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2004年6月12日 (土)

劇団☆新感線「髑髏城の七人」

97年に再演され、いのうえひでのり(演出)が「現時点でのベストワーク」(2000年の「踊れ!いんど屋敷」パンフレットより)と自ら評した「髑髏城の七人」。

それを、今年は古田新太主演版と市川染五郎主演版の2バージョンで上演する。単なるダブルキャストでなく、主演以外の配役も演出も異なる、2つの「髑髏城」を観られることになる。

まずは古太版が登場。東京では、新国立劇場と厚生年金会館の2会場で公演した。自分が観たのは新国立劇場。

敵味方入り乱れ、「七人」どころか10人以上の登場人物が見せ場を競い合う集団劇を、スピーディーな展開で見せていくいのうえひでのりの実力には脱帽だ。

橋本じゅんに河野まさとといった新感線のクセ者たちに加え、WAHAHA本舗の佐藤正宏、「熱海殺人事件・モンテカルロイリュージョン」以来つかこうへい作品の常連となった山本亨といった強烈な個性、それに水野真紀、坂井真紀、佐藤仁美という俺好みの豪華女優陣。

そうした中にあってもっとも印象的だったのは、商人姿で遊郭を取り仕切る、戦国版“男装の麗人”を演じた水野だ。

実はこの役、もともと男の役で、97年の公演では粟根まことが演じている。粟根の怪しくも格好いい見事な演技は話題になり、彼の役者としてのキャリアを大きく前進させた。

そうした役だから、これを誰が演じるか、大いに興味があった。まさか女の役になるとは思っていなかったから水野が出てきた時にはびっくりである。しかし、これは良かった。怪しさ、格好よさに色気が加わって、強烈なキャラクターができあがった。水野はセリフ回しや身のこなしにも迫力があり、大いに舞台ばえする。今後、彼女の舞台には注目していきたい。もちろん「もっと女の子っぽい美紀ちゃんが観たい…」と嘆く人もいるだろう。その気持ちはとってもよく分かるけど、これほどの実力を見せてくれた以上、今回は納得するしかないですよ。坂井真紀も、佐藤仁美もほんとうにいい演技をしていたのだが、水野に持って行かれてしまった感がある。

いやらしさと生真面目さ、インチキ臭さと誠実さが同居する「当たり役」を演じた古田は、この役に対する情熱が薄れているのか、あるいはどう新しい側面を見せるべきかを悩んでいるのか、迷いの感じられる遠慮がちな動きも垣間見えた。しかしもはやその存在感は圧倒的だ。もっと余裕しゃくしゃくで、ふてぶてしく演じてもいいのではないか。そこが古田の、役者としての生真面目さ、誠実さなのだろうが、困ったことにファンはどちらかというと、いやらしさ、インチキ臭さを期待しているのである。もちろん自分も。

ひとつ残念なことに、個人的にもっとも期待していた山本亨が、今ひとつ存在感を発揮できていなかった。敵軍の強力な剣士という役どころだが、右近健一が演じる悪役と、位置づけがかぶってしまったからだと思う。「蒲田行進曲・銀ちゃんが逝く」で意味もなく槍を振り回していた、あの暴れっぷりをこの作品で見たかった。

さて、今回の「髑髏城」、97年と比べてどうなのか。基本的に演劇を前回公演と比べる、というのは意味がないと考えているが、「ベストワーク」と言われていたものを越えたかどうか、考えてみる価値はある。

自分は、これは越えていないと思う。

決して今回の出来が悪かったわけではない。少なくとも現時点で今年のベストプレイだし、こんなに楽しい時間を過ごさせてくれた舞台はざらにはない。

ストーリーやセリフも、より洗練されており、それを力のある俳優がしっかりと受け止めて演技をしている。作品としては、文句はない。

しかし、観劇中の手応えというか、伝わってくる勢いのようなものが、だいぶ後退しているのだ。

これは何の違いかというと、ひとことで言って劇場の大きさの違いである。前回はサンシャイン劇場という、新感線の東京ホームグラウンドのような中規模劇場だった。

99年に青山劇場で「西遊記」を上演してから、新感線は大劇場での商業演劇に乗り出した。しかしどうも、いくつか観た大劇場での公演では、一様に「迫力不足」を感じるのである。

大劇場に乗り込むことは何の問題もない。むしろ、「小劇場系の劇団」という言葉に卑屈さを感じている自分としては、がんがんでかい劇場に打って出てほしいと思う。しかし、やはり小さな劇場で、至近距離から大音響や下ネタ、ミニスカートという「飛び道具」で攻撃することにより発揮される、新感線ならではの密度の濃いオーラを、大きな劇場で感じさせる手法がまだ確立されていないのではないか。

それを検証するために、厚生年金会館にも行く予定だったのだが、それはやむを得ない事情、不可抗力でキャンセルした。申し訳ない。

もっとも、こうした課題がある、ということは、まだ成長の余地があるということだ。もはや円熟期に入ったとも言われる新感線だが、まだフロンティアは残されている。止まることなく、走り続けてほしい。一生ついていきますぜ。

秋には、染五郎版が登場する。

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