルマン」とは言えないであろう。

那須は、全てを描こうとしつつも、それは根本的に不可能であり、作品としては中途半端に終わることをよく承知していたのだろう。映画人として、未完成の作品を世に出すことはその矜持が許さなかったのに違いない。だから彼の最も得意な分野の映画として外枠を作り、その中のモチーフとしてデビルマンを描いた。彼の得意な領域、それは「ビーバップ・ハイスクール」に代表される「高校生映画」である。そう、「Deviman」は、パッケージとしては「ウォーターボーイズ」や「青春デンデケデケデケ」と同じような、高校生のみずみずしい感性を描いた映画なのである。その中で扱われているデビルマンのくだりは未完成であるが、高校生映画としては完成している。

ただ、出来自体はあまり評価できるものではない。好感は持てるが下手な演技、美しいがぎこちないCG、どれをとってもVシネマ的な安っぽさが漂っている。俺のようにVシネマ好きならいいが、完成度を求める人にはつらいだろう。もっとも現在の日本映画界の現状(資金力、技術力、人材)では、正直これが限界、よく頑張った、という気もする。

また、那須の演出は、あまり芝居がかった演出や二重三重に貼った伏線などは用いることなく、比較的たんたんと展開させていくタイプのものだ。スペクタクルな演出を期待した人はこれにまずがっかりするのではないか。自分の場合、「セーラー服百合族」(83年、当時中学三年生)から「ピンチランナー」(2000年、当時社会人10年目)に至るまで、ずっと那須演出とともに人間的成長を遂げてきたため抵抗感はなかったが…。

そういったわけで、他人にはお勧めできないが、自分としては満足している。そして何より、この現代の黙示録に、逃げることなく真っ向から取り組んだ姿勢には敬意を表したい。

この作品自体は駄作に終わっても、また誰かが必ず映画化するだろう。それはハリウッドかもしれないし、ずっと先のことになるかもしれない。そうして語り継がれていくのが「デビルマン」だ。

おまけ:残念なこと2つ。

1)ミキちゃんが緑川蘭子にしか見えないのは俺の勝手だとして、冨永愛のシレーヌは、ただのコスプレお姉さんにしか見えなかった(まあ、それはそれでいいのだけど)。これで観客、特に女性客の85%ぐらいは席を半分立ちかけると思う。

2)パンフレットの「人物相関図」に「飛鳥了/○○○」と書いてある。いかに多くの人が原作を読んでいるとはいえ、こりゃないだろう。

silene

「Devilman」のホームページ
http://www.devilmanthemovie.jp/
「Deviman」のブログ
http://devilman.cocolog-nifty.com/movie/
「ぐんぐんぐんま」のレポート
http://futennochun.cocolog-nifty.com/gungungunma/2004/10/_.html

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