2019年10月14日 (月)

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2018年2月24日 (土)

四季「ジーザス・クライスト=スーパースター」 昔のイスラエルじゃSNSもないしさ

ジーザス・クライスト 神永東吾
イスカリオテのユダ 芝 清道
マグダラのマリア 山本紗衣
カヤパ 高井 治
アンナス 吉賀陶馬ワイス
司祭1 佐藤圭一
司祭2 賀山祐介
司祭3 高舛裕一
シモン 本城裕二
ペテロ 五十嵐 春
ピラト 山田充人
ヘロデ王 阿部よしつぐ

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大阪四季劇場でキャッツを観たあと、京都でオペラ座の怪人を観てA.L. ウェバーまつりにしようかと思っていたが、ジーザス・クライスト=スーパースター(エルサレム版)のツアー公演がちょうどオリックス劇場で開幕していると分かり計画変更。

前にジーザス観たのは2012年だが、その時も神永ジーザスと芝ユダだった。神永ジーザスはまだ登場したばかりで、雰囲気はいいが歌は他の役者に比べると発展途上かな、と感じたが、久しぶりに観た彼のジーザスは、演技もさることながら圧倒的な歌唱力を見せつけていた。ゲッセマネのロングトーンは、国内で自分が観た中では最も伸びていたんじゃないか。かつてロンドンで観たとき、このシーンで仰天したのだが、まったく負けていなかった。

一方、芝ユダはちょっとパワーダウンしていた。一時的なものであればいいが、年齢的に声があまり出なくなってきたのだろうか?もしそうだとしても、彼の魅力は声だけではない。あの独特の存在感を生かして、多くの役で活躍してほしい。もっともこの日もカーテンコールではクネクネとふしぎなおどりを見せていたので、少し安心した。

高井カヤパはさすがの安定感で、見ていて嬉しくなる。低音が響かないカヤパなんてちっとも怖くないからね。

出色の出来だったのが阿部よしつぐのヘロデ。以前、他の作品で見ているかもしれないが、少なくとも劇団四季で彼を見るのは初めてだと思う。ヘロデのシーンはこの作品の最大のアクセントであり、演出の腕の見せ所であり、リピーターにとっては一番の楽しみでもある。出てきた瞬間に客席から感嘆や笑い声や出るヘロデは、いいヘロデ。この演出では、さほどヘンでもないのに、この日は客席から笑いが聞こえた。これはいいヘロデです。

ヘロデの場面もそうだけど、やっぱりこの「エルサレム版」より「ジャポネスク版」のほうがいい。もともと四季はジャポネスク版で初演し、あまりにもアバンギャルドすぎてさんざん酷評され、それで少しおとなしくしてエルサレム版で再演して高い評価を受けた。

でも、やはりジーザスという作品は、A.L. ウェバーがまだギラギラした青年だったころに生み出した作品なわけで、その魅力は全編にわたって感じられる中二病的な情熱だ。それを正面から受け止めて、そのままはじき返した若き日の浅利慶太のギラギラ感がジャポネスク版からは伝わってくる。

それだけ、この作品は懐が深いと言えるだろう。若者たちの「劇中劇」として見せる1973年の映画も良かったが、2013年のアリーナツアーの演出もなかなかだった。「RENT」を思わせる極めて現代的な演出は、少し表現が直接的過ぎたかもしれないが、そういう中二病感がこの作品にはふさわしい。アリーナツアーはアマゾンのプライムビデオで有料だったり無料だったりするが、有料でも200円ぐらいでレンタルできるのでぜひ一度観ることをお勧めしたい。

今回のキャストでは、アンサンブルにも光川愛や林香純といったメインキャストの実力を持った俳優が並んでいる。だからというわけでもないだろうが、民衆の存在感を、いつも以上に感じた。

もともとこの作品では、民衆が大きなウェイトを占めていて、その熱狂と失望が、ジーザスやユダの苦悩をより大きくし、その運命を悲劇へと向かわせる。ピラトもカヤパも、最も恐れているのはジーザスではなく民衆だ。最近の、毎日のように起きるSNSでの炎上騒ぎにへきえきしていたために、この公演では民衆の姿が心に刺さったのかもしれない。まったく、2000年前から進歩していないのか人間は。

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劇団四季 ジーザス・クライスト=スーパースターのウェブサイト

https://www.shiki.jp/applause/jesus/

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四季「キャッツ」 グリザベラの現役時代

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グリザベラ 江畑晶慧
ジェリーロラム=グリドルボーン 岡村美南
ジェニエニドッツ 加藤あゆ美
ランペルティーザ 馬場美根子
ディミータ 松山育恵
ボンバルリーナ 相原 萌
シラバブ 藤原加奈子
タントミール 高倉恵美
ジェミマ 加島 茜
ヴィクトリア 杉野早季
カッサンドラ 山田祐里子
オールドデュトロノミー 飯田洋輔
アスパラガス=グロールタイガー/バストファージョーンズ 正木棟馬
マンカストラップ 西尾健治
ラム・タム・タガー 田邊真也
ミストフェリーズ 一色龍次郎
マンゴジェリー 斎藤洋一郎
スキンブルシャンクス 北村 優
コリコパット 横井 漱
ランパスキャット 高橋伊久磨
カーバケッティ 河津修一
ギルバート 新庄真一
マキャヴィティ 川野 翔
タンブルブルータス 塚下兼吾

ひさしぶりのキャッツ。っても2014のキャナルシティ劇場で観てるから超久しぶりというほどでもないか。むしろ大阪四季劇場が2012年の『夢から醒めた夢』以来だ。

岡村美南のジェリーロラム=グリドルボーンは福岡でも観ているが、あいかわらずのキレイなルックスと歌声にほれぼれする。

田邊タガーは、昔は「頑張ってツッパってます」みたいな中学生っぽさがあったが、年季が入りすぎてヤンキー高校生を通り越し、梅宮辰夫の「不良番長」みたいな不良中年になっていた。実に頼もしい。

びっくりしたのがタントミールに高倉恵美。この人、この役どれぐらい演じているんだろう。ボンバルリーナもやってるし、ウェストサイド物語のグラジェラなどもステキだったが、やっぱり高倉恵美といったらタントミールだ。そこそこの年齢に達しつつあるはずなのに、あのスタイルの良さはいったい何なのだ。気のせいか、昔よりさらに細くなった気がする。シンデレラ体重どころじゃない。もはやあの着る人を無茶苦茶選ぶ猫スーツと体が一体化しているように見える。動きもさらにしなやかで、神々しいまでの美しさだ。

そして初見の、江畑晶慧グリザベラ。『マンマ・ミーア!』のソフィを演じていた江畑ちゃんがグリザベラか・・・と感慨深くもなるところだが、やっぱりというか、若い。年老いた娼婦、というより、何なら現役でもいけるんじゃね?(何がだ)という、ピチピチのグリザベラである。フィナーレでほほ笑んでると、あのメイクなのに、可愛い。うーん、これどうなんだろう。歌や表現力は申し分ないので、先入観を持っちゃってるこっちのせいだとは思うが。個人的には、もちろんアリですよ。個人的にはね。

さてキャッツシアター化した大阪四季劇場は初めて観たわけだが、福岡のときと比べると、あまりぐっとこなかった。客席との一体感がイマイチだったように思う。

大井町のキャッツシアターも順調に工事が進んでいるようだが、ぜひこれまでにないほどの、ゴミ捨て場に迷い込んだ感じで観られる空間を期待したい。

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四季「キャッツ」のウェブサイト

https://www.shiki.jp/applause/cats/


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2018年2月 8日 (木)

「FUN HOME」はアメリカの「サザエさん」か?

アリソン 瀬奈じゅん
ブルース 吉原光夫
大学生のアリソン 大原櫻子
ヘレン 紺野まひる
ロイ 上口耕平
ジョーン 横田美紀
小学生のアリソン 龍 杏美
クリスチャン 若林大空
ジョン 大河原爽介

2015年のトニー賞授賞式はWOWOWで録画して観た。だからミュージカル作品賞に「FUN HOME」が輝いた場面も見ていたが、まあ、これは観なくてもいいかな、と感じていた。

レズビアンの漫画家が、ホモセクシャルの父親を中心に家族の暮らしを回想する話、と聞いて、きほん明るく楽しくばかばかしいエンターテインメントが好きな自分としては食指が伸びなかったのだ。実際、この作品の上演期間中にニューヨークに行っているが素通りした。

別にLGBTの話題を避けている訳ではない。90年代後半以降、この問題については過剰なぐらいに主張しているブロードウェー界隈だが、ある意味それが「ブロードウェーらしさ」になっていて、どちらかというと考え方の古い自分に、この問題をニュートラルに考えさせてくれているのはありがたく感じている。素通りしたのは、単純に「なんか地味そうだから」だ。

そうこうしているうちに、フィリピンでこの作品が上演されることになり、そこにレア・サロンガが出演する、というニュースを聞いてへえーと感じ、いつかは日本でも上演するのかな、とぼんやり考えていた。そして日本での上演が決まり、吉原光夫が出ると聞いて、ちょっと観てみようかな、という気になり、開幕2日目にいそいそとお久しぶりのシアタークリエに出かけてきた。

演出を手掛けるのは日本演劇界のホープ中のホープ、小川絵梨子。今年夏に最年少で新国立劇場の演劇部門芸術監督に就任予定で、どちらかというと真面目な芝居のイメージが強い。ミュージカルは今回が初めてだ。それを聞いて、この舞台、もともと難しいテーマを扱っているし、自分には高度過ぎて理解できないんじゃないか?と不安になった。

結論から言うと、やっぱり高度過ぎて、この作品の魅力の、たぶん半分も自分は理解できなかったと思う。

とはいえ、今年はこれまでいろんな事情であまり書けなかったブログを少しは真面目に書こう、と決心したので、がんばって書く。以下ネタバレあり。

女性の漫画家が家族を描く、というと、あほな自分としては「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」がすぐ頭が浮かぶ。

しかしこの作品で描かれるのは、表面的には仲睦まじく見えるが、それぞれの心はすれ違っており、すれすれのところでバランスを取っているという家族だ。

そこに大きく影を落としているのは、まだ現在よりもずっと偏見が大きかった、同性愛者がいるということ。同性愛者の父は、妻、そして家族、さらには地域社会の信頼を徐々に失っていく。

すれ違う家族たちの姿は見ていて非常につらい。

ところが面白いことに、舞台が進行するにつれて、だんだんそのつらさが薄らいでくる。ここがミュージカルという手法のスゴいところだ。決して分かりやすいとは言えない旋律の音楽が、絶妙に舞台上の緊張と、観客の心をほぐしていく。そこにプラスして、3つの時間軸が交差しながら進んでいくという、パブリック・シアター発らしい実験的な構成が観客の心をつかみ、ぐいぐいと引っ張っていく。1幕のみ、全体で100分という長さもあいまって、重い話だけど胃にもたれない。

そして、ここで重要なことに気づく。

家族って、だいたいこんな感じじゃないのか?

目の前に描かれている家族は、一見、特別なものに見える。同性愛者が2人いて、葬儀屋が遊び場で、常に遺体が身近にある。そんな非日常につい目を奪われがちだが、世の中のほとんどの家族って、常にすれ違いながらも、絶妙なところでバランスを取っているのが普通なんじゃないか。

舞台の後半では、主人公が自らがレズビアンだと両親に告げ、それを両親がどう受け止めるか、が大きな見どころとなる。それはつまり、すれ違ってきた家族が、果たして真に向き合えるかどうか、ということだ。

原作にもある、車の中で父と娘が語り合うシーンは象徴的だ。「向き合う」のではなく、互いに前を見ているからこそ、ぎこちなくはあるが何となく会話が成立し、心が通い合う。

このシーンに、そういえば自分もそうだったよな、と思い出す観客は多いのではないか。家族の会話なんて、だいたいぎこちないものだ。しかし、何となくつながっている感じはある。

無理に向き合う必要はない。でも、向き合おうとする姿勢が家族をつなげている。残念なことに、父は無理に向き合おうとした結果、悲劇へとつき進む。娘は、その悲劇が自分に向き合おうとした結果であることを知って、そこに救いを見出す。そこで幕は降りる。

父の死後、長い年月を経て、またもすれすれのところでバランスをとって、家族が再生した瞬間だ。

重い部分だけを見て、この家族は普通と違う、と考えてしまいがちなところを、原作は漫画という手法で、この舞台はミュージカルという手法を使って、実はみなさんの家庭と同じなんですよ、と示す。それが自分が感じた「FUN HOME」という作品だ。

「サザエさん」といえば、自分は火曜の再放送で流れていた、堀江美都子の歌う主題歌が好きだった。

♪うちと おんなじね 仲良しね 私もサザエさん あなたもサザエさん

この歌詞が子供のころサッパリわからなかったわけだが、今ならわかる。どんな家族も、それなりに問題を抱え、それなりに秘密もあり、でも何とかうまくやっている。お互いに、そこを分かったうえで同じ「家族」としてつきあう。それがオトナの社会だ。

もっとも、長谷川町子はこのテレビ版サザエさんがあまり好きではなかったという。自分も原作の単行本は全巻持っているが、マンガでは「いじわるばあさん」と同様、かなり毒のあるギャグが満載だ。ことさら家族の仲の良さを強調することはない。それでいて、家庭の温かみは伝わってくる。

「ちびまる子ちゃん」も、さくらももこの幼少体験そのものではなく、むしろ「こういう家族だったらよかったな」という理想を交えて描かれたものだ。あの、ほのぼのした世界観の中で、時おり流れるシニカルな空気はその辺りに起因しているのではないかと思う。

そういう意味では、「FUN HOME」と「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」は、そんなに距離のあるものでもないのかもしれない。

ところで、吉原光夫の演技は今回も最高だった。「夢から醒めた夢」の暴走族のころから見ていたけど、当初は粗削りで、力任せな感じだけど目が離せない、そんな役者だった。それがこんな繊細な演技のできる素晴らしい役者に成長してきたのは感無量だ。

最後、トラックに飛び込むところで見せた鬼気迫る表情は、そのまんまセーヌ川に飛び込むジャベールだった。あの場面であの演技が正しいのかどうかはちょっとわからないが、いいもの見た感じではある。

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FUN HOMEのウェブサイト
http://www.tohostage.com/funhome/

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2017年6月 9日 (金)

何度目の帝劇か? レ・ミゼラブル2017

ジャン・バルジャン 吉原光夫
ジャベール 岸 祐二
エポニーヌ 松原凜子
ファンテーヌ 知念里奈
コゼット 生田絵梨花
マリウス 海宝直人
テナルディエ 橋本じゅん
テナルディエの妻 鈴木ほのか
アンジョルラス 上原理生

前シーズンは結局持っていた日すべて行けず、チケットを無駄にしてしまったのでだいぶお久しぶりなレ・ミゼラブル。

今回のキャスト発表では衝撃を受けた。コゼットに生田絵梨花、テナルディエの妻に鈴木ほのか、そしてテナルディエに橋本じゅん!キャストを聞いてテンションが上がったのは何年ぶりだろう。福井晶一や吉原光夫の起用はもちろん嬉しかったが、ある意味それは順当といえば順当だった。むしろ堀内敬子と安達祐実がコゼットとして舞台に立った2000年キャストの衝撃に近い。

というわけでこの3人がそろう日に帝劇に足を運んだ。

まず生田コゼット。アイドルの起用には拒絶反応を示す人も多いだろうが、自分は言うまでもなくアイドル大好きなのでウェルカムだ。

それに、以前もこのブログで書いたけど、コゼットなんて可愛けりゃいいのである。異論は認める。

だってフルのソロナンバーもないし、芝居もだいたいバルジャンがカバーしてくれるから、さほど高い演技力も必要としない。一方、マリウスが一瞬で人生見失うレベルでベタ惚れするわけだから、可愛くないと説得力がない。だから可愛さがいちばん重要なのだ。まあ最初に観たコゼットが斉藤由貴だったという刷り込み効果もあるとは思うが。

どちらかというとこの舞台でのコゼットは振り回され役なので、ぽわーんとした表情の子のほうが合っていると思う。そういう意味では、生田のきりっとした表情はコゼット顔ではないかもしれない。

けど、とにかく可愛い。可愛さのレベルを測る尺度として、コゼット登場前にどれだけ目立てるか、というのがある。ご存知のように、レ・ミゼラブルではメインキャストもアンサンブルをこなしており、コゼットはコゼットとして出てくる前に、工場労働者や娼婦の役を演じている。ここで「あーいるいる」と気づかれてしまうレベルだったらそれはいいコゼット。もちろん芝居的にはそれじゃ駄目なんだけど、その隠しきれないぐらいの可愛さがあってこそ、マリウスを瞬殺できるのだ。

生田はもうどの場面でも「アイドル通ります!」ってオーラが出ていて、ラオウがヒリヒリしておるレベル。そうそうこれだよ!と序盤からニヤニヤしながら観ていた。

演技もメリハリの利いた表情で、吉原の濃いめのバルジャンと相性がぴったり。そして歌は、さすが乃木坂一の音楽家、音程はばっちりだ。ただ、やっぱり舞台をばりばりこなしている役者の中に入ると、どうしても声の細さは否めない。自分としては許容範囲だが、物足りないと思う人もいるだろう。

次に鈴木ほのかのマダム・テナルディエ。コゼット、ファンテーヌに続く3役目。もちろんコゼットもファンテーヌも見ている。そして、東宝でイマイチいい役につけなくて、もったいないなーと思ってたら突然四季のマンマ・ミーア!のドナに引き抜かれたときはぶったまげたものだ。

鈴木ほのかは決して歌や演技に派手さはないが、とても安定感があるし、美人なのにどんな役にも自然になじむ顔立ちなので、もっと多くの役を演じて欲しいものだ。日本で上演されるミュージカル作品は役そのものがやっぱり少ないのかなあ。ミス・サイゴンのエレンとか、役不足もいいとこだろ。

で、そのマダム・テナルディエだが、この役はこうあるべき、というイメージを持って、その輪郭をはっきりさせている雰囲気だった。見ようによってはデフォルメし過ぎ、と感じるかもしれない。個人的には、もっと自然に、鈴木ほのからしい、チャーミングなマダム・テナルディエでもいいかな、と思った。

そして橋本じゅんのテナルディエ。自分が橋本じゅんを最初に観たのは1995年の新感線「星の忍者」だった。その後海外に渡り、帰国していきなり「ドラゴンロック」シリーズの轟天として強烈な印象を残して新感線内の地位を確立させた。テレビなどの仕事も増え、今ではすっかり有名人だ。とにかく轟天が大好きな自分としては、舞台でも映像でも橋本じゅんが出てくるだけでうれしい。その橋本が、これまた大好きなテナルディエを演じる。これは最高すぎる。

轟天や「阿修羅城の瞳」の祓刀斎のイメージがあるから、ついギトギトの背油ノリノリなテナルディエを想像してしまっていたが、予想に反してマイルドなテナルディエだった。何というか、小物感が強い。どこか人の良ささえ感じてしまう。いや、これはこれでアリではないか。テナルディエは悪党は悪党だが、激動の社会をしなやかに力強く生きている、という側面もある。小悪党は小悪党なりにうまく立ち回り、隙あらば這い上がろう、としている、そんな逞しさを感じるテナルディエだ。アドリブもちょいちょい入っていて、今後も楽しみ。

というわけでこの3人はそれぞれに面白かった。今回の帝劇ではあと2回チケットを持っている。福井晶一の声も聴きたいし、やはり初登板のシンケンブルーも気になる。ただ、コゼットは3回とも生田絵梨花です。

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レ・ミゼラブルのウェブサイト

http://www.tohostage.com/lesmiserables/index.html

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2015年9月26日 (土)

夏休み最終日

沖縄から去る日がやってきた。

前の日早く寝たので、3時ぐらいに目が覚めてしまった。となれば「農連市場」へ行くしかない。昨年も行って、実に楽しい朝食をいただいたのを覚えている

しかし、農連市場はこの夏から移転、再開発が始まると聞いているから、いまどうなっているか分からない。あまり情報がないので、とりあえず行ってみることに。

県庁前のホテルから20分以上歩いて、4時半ぐらいに到着。

すると、昨年同様の雰囲気で人々が行き交っている。「花城食堂」も、普通に開いていた。

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しかし、入ってみると、有名なあの女性店主がいたものの、ケガをしてしまって食堂は休んでいるのだと話した。残念だが、ケガもたいしたことはないそうなので、すぐに再開するだろう。移転も、徐々に進んでいくので、まだしばらくここで営業する、と言っていた。ならまた再訪できるかも。

しかしお腹がすいたのでどうしたものか。すぐ近くに、24時間営業している食堂があったので入ってみる。典型的な沖縄大衆食堂だ。

やはり朝食なので「味噌汁」を注文。500円ちょっとだったかな。

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ホテルに戻ってちょっと休み、荷物をまとめて空港へ。

空港についたら、やっぱりA&Wへ。

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そして待合室ではこれも定番。

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シルバーウイークをまたいで、ひさしぶりに長期間滞在したが、街に島にリゾートに、大満足な夏休みとなった。

今回のお土産は、毎年「スク水揚げ」でネットを盛り上げてくれる「スク」の瓶づめ。

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味は塩辛そのもの。小骨がちょっとクリスピーでおいしかった。





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2015年9月25日 (金)

ふたたび那覇へ

この日の朝食は、ビュッフェレストランの「ラ・ティーダ」へ。
オムレツ焼いてもらった。晴れた日のテラス席は気持ちがいい。
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チェックアウトして、那覇へ。ブセナテラス~アッタテラス~ナハテラスで運行している宿泊者用のシャトルバスを利用。

到着したナハテラスで、とりあえずおやつ。
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おっといけない、昼食の前におやつを食べてしまった。健康のためには規則正しい食生活を心掛けなくてはな、と、国際通りをふらふらと。

そうだ、まだ訪れたことのない、有名な「花笠食堂」に行こう、と足を向ける。

心躍る店構え。

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「もずく」か「沖縄ぜんざい」のどちらかを選べるとあるが、実は「刺身」も選べる。さらに、汁ものは「味噌汁」「中身汁」「ソーメン汁」「沖縄そば」「イナムルチ」から選べる。そのうえ、スペシャルランチ、盛り合わせランチなど一部のメニューでは、ごはんを「カレー」にできるというではないか。

迷わず「スペシャルランチ」をこういうセレクションでオーダー。

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刺身とカレーと麺類がひとつのプレートに乗っている。踊りだしたくなるほどうれしい。

すっかり満足したが、「ぜんざい」を「刺身」にしてしまったので、デザートが食べたいと思い、「御菓子御殿」の国際通り店へ。その1階でこういうのを食べる。

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ちなみに御菓子御殿、といえば「らぐうんぶるぅ」だが、昨年から「おかしごてんのAR」というアプリが配布されており、紅芋タルトの箱をマーカーにしていろいろ遊べるようになっている。こんな感じで

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このアプリ、もうひとつ店舗でしか使えない機能があり、これが店内に貼ってあるポスターをマーカーにして、こういう記念写真が撮れるというものだ。

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昨年リリースしたアプリだから、まだじゅん加入前の3人体制。アップデートを望みたい。

さて、いろいろ食べ過ぎて、この日の夜はとっとと寝てしまった。


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2015年9月24日 (木)

10回目のブセナテラス 2日目

翌日の朝食は、自分の中では定番、朝にしか来たことがない「真南風」へ。

お粥か白飯か五穀米が選べる。この日はお粥を選択。京都「瓢亭」にインスパイアされたとみられるダシをかけてたべる。

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さて、この日は昼からダイビングを予約してあるが、午前中何をしようかな、と事前にウェブサイトを見ていたところ、X-ジェットパックを導入したと分かった。これはちょっとやってみたい。

(ブセナのウェブサイトから)

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予約して参加。人気なのと、人数が限られているので、この日は予約でいっぱいだった。

スタッフ2名でサポートするが、写真を撮ってくれる余裕はないため、写真撮りたい人は有人や家族に頼んだほうがいい。(そのサービスも考えてくれるといいけど。けっこう高いし)

わずか15分なので、不器用な自分は浮き上がるのがやっと、という感じだったが楽しかった。すぐに左右どちらかに回ってしまうので、そのバランスのとり方が難しい。でも30分くらいやったらそれなりにできるようになると思う。他の人を見てると、けっこううまくやっていたので、相変わらず自分の運動神経が並み以下だと痛感。

さてビーチで一休みしてからダイビングへ。4年前、ここでライセンスを取得したのだが、それ以来のブセナの海だ。しかもダイビングそのものが3年ぶり。ということでリフレッシュを兼ねてインストラクターさんに指導いただく。

なかなか中性浮力がとれなくて、写真撮ってるどこじゃなかった。波もけっこうあったので、というのは言い訳。

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短時間だったけど、トイレに行きたくもならず(だいたいすぐ行きたくなる)、楽しいダイビングだった。

風呂に入ってから、クラブラウンジでおやつ。

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いつもながら食ってばかりだが、この日の夕食はメインダイニング・ファヌアン。ファヌアンは以前はシンプルさの中にうまさを感じさせる技巧をこらしたフレンチだったが、数年前からは遊び心に富んだ、楽しいフレンチに変わっている。個人的には昔のほうが好きだったが、もちろん今のファヌアンも素晴らしい。

ただ、遊び心がありすぎて、写真を見てもなんだかわからない。メニュー保存しとけばよかった。

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フルーツの上に生ハムがのっている。「デスノート」のLなら、ハムをよけて食べるところ。

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漫画「Heaven?」で、「テリーヌを、短い辺が手前になるように盛るのはおかしいじゃないか」とオーナーが文句をつけたところ、シェフが「短い辺は容器に接触してるからきれいになるけど、長い辺は上の開いているところだからきれいにならない」と説明するシーンがあった。あれは勉強になった。

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ところが、この皿をみると長いほうが手前になっている。

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えっ!と思ったが、よく見ると薄く切った野菜(ズッキーニかな?)で回りをぐるりと巻いている。なるほど、これなら表面がきれいになるから、長いほうが手前になってもいいわけか。

あのときオーナーは「日本人なら末広がりでしょう!」と言ったが、その日本人の美意識と、料理人のプライドの両方を納得させている技法だ。

パンもあいかわらずうまい。

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これなんだっけなー

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魚料理。野菜で包み込んでおり、開けてみるまで中身がわからない。

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パンおかわり。

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肉料理。仔牛だったと思う。

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デザート前の軽いデザート。パタリロか!といつも心の中で突っ込んでいる。

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デザート本体。凝りに凝っているうえ、ボリュームがすごい。

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ファヌアンはおいしいし、お腹いっぱいになる(パンおかわりしたからだ)ので本当にいいレストランだ。メインダイニングなのに、気取っていない。

それに、決して安いというほどではないけど、都内でこれだけの料理を食べたらたぶん倍ぐらいの値段にはなる。特に龍潭のあとだからそう感じるのかもしれないが、リゾートのちょっとした贅沢気分を味わうなら、リーズナブルと言えるのでは。

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2015年9月23日 (水)

10回目のブセナテラス 初日

2004年に初めて来て、その後毎年来ていたザ・ブセナテラス。昨年、一昨年と来られなかったが、久しぶりにやってきた。これがちょうど通算で10回目。

クラブルームを予約すると、専用ラウンジでチェックインできるのだが、このとき出てくる謎のオリジナルドリンク。これは以前から変わらない。

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部屋は変わらずシンプルな美しさが売りだが、さすがにちょっと古さを感じるようにもなってきた。大規模なリニューアルの時期に来ているかもしれない。

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この景色をみると、あーブセナに来たなあ、と実感。

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すぐに海に飛び込むほどの体力もなく、ぶらぶらと館内を散歩。ランドリーコーナーがなくなってしまったのはかなり残念。

夕方になると、名物のサンセットコンサートが始まる。森田さんの時代が懐かしいけど、このイベントはずっと続けてほしい素晴らしい取り組みだ。

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この日の夕日そこそこきれいに見えた。10回来て、毎回2~3泊してるからそれなりの数を経ているが「黄金の日々」のオープニングみたいなきれいな夕日が見られたことって2回ぐらいしかない。でもそれを見てしまったらリピーター確定だ。

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さて今回は2泊しかしないので、最初からクライマックス、ということで鉄板焼きの「龍潭」。10年前はまだ石垣牛の仕入れルートが確立しておらず、その後安定して石垣牛を出せるようになったが、現在はまた「沖縄県産和牛」という表記に変わっている。

一口前菜(もずく)と肉のタレ、薬味。

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カナダ産オマール海老。

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チャンプルー。あっさり塩味。

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彩りサラダ。

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特選和牛サーロイン。

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お約束の映像。

ガーリックライスと味噌汁。ゴーヤの漬物など。

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デザートとコーヒー。

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名護にて

西表から石垣島へ渡り、空港へ。バスだと時間ぎりぎりなのでタクシー利用。新しい石垣空港は広くて直行便も増えたが、港や市街地からのアクセスが悪い。運転手さんによればアクセス道路を作る計画もあるようだが、いつのことになるやらわからないそうだ。

那覇空港に到着し、レンタカーで名護へと向かう。

数日前に「戦場ぬ止み」を観たこともあり、辺野古のキャンプ・シュワブゲート前を見ておこうと考えたのだ。

駐車するスペースもないので、運転しながらちらりと見ただけだが、ゲートを守るのも、その向かいのテント小屋に詰めているのも、どちらも沖縄の人たち。ネットでは、反対運動をしているのは他県から来たプロ市民ばかりと信じている人もいるが、それだけではないのは自明だ。沖縄の人同士がにらみ合いを続けるこの空間こそ、今の沖縄が置かれている悲しむべき状況を象徴している。

沖縄のゆったりとした時間の中に流れる緊張感。やはり現地に行かなければわからない独特な雰囲気だ。

さて名護の東側にあるキャンプ・シュワブから山を越えて西側へ。

有名な食堂のひとつ「名護曲がりレストラン」に入る。

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ファミレスのような広い店内は地元のお客さんや観光客でいっぱい。メニューはぎっしり。沖縄大衆食堂のワイド版といった感じだ。

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その中でも、自分が食べたかったのは「ヤギの刺身」だ。それがあるというのでここに来た。

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ヤギ汁は以前、石垣島で食べたことがあるが、刺身は初めて。汁はずいぶんクセがあったので、それが刺身となるといったいどうなってしまうのかと不安だったが、食べてみるとコリコリとした触感に、噛めば噛むほど広がる上品な味わい。これはうまい。

ただ、一人で全部食うには量が多かった。しかも、一緒に頼んだのが中身汁定食。

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なんか似たようなものを食べてしまったなあ、と反省。

獣肉でお腹いっぱいになったので、何かサッパリしたものが食いたいと思い、そのすぐ近くにあるブルーシール名護店へ。

直営店には、17種類ものアイスをうず高く積み上げた「ビッグマウンテン」というチャレンジメニューがある。ぜひこれにトライしてみたかったが、アイスは溶けるものだ。ひとりで食べ尽くすには厳しそうだ。

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というわけで、5種類のアイスを使った「ブルーシールマウンテン」を食べるにとどめた。大人だからね。

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2015年9月22日 (火)

西表島へ

波照間と西表(大原)の間には島間航路がある。基本的には波照間―石垣間の船が、希望があれば大原にも寄る、ということらしいが、この日は連休絡みで観光客が多かったのか、最初から大原行きと石垣行きの船に分けて乗船させ、同時に出発するという運航形態だった。

2年ぶりの西表。前回泊まった星野リゾートのリゾナーレ西表(もとニラカナイ)に泊まろうと思ったが、やはり連休のため部屋が取れず、大原から入るということもあって数年ぶりにパイヌマヤリゾートへ。かつてはここに泊まるのが楽しみで西表に来ていたが、温泉が閉鎖されてからとんとご無沙汰だった。

温泉の代わりに大浴場でもあればいいのだが、それもなく、かつての金看板に変わるものは特に見当たらなかった。しかも自動販売機が少なくなっていたり、温泉のカウンター横にあった売店もなくなってしまい、アイスも買えない。正直、残念な宿になってしまった。客も少なく、閑散としており、侘しさすら感じる。

自然と一体化した素晴らしい立地のホテルなので、何とか復活してほしいものだ。やはり星野リゾートのような大資本が動かないと難しいのか。と思っていたら、星野リゾートも西表から撤退し、ユニマット経営の「ニラカナイ」に戻るという。うーん。

これ、西表の観光には大きな危機だと思うぞ?手つかずの自然がいい、という人もいるけど、そしたら石垣からの日帰り観光しかできなくなってしまう。あの島のダイナミックさを感じるには、やはり宿泊したい。環境負荷を最小限に抑えたリゾート開発に期待したい。

さて、というわけでパイヌマヤの1泊目は、夕方についたもののやることがなく、部屋で昼寝などしているうちに夕食タイム。ここの夕食は昔からウイークポイントだったが、決まったコースでなくても、ゴーヤチャンプルーとか、カレーなどを頼めるようになった。とはいえコースを頼んでみると、昔と変わらない、やや微妙なものが出てきた。

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もうちょっと頑張ってほしい、という感想も昔のまま。

夕食のあと、定番のホテルによるナイトツアーへ。しかしこの夜は天気が悪く、カニやヤモリぐらいしか見ることはできなかった。でもホタルは観察できた。

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宿に戻って就寝。

翌朝、まずは朝食。このホテルのレストラン、朝食はおいしいんだよね。少し品数が減ったような気もするけど、とても満足。

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この日もホテルのツアーに参加。近年はホテルのツアーに飽き足らず、フリーのガイドさんについて島内を回っていたが、何しろ体を動かしていないので、初心に帰ろうというわけで。

まずはカヌー。

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お昼は浜辺で。このお弁当もホテル製だけど、これはおいしい。

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以前話に聞いた、しばらくこの浜辺で暮らしていた人の住居(?)跡を見学。ここは台風でもしのげるため、その人が使った食器やベッドなどがそのまま残っている。

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陸に上がってトレッキング。

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最後はお決まりの滝つぼダイブ。

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とにかくこの日は天気が良くて、ベーシックなコースだったけど島の魅力を満喫できた。また来年はケービング(洞窟探検)やダイビングに挑戦しようっと。

疲れきって宿に帰り、ここで温泉に入るのが最高だったんよなあ、とないものねだりをしつつ、夕食。この日はコースをやめてカレーにしてみた。

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うーん、やっぱりゴーヤチャンプルーとかにすればよかったかも。

やることもないのでとっとと就寝。

翌朝は4時に起きて宿をあとにした。サイトで見つけた、コーラルファウンデーションという、ご夫婦だけで経営しているツアー会社の、早朝ツアーに参加するのだ。

まずは西表の、文字通り降るような星空を堪能。天の川も見える。この星空を見るためには、西表に泊まらないとダメなのだ。だから宿泊施設の充実を願ってやまない。

コンデジなのにオリオン座が撮れた(分かりにくいと思うが)

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そして次第に明るくなってくる空。ガイドさんに教えられて耳を澄ましていると、夜中ずっと泣いていた虫の声が次第に聞こえなくなり、鳥の声に変わっていく。

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「アイーダ」の夕暮れを思い出させるマングローブ。

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第三舞台の「朝日のような夕日を連れて」を思い出させる、夕日のような朝日。

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こんなにじっくりと「夜明け」を感じたのは久しぶりだ。もちろん、夜明けの手賀沼を散歩しても感動はあるが、ここではもっとむき出しの自然を体験することができる。

このツアーは最高だった。また参加したい。いや、するだろう。なんとガイドしてくれた旦那さんは、自分と同じ茨城出身。茨城県民には西表を引き付ける遺伝子がセットされているのだろうか?茨城と沖縄の交流をどうしたらもっとさかんにできるか、大いに話が盛り上がった。

コーラルファウンデーションのウェブサイト

https://sites.google.com/site/coralfoundation002/

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2015年9月21日 (月)

波照間港「海畑」

波照間港のターミナルにある小さな店「海畑」。ここのそーきそばがうまい、と聞いて食べてみることに。

自分が行ったときは親父さんが一人で対応しており、たいそう忙しそうだった。お世辞にも丁寧な接客とは言い難いが、悪い人ではなさそう。

結構ボリュームがあるとも聞いていたので、大中小の「中」を注文。ほどなく出てきたのがこれ。

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中でもかなりのサイズ。しかも食べてみるとこれがうまい。ソーキ、麺、スープ、どれも一流の味だ。コーレーグースとの相性もぴったり。

調子にのって、黒蜜かき氷を頼んだが、できないと言われた。怖かったので理由は聞けなかったが、忙しかったからなのか、今年は波照間の黒糖が不作だからなのか、不明だ。

じぶんはお酒を飲まないけど、ここでは幻の泡盛ともいわれる「泡波」が飲める店としても有名。しかしこの日は、前日に島のお祭りがあったらしく、品切れだった。

ほどなく、家族なのか女性の方が現れて店を手伝いはじめたので、もう1回かき氷を頼んでみようかとも思ったが、これが親父さん以上に怖かったので、とても無理だった。

波照間の黒蜜かき氷、いつか再挑戦したいものだ。


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波照間島に初訪問

ずっと来たかった波照間島。そして何度も台風に阻まれて上陸できなかった波照間島。

ついにやってきた。日本最南端の有人島。

レンタル「クマノミ」で、事前予約していた原付を借りる。自転車は当日でも空きがあるようだが、バイクはそうでもないみたいなので予約しておいてよかった。

快調に制限速度を守って走り「日本最南端の碑」を目指す。

日本最南端の碑というと、これとか

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これを思い浮かべる人が多いと思うが、

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自分が見たかったのは、この浅沼組寄贈の、ひらべったいやつだ。

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灰谷健次郎の原作を名匠・浦山桐郎が映画化した『太陽の子』のラストシーンで、主人公・ふうちゃんが泣き崩れるのがこの石碑だ。水戸の映画館で観たのは小学校6年のときだが、原作にはないシーンのため記憶に残っている。

あの映画で最も強烈な印象を残すのは、非行に走ったキヨシ少年の病室で、取り調べに来た刑事と、キヨシと同じ沖縄出身のろくさんが対峙する場面だろう。 「法の下の平等」を主張する刑事に対し、「沖縄の人間こそ、その平等を願っている」と反論するろくさん。この役を演じたのは、原作と同じように戦争で右腕 を失った沖縄の方で、演技経験は全くない。だからセリフは棒読みだ。

対する刑事役は名優・大滝秀治。理路整然とした名優のセリフよりも、決して論理的とは 言えない棒読みのセリフが圧倒的に説得力を持ち、あの大滝秀治を凌駕してしまった、日本映画史に残るワンシーンである。

この世は、常に理屈が正しいとは限らない。今の沖縄を取り巻く問題も、理屈だけで考えていいものか、といつも思う。

だから自分は毎年沖縄に足を運ぶ。もちろんブルーシールを食うためと、らぐぅんぶるぅに会うためでもあるのは言うまでもない。

この石碑の周りに椅子のようにブロックが置かれていたのは、テーブルがわりに使ってもらおうということなのだろう。それはいいが、吸い殻がたくさん落ちていたのには閉口した。いたたまれない気持ちになって、拾ってきた。



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2015年9月20日 (日)

石垣島に移動

夜になって石垣島に移動。何か食べようかとも思ったが、そんなに食欲もなかったのでホテル前のコンビニで物色。

ちなみにホテルはルートイングランティア。2012年、骨折した状態で泊まったホテルだ。そのときは足が痛くて入れなかった大浴場にも入れた。

コンビニで、普通に魚の天ぷらとか売っているあたりが沖縄らしい。しかも安い。そしてうまい。

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らぐぅんぶるぅが「ポニーテールリボンズ」ライブに登場

沖縄のアイドルといえば『らぐぅんぶるぅ』である。

だが、彼女たちのライブイベントは2カ月に1度ぐらいしかない。しかし俺は昨年、一昨年と夏休みの沖縄旅行中に彼女たちを見ている。

(2013年)

http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2013/09/post-0c10.html

(2014年)

http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2014/09/2014-0420.html

今年はさすがにイベントの予定がなく、まあ東京アイドルフェスティバルで会ったからいいか、と諦めていた。ちなみにこのとき、昨年ブログに「東京から来てくれた人いた!」と書いてくれたまいこちゃんが「覚えてますよー」と言ってくれて有頂天になった話はまた次の機会に。

しかし、自分が沖縄に到着した日、メンバーが一斉に、御菓子御殿のCMで共演している『ポニーテールリボンズ(※野郎2人のユニットです)』の翌日行われるライブを告知した。

ブログへのこの書き込みである。
http://ameblo.jp/gungun-lagoon/entry-12074749121.html
http://ameblo.jp/gungun-lagoon/entry-12074822776.html

この思わせぶりな書き込み、そしてこのタイミングで書き込むということは、共演者のよしみで動員を頼まれた可能性もあるが、やはりサプライズで登場するというサインなのではないか。

山本耕史は堀北真希が新幹線で移動するはずだ、と待ち伏せしたらしいが、そういうストーカー、いや長谷川平蔵並みの勘働きで、自分もこのライブに行ってみることにした。ちょうど会場となるライブハウス「output」は宿泊しているホテル「西鉄リゾートイン」の真裏だし、空振りしたらそのままライブを楽しめばいい。

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チケットを買って中に入り、じっと待つ。ひょっとしたら観に来ているかも、と思い会場内を見渡すがそれらしい人影はない。

そしてライブ開始。いきなり1曲目にらぐぅんぶるぅが登場したではないか!

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そして自分の好きな「ほっぺにブルーシール」を歌ってくれた。続いて「おかしごてんのレストラン」を歌っている最中に、ポニーテールリボンズが出てきて一緒に踊るという演出だった。

3年連続でらぐぅんぶるぅに会えるなんて、本当にありがたい。その後のライブも最高だった。らぐぅんぶるぅのメンバーも衣装のままずっと客席にいた。

今度は彼女たちのライブに合わせて沖縄に来たいものだ。

らぐぅんぶるぅのブログ
http://ameblo.jp/gungun-lagoon/

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おきバスフェスタ

クライマックスコーヒーで何かこの近くでうまい具合に開催しているイベントなどないかな、まあそんなうまくもいかないか、と情報サイト「urumax」 など眺めていると、うまい具合にすぐ近所の沖縄バス本社で「おきバスフェスタ」という興味をそそられるイベントが開催されていることが分かる。このサイトは那覇市内でノープランなときに本当に役にたつ。

で行ってみると期待どおりの楽しさ。

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不要になったエンブレムや料金表示灯の販売も。

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ずらり並んだ降車ボタンはちゃんと動く。


沖縄バスのガイドさんたちも可愛い制服で大集合。自分が行ったとき、真面目に来場者に対応していたのは一人だけで、あとはただだべっている感じだったが、それがまた沖縄らしくで萌える。

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クライマックスコーヒー

まちま~いのあとノープランだったので、昨年も来たパレットくもじのクライマックスコーヒーで、昨年も頼んだミルキーストロベリーを注文。昨年と同じように、甘い。何しろみるきーだからな

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クライマックスコーヒーのウェブサイト

http://climax.coffee/index.html

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那覇まちま~い「探して歩こう沖縄の魔除け~めざせ!ムンヌキムン・マイスター」

沖縄で観光、というとリゾートホテルや離島がメインで、那覇は首里城見学か、国際通りでお土産を買う程度、という人が多いと思う。

しかし昨年、一昨年と台風の影響もあって那覇メインで滞在したが、その魅力は自分の中で増すばかりだ。食堂や市場はもちろん、いかがわしい店も含め、そのちゃんぷるー感はとても心地よい。

というわけで、那覇市観光協会が毎日多数のプログラムで開催している那覇まち歩きガイドツアー「まちま~い」に参加してみた。

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自分がセレクトしたのはこの「探して歩こう沖縄の魔除け」。店先や玄関先に飾られる、シーサーや石敢當をはじめとした、沖縄に伝わる様々な魔除け、護符などを探しながら主に住宅地を歩くもの。

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ゆいレールの改札の上には、全駅で異なるシーサーがいることは、全く気付いてなかった。

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家の4方向にこうした「符札(フーフダ)」と呼ばれる護符を配置する家も多い。

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かなりの年代物らしく、文字の読みにくくなった石敢當。

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珍しい、サンゴを素材にしたシーサー。

勉強にもなったし、普段なら通らないような路地を歩くのが楽しかった。那覇の過ごし方に困ったら「まちま~い」の予約をお勧めします。

那覇まちま~い ウェブサイト

http://www.naha-machima-i.com/

 

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朝は味噌汁

2日目の朝。いつものごとく「お食事処 みかど」で味噌汁。

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朝は食欲がない、という人にもおすすめの一品です。

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2015年9月19日 (土)

桜坂劇場で「戦場ぬ止み」

2年ぶりの桜坂劇場でレイトショー。観るのは「戦場ぬ止み」。これは沖縄で観るべき作品だ。

実は「うりずんの雨」をここで観たいと思っていて、ずっとロングラン上演が続いてるのでいけるかな、と期待していたが2週間前に終了してしまった。

しかし本作の監督である三上智恵氏の前作、まだ琉球朝日放送の社員だった彼女が制作した「標的の村」も2年前、この劇場で観ている。これも何かの縁なのだろう。

今回も、現在進行形の「辺野古闘争」を、客観的なジャーナリズムではなく、徹底的に当事者に肉薄し、その真相を追求しようとする姿勢は健在だ。

本作にはたくさんの「笑顔」が登場する。覚悟を決めた笑い、諦めた笑い、純粋さから来る笑い、苦笑い、照れ笑い、作り笑い、笑いを堪える笑い、などなど。

重いテーマだが、笑顔を前面に押し出すことで、2時間に及ぶ上映時間だがつらい気持ちにならず観ることができる。これは、涙を流して悲壮感に訴えることをあえてしない、辺野古闘争の参加者たちの闘い方にも通じるところがある。

しかし終盤、その涙が心を打つシーンもある。笑顔と、涙とが紙一重で展開している、ぎりぎりの状態で当事者たちは行動しており、辺野古の問題自体も本当にぎりぎりのところで推移している。

デリケートな問題でもあるし、ある意味で「一方的な」描き方をしているこの映画に批判する声もあるだろう。あえて描いていない、紹介していないと思われる事実も確かにある。しかし画面のはしばしに垣間見える住民たちの笑顔が、語るものは大きい。何も予備知識なく観るのではなく、ある程度辺野古の問題について知り、双方の主張や双方の問題点を踏まえたうえで観ると、自分の中のこの問題についての考え方をまとめるとき、大きな糧になると思う。

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「戦場ぬ止み」ウェブサイト

http://ikusaba.com/

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牧志公設市場で昼食だか夕食だか

乗り継ぎ便で到着したのが14時ごろ。それからなんだかんだでぶらぶらしていたら昼ごはんを食べ損ねていたのを思い出し、おなじみ牧志の公設市場へやってきた。ミーバイを勧められたが、セミエビも食いたかったので結局両方オーダー。セミエビを中心とした刺身盛り合わせと赤仁ミーバイのバター焼きで飯を食う。エビの頭と魚のアラを味噌汁にしてもらったが、どれもこれも圧倒的なボリュームですっかり満足。まあ値段も結構いっちゃったけどね。

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夏休み1日目

茨城空港からスカイマークで沖縄へ向かう(途中神戸で乗り継ぎ)。今年は連休の並びが良すぎてホテルなども高く、少しでも安いレートで泊まろうとした結果、効率的に動くのをあきらめ、6泊7日の長大な計画を立てることになった。

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もう茨城空港は茨城ガルパン空港と名を変えたほうがいいんじゃないか。

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この日はイベントデーで、到着したベトナム航空機を全国レベルの実力で知られる大洗高校のマーチングバンドとF15で出迎えていた。

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2015年8月 4日 (火)

2015年劇団☆新感線35周年 オールスターチャンピオンまつり 「五右衛門vs轟天」

作:中島かずき
潤色・演出:いのうえひでのり
作詞:森 雪之丞 いのうえひでのり
音楽:岡崎 司
振付:川崎悦子

出演:
古田新太 橋本じゅん  松雪泰子 池田成志 賀来賢人  高田聖子 粟根まこと  右近健一 河野まさと 逆木圭一郎 村木よし子 インディ高橋 山本カナコ 礒野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 保坂エマ 村木 仁 川原正嗣 冠 徹弥 教祖イコマノリユキ 武田浩二 藤家 剛 加藤 学 川島弘之 安田桃太郎 伊藤教人 南 誉士広 熊倉 功 上田亜希子 嶌村緒里江 谷 須美子 吉野有美

あえて役名は書きません。新感線観てる人にはそれだけでネタバレになるから。

というぐらい、新感線観てる人にとってはくすぐられまくりの作品。でももちろん知らなくても十分楽しい。

で、知らない人のためにちょっと解説。今回の「五右衛門vs轟天」は、97年、99年、2001年と3作上演された「直撃!ドラゴンロック」シリーズの主役である「剣 轟天(つるぎ ごうてん)」と、2008年、2010年、2012年と3作上演された「五右衛門ロック」シリーズの主役である石川五右衛門の2人を同じ舞台に登場させたスペシャルな新作だ。

劇団☆新感線のメインストリームは「いのうえ歌舞伎」と称される、主に時代劇をベースとした笑あり涙あり殺陣ありロマンありドラマありのゴージャスな舞台だ。近年はテレビや映画でもおなじみのスター俳優も客演し、そのゴージャスっぷりに磨きがかかっている。一方、最近は4~5年おきにしか制作されない、ただ馬鹿馬鹿しいだけの「ネタもの」と言われる作品群がある。いい歳をした大人たちが全力で馬鹿な笑いを追求するため人気が高い。さらに、楽曲を前面に出したロックミュージカルの色彩が強い「新感線☆RX」など公演名に「R」が付く作品群がある。

ちなみに「ドラゴンロック」は「ネタもの」で、「五右衛門」は「R」の系譜に入る。その2つが入り混じっているのはスタッフ陣にも現れており、通常「ネタもの」はいのうえひでのりが脚本・演出の両方を手掛けていることが多いのだが、今回は「いのうえ歌舞伎」のほとんどを書き下ろしている中島かずきが脚本を書いている。

こうしたことからも、今回の作品が35周年記念の集大成的な作品であることがよく分かる。ただ全体を包み込むテイストはあくまで「ネタもの」。それは作品名の前に「チャンピオンまつり」と付ることで示している。これがついていればネタもの。語源は東映まんがまつりに対抗して東宝がはじめた「東宝チャンピオンまつり」だ。

待ちに待ったネタもの作品。もうそれだけで自分としては嬉しいわけだが、そこに轟天と五右衛門が共演ときた。というわけで本論に入る前にもう少しこの2つのシリーズについて語らせてください。

「わたしと轟天」

自分が新感線を観始めたのは94年の「星の忍者」。確か、そこで主演した橋本じゅんが海外に留学し、戻って来て作られたのがこの「ドラゴンロック」である。いったい海外に何をしにいったんだ、というぐらいの馬鹿馬鹿しさ満載の作品だったが、実は自分は劇場で観ていない。まだ新感線を観始めたばかりで、ちょっと甘く考えており、当日券出るかな、と思って直接シアターアプルに行ったら1枚もなくて観られなかったのだ。ポスターのビジュアル、そして「直撃!!ドラゴンロック」というタイトルを見ただけでわかる、千葉真一の空手映画のパロディー。そして轟天という名前。言うまでもなく「海底軍艦」の轟天号から来ている。いや、惑星大戦争の轟天号かな。まあ一緒。特撮で育ち、いい歳になっても特撮から離れようとしなかった世代には堪らないネーミングだ。惜しいことをしたな、と思っていたところ公演が終わってしばらくしてNHKが深夜に放送してくれた。NHKは以前、深夜などによく舞台の映像を流していた。

2作目の「九龍城のマムシ」はきっちり前売りを購入してサンシャイン劇場で鑑賞。これは本当に面白かった。馬鹿馬鹿しさにプラスして様々な映画や特撮、そしてミュージカルまで、これでもかというほどのパロディーの嵐。個人的には新感線のベストプレイに推したいほどだ。3作目の「轟天VSエイリアン」は、ちょうど仕事でへばっていた時期で行けなかった。

後日、この3作は「轟天BOX」としてDVDが発売された。大事にしていたのだが、どこかへ行ってしまった。

「わたしと五右衛門」

一作目は新宿コマ劇場での上演。コマ劇場という場を使い切ってやるぜ、というかなり肩に力の入った作品で、しかも北大路欣也に松雪泰子に江口洋介、とゲストも豪華そのもの。あまりに力が入り過ぎて、自分としてはノリきれずに終わった。

二作目は天海祐希をゲストに迎え、フランスに渡った五右衛門が大立ち回り。今度は力が入りつつも、ところどころ力の抜けた、新感線らしいいい舞台になった。神田さやかも出演し、歌のうまいところを見せていた。

三作目はつい先日の2012年。実は観ていない。

・・・とまあ、轟天にも五右衛門にもそれなりに思い出はあるのだが、ぱっと見てお分かりのように、自分は断然轟天への思いが強い。だから五右衛門vs轟天と聞いて、ベースが五右衛門だったらちょっとイヤだなあ、と不安だった。

が、ここから本題に入ると、幕が上がってすぐ、それは杞憂だと分かった。突然登場した悪の秘密結社の幹部たち。それらは完全に「ドラゴンロック」の世界、ネタものの住人だ。

五右衛門が出てくると、少し空気感が変わるものの、そこは古田だからしっかり舞台をつくる。あくまでネタものの枠組みの中で、五右衛門のキャラクター、世界観をにじませていた。

松雪泰子は五右衛門ロックの第1作目と同じ峰不二子のような女泥棒「お竜」役で登場。あまりネタに流されることはなく、さすがに大女優に馬鹿なこともさせられないのかなあと思ったらとんでもない、クライマックスのあの姿はもう最高でした。アレ見るだけでもこの舞台には価値がある。

轟天に五右衛門、そしてお竜以外にも、かつての作品に登場したキャラクターが次々と出てくる。両シリーズだけではない、「踊れ!いんど屋敷」や「レッツゴー!忍法帳」など他のネタものからも懐かしいキャラクターが登場だ。コアな新感線ファンはキャスト表を観ないで舞台に臨んだほうがいろいろ発見やオドロキがあって楽しいのではないか。

そうそう、ネタもののときは、懐かしの特撮やアニメだけではなく、メジャーなミュージカルのパロディーもよく出てくる。「オペラ座の怪人」や「ライオンキング」など。そして今回は、あっと驚く作品のパロディーが。これは日本で上演していないので、かなり通なネタだ。わかった人も少なかったと思う。

その「オペラ座の怪人」パロディーでクリスティーヌを演じたこともある中谷さとみが、今回も娘役で登場。今回、本編内でもいじられていたように結構な歳ではあるが、入団以来ずっと少女役だ。新感線内の時間はウラシマ効果で止まったままなのだ。

個人的には、2007年の「犬顔家の一族の陰謀~金田真一耕助之介の事件です。ノート」以来の傑作だと思った。そして99年の「直撃!ドラゴンロック2」に匹敵する、新感線ベストプレイと言っていい。あくまで個人的にだけど。別にいのうえ歌舞伎が嫌いなわけじゃないが、やっぱりネタものは新感線の真骨頂だ。

もっとも、今回はネタものでありながら、中島かずきの脚本によっていのうえ歌舞伎のテイストも存分に織り込まれている。後半の、裏切りが裏切りを呼ぶスピーディーな展開はまさに中島の得意技。もう観ててぞくぞくするぜいたくさだ。

前置きが長いわりに、本論に入るとネタバレになりそうなのであまり書けないのが歯がゆいところだが、とにかくこれは新感線をずっと観てきた人なら何を置いても観に行くべき作品。カッコいい新感線が好きな人にはお勧めしないけど。いやあ楽しかった。

「五右衛門VS轟天」公式サイト
http://www.vi-shinkansen.co.jp/UserEvent/Detail/110

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2015年6月21日 (日)

イディナ・メンゼル ジャパンツアー @武道館

そうそう、このこと記録してなかった。6月4日、武道館でイディナ様のコンサートをばっちり聴いてきましたよ。

19時スタートという社会人にも嬉しい開演時間、しかしとっとと仕事を切り上げ早めに入場。10分ほど遅れてスタート、オープニングの映像はこれまでの彼女の仕事をダイジェスト的に紹介するものだったが、ウィキッドのナンバーがちょこっとかかるだけで客席から歓声が上がる。

あれっ。きょうはてっきり「アナと雪の女王」でイディナ様を知った人が大勢詰めかけるんだろう、それも仕方ないな、と思ったが、そうでもないみたいだ。ミュージカルファンが結集しているのか?これはちょっと嬉しい。

1曲目でいきなり 『ウィキッド』のDefying Gravity。もうテンション上がるどころか、全身の血液が沸騰しそうだ。かなりアレンジかかっていたが、初代エルフィーのDefying Gravityをリアルに聴けるなんて。もう、これだけで帰ってもいいや、と思った。

しかし帰らなくてよかった。

それから2時間、彼女はステージに出ずっぱり。一度も袖にはけることなく、途中から裸足になって舞台上を駆け回っていた。こんなに長い時間ステージに立ちっぱなしのワンマンショーなんて、イッセー尾形以来だ。

ステージだけじゃない。『RENT』のTake Me or Leave Meでは、武道館のアリーナに降り立って(裸足のまま)、観客にマイクを向け、一緒に歌い、さらには観客を舞台上に引っ張り上げる。

まあ、マイクを持って歌った観客は仕込みかもしれないが、RENTのナンバーを原語で歌える人が自分の周りにもけっこういて、いやいや俺なんてミュージカルのファンだなんて言えないレベルじゃん、とショックを受けた。だがそれも嬉しかった。

ウィキッドからは、ほかにWizard and IとFor Good。For Goodでは驚きのアカペラ、マイクなし。そして観客にも一緒に歌うよう呼びかける。しかし、これはさきほどのTake Me or Leave Meや、このあとのLet it Goで一緒に歌うのとはちょっと意味合いが違う。

For Goodはエルファバとグリンダのナンバーだ。そう、ここで観客はグリンダ役を任されたのだ。これに気付いたとき、もう沸騰しっぱなしだった血液が全身から吹き出そうだった。しかし周囲に迷惑をかけてはいけないと全身のアナという穴をふさいでいたら、またしてもみんなグリンダパートを歌い始めているのではないか。いかん、俺も歌わなくては!しかし英語が出てこない。ごめん、俺の中でグリンダはクリスティン・チェノウェスじゃなくて沼尾みゆきなんだよなー。あとAlli Mauzeyも。結局一緒に歌えたのは「For good」だけ。オリジナルで勉強しとくんだったわ。でもこれは武道館にいたみんなのいい思い出になったと思う。何しろオリジナルのエルフィーと一緒にグリンダを演じられたのだから。ふと、Glee第2部の最終回で、レイチェルとカートがガーシュイン劇場の舞台で歌ったFor Goodを思い出した。あれは名シーンだった。

それにしても、イディナ・メンゼルのエンターテイナーぶりには本当に圧倒された。紅白でもじゅうぶんにお茶目なところは見せていたが、コンサートはどこまで本気でやってくるのか不安でもあった。しかしとんでもない。ここまでサービス精神旺盛で、かつとんでもない実力がある人が、想像を絶する努力をして、そのうえで役に恵まれてようやく表舞台に出てこられる。それがブロードウェイだ。

ちなみに、たぶんこの日のイディナ様のコンディションはおそらく55%~60%程度。のどの調子が悪く、ずっと咳払いをしていた。それでもこれほど観客を楽しませるのだからもう降参するしかない。

年末、「IF/THEN」観てきてホントよかった。ラミン・カリムルーやジェームズ・モンロー・アイグルハートが観られなくて残念、とか思ってたが、その残念さを補って余りある幸せな体験をさせてもたった。ブロードウェイのトップスターの舞台を生で観られて、しかもそのスターが油が乗り切った状態で日本に来てくれる。何とも嬉しい時代になったものだ。

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2015年6月13日 (土)

AKB48 41stシングル選抜総選挙 世代交代が止まった

さて今年もAKB総選挙が終了した。結果についてはさして思うこともないが、加藤るみのランクインは嬉しかった。そしてスピーチでは、宮脇咲良の「AKBをぶっ潰す」発言には痺れた。

いくつかのメディアは「SKEが第一党に」という伝え方をしていたが、それはあくまでランク入りした人数だけのこと。1位と80位を同列に数えるのはやはり無理があろう。というわけで、各グループ別の得票数(得票総数の中で占める割合)をビジュアル化するとこうなる。年によってグラフの大きさが異なるのは調整がうまくいってないだけで、気にしないでください。本来同じ大きさで表示されるべきものです。

やはり最大勢力はAKBだ。といってもその差は年を追うことに狭まっており、シングル発売のたびに各グル―プの協力を得ていることを考えれば、この数字がAKBにとってふがいないものであることは間違いない。

昨年と今年を比べて強く感じるのは「世代交代進んでないなー」ということだ。グラフの色に注目してほしい。ベテランほど赤く、新人ほど緑に表示されるのだが、全体の色味がこの2年でほとんど変化していない。かつて、つかこうへい先生は言った。「前進か、死か」。AKBプロジェクトは変化の速さこそがそのエネルギー源だったが、広げ過ぎた戦線と多すぎるステークホルダーによって、その歩みは確実に遅くなっている。

宮澤佐江や北原里英は昔から見ているから個人的には好きだけど、このポジションにふさわしい活動ができているだろうか?西野未姫や岩立沙穂は入ってなくていいのか?なこみくや江籠裕奈はどうした?昨年の田名部生来のようなベテランのサプライズ入閣を演出できなかったのは運営の失敗じゃないのか?テレビの中継もさんざんだったけど、どうもイベント的に盛り上がらなかった今回の総選挙だった。






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2015年5月30日 (土)

劇団四季「アラジン」開幕 結構いけるぞ

ジーニー 瀧山久志
アラジン 島村幸大
ジャスミン 岡本瑞恵
ジャファー 牧野公昭
イアーゴ 酒井良太
カシーム 西尾健治
オマール 斎藤洋一郎
バブカック 白瀬英典
サルタン 石波義人
 

アラジン東京公演開幕。

四季が超大作ミュージカルを新たに投入するのは「ウィキッド」以来、実に8年ぶりだ。「リトルマーメイド」はちょっと小ぶりだから。しかし、もうあれから8年も経つなんて信じられないなあ。

チケット料金値下げ以来、資金力も低下していたのだろうと思うが、やはり8年も大きな話題がないと四季の会会員の忠誠度も下がってくる。

昨年、事実上の分裂騒動もあったわけだが、とりあえず経営体制も変わり、吉田新社長のもと新たなチャレンジもしよう、ということなのだろう。その意気やよしである。

だが「アラジン」の上演が発表になったとき、実は不安もよぎった。

そのころ、日本に伝わってきた「アラジン」の噂は「まずまず」と「イマイチ」が半々だった。いずれにしても「ライオンキング」や「美女と野獣」のような、衝撃的なものではないようだ。

となると、吉田新社長が功をあせって、評判が固まらないうちに売り抜けようとしているディズニーの口車に乗っちゃったんじゃないか。そんな不安が自分の中で渦巻いたのである。

しかし噂はあくまで噂。この目で観なきゃあな、と昨年末にニューヨークへ。そのときの感想は以下の通り。

http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2014/12/aladdin-3a89.html

この時はあまり書かなかったけど、正直、作品全体の印象としてはイマイチかなあ、と感じていた。ジーニーはすごいけど、それ以外はどうもとっちらかった感じて好感を持てなかった。ジーニーというキャラクターも、果たして日本で受けるかどうか。それ以前に四季の水と合うかどうか。不安は全く払拭されなかったどころか、より濃くなってしまった。

そんな不安を抱えて電通四季劇場[海]へ。

キャストボードを見ると、瀧山久志がジーニー役という。あれってっきり道口瑞之だと思ってたのになあ。分からないものだ。

まだ未見の人も多いと思うので、微妙にネタばれする前に結論を先に言う。

感想を一言でいえば「結構イケる」だ。チケットを持っている人は期待していいし、まだの人は前日予約でトライして一度は観てみることをお勧めしたい。

で、どんなだったかというと。

幕が上がり、さっそくジーニー登場。ほほう、こんな感じか。瀧山久志という役者、いい存在感である。何と言うのだろう、出てくるだけでどこかちょっと面白い。それは吉原光夫にも通じるものがある。(吉原ジーニーちょっと見たいぞ!)そのあたりはこの役にぴったりといえそうだ。

歌はもともとオペラ歌手だからさすがだけど、ちょっと声が本調子じゃないような気がした。オペラ歌手の喉すら消耗させるほどの苛烈なレッスンをこなしたのだろうか。

そしてその語り口は、ブロードウェイのジーニーに比べややマイルドというか、ソフトでゆっくりしている。マシンガントークで客を圧倒させるのではなく、客の反応を見ながら一緒に盛り上げていこうとする。ジーニーはもともとキャブ・キャロウェイがイメージとしてあったらしいが、日本のジーニーはキャブ・キャロウェイというよりトニー谷だ。あっちで見たとき、こういうボードビリアンは日本にいないよなーと思ったけど、そうかトニー谷という手があったか!

もちろん往年のエンターテイナーだけでなく、最近のお笑い芸人のスタイルなど、さまざまな要素を貪欲に取り込んで、日本人の口にあうものになっている。これは役者だけでなく、四季のスタッフが相当に「日本人に受けるジーニー」を研究した成果ではないか。ふーむ、これはなかなかいいぞ!

そしてジーニーだけでなく、作品全体もとてもまとまりのあるものに感じられた。そこはやはり劇団の強みだろうか。演出もだいぶアレンジを加えているらしいが、正直向こうで1回観ただけだから、違いを具体的に指摘することはできないが、ジーニー同様、こちらも日本人のメンタリティーに合うように、細かく検証したのだと思う。

しかし、ディズニー相手にそこまでのアレンジを認めさせたというのは、四季もなかなかやるじゃないか。

もっとも、それはあくまで小幅修正なので、大きく演出が変わったりはしない。2幕はだいぶ退屈なシーンもあるし、「プリンス・アリー」は映画で大好きだったシーンだったので、もっと派手に演出してくれても、と思ったが、そのあたりはそのままだ。しかし、今回は小幅修正を認めさせただけでも大いに評価したい。

個人的には、女性陣の衣装が露出度高めなのが大いに気に入った。それにほら、岡本瑞恵が美人さんだし。ヘソ出し衣装、というだけでニヤニヤ笑いたくなる(←久しぶりに正常ではない観劇姿勢)。

そうそう、アラジンの友達役で白瀬英典が登場。「春のめざめ」以来、注目してきたというかつい目が行ってしまうユニークなキャラクターの役者だが、今回も相変わらずイイ声を響かせていた。白瀬のジーニー、見たいものだ。きっとアンダーで練習には入っているような気がする。

全体として、せっかくの「NEW MUSICAL COMEDY」なのに四季の悪いところが出て、カクカクした無粋なものになったらいやだなあ、と思っていたが、全くそんなことはなかった。むしろ、四季の良さでもともとの作品のアラを埋めている感じだ。観終わって、すぐにまた観たいと思ったのは久しぶりのことである。

ジーニーありきの舞台であることは間違いないので、今後も新たなジーニーが出てくるたびに劇場に足を運ぶことになるだろう。そうしないと、リピーターの動員も難しいはずだ。外部からの積極的な登用にも期待したい。もちろんOBもな!

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「アラジン」のウェブサイト
https://www.shiki.jp/applause/aladdin/

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2015年5月18日 (月)

舞台「マジすか学園 」~京都・血風修学旅行~ つかこうへいの遺伝子

ゲキカラ 松井玲奈
おたべ 横山由依
ガッツ 田野優花
サンカク 大島涼花
オオイリ 川本紗矢
ボテ 高橋朱里
ヘコ 谷口めぐ
近藤 中西智代梨
土方 永尾まりや
沖田 岡田奈々
サーノ 武藤十夢
シンパチ 飯野雅
ハジメ 梅田綾乃
瓜坊 西野未姫
カミソリ 小嶋真子
ゾンビ 大和田南那
   

マジすか学園4が、何とも期待はずれ(そんなに期待もしてなかったけど)に終わった。マジすか学園の1や2が奇跡的に成功した要因を「解ってないなあ」というのがその感想。じゃあお前は解ってるのか、と言われたら答えに窮するけど、解ってるなら放送作家にでもなってるって。

しかし性懲りもせずこの舞台化にはちょっと期待していた。

というのも、主役がおたべ(横山由依)とゲキカラ(松井玲奈)と発表されたからだ。マジすか学園シリーズで、抜きんでて印象的なキャラクターといえばこの2人だ。この企画は「解っている」人によるものだ。そう確信した。スタッフが発表されるとさらに期待感が高まる。マジすか4のスタッフが手掛けることを憂慮したのだが、脚本・演出とも演劇関係者だ。もっともマジすか4の脚本の一人はマジすか1、2にもかかわっている人なんだが・・・

そしてもうひとつある。自分が「動くゲキカラ」をライブで観るのはこれは初めてではない。もう5年も前のことになる。2010年1月24日、毎年の恒例行事「AKB48 リクエストアワーセットリスト ベスト100」のアンコール企画で、マジすか学園の出演者たちが、ドラマの衣装そのままでステージに乱入してくる、という演出があった。

このとき、出演者(AKBメンバー)は、衣装だけでなく、表情や話し方まですべて役柄に合わせていた。この年の1位は「言い訳maybe」で、やや拍子抜けだったが、この茶番に真剣に取り組むメンバーたちの姿には心を打たれた。

だが、ただ1人、ゲキカラ役の松井玲奈だけは、へらへら笑っている。ダメだなあ、みんな役になりきっているのに。その時はそう感じた。

しかし、後になってわかった。実は玲奈は誰よりも役になりきっていたのだ。

実は、マジすか学園の放送は1月開始。ゲキカラが登場したのは終盤なので、このときはまだゲキカラがどういう人物像なのか分からなかった。だからこの誤解が生じた。

ゲキカラのキャラクターはヤンキーという枠を超えている。それはもはやバットマンのジョーカーのごとき、クレイジーな殺人鬼だ。へらへら笑いながら相手を再起不能に落とし込む。指原莉乃演じるチームホルモンのオタをやりこめるシーンは、放送当時つらくて観ていられなかったほどだ。このシーンはBPOでも問題となり、再放送ではカットされている。

話がそれた。その「動くゲキカラ」を見たのは、今はなくなってしまったSHIBUYA-AX。今回、マジすか舞台が上演されるAIIAシアターは、AXがあった敷地の隣にある。またあの地でゲキカラに会えるのだ。約束の地である。これは行かないわけにはいかない。

おたべに関しても少し。マジすか学園2は、まさにおたべのために用意された話と言ってよかった。京都人らしく本心を見せないが、すべてを見通す頭脳を持っている。そのシャープな迫力は「仁義なき戦い」の武田をほうふつとさせる。

それがマジすか4で復活すると聞いたときには小躍りして喜んだものだ。初回にはかつての雰囲気を残し、さらに「留年」をイジられるといきなりキレるというナイス設定まで加わって、これがまた面白かった。まるで髪型をイジられるとキレる、ジョジョ第4部の東方仗助のようではないか。

ところが、物語が進むにすれてただの真面目キャラになってしまい、全くその持ち味が生きなかった。実に残念。だからこそ、この舞台で昔のおたべが見られるのではないかと楽しみにしていた。

前置きが長くなりすぎた。チケットを何とか入手していざ渋谷へ。

オープニング。客電が明るいうちから「桜の栞」のメロディーがアコースティックギターで奏でられる。次第に暗くなる客席と、反対に大きくなる音量。

これは!

ぴんと来た。この雰囲気は、つかこうへいの名作「飛龍伝」のオープニングだ。飛龍伝は、つか作品の中でも自分が最も好きな作品。自分の中で一気にテンションが上がった。

まずゲキカラが登場。これはマジすか2の後の、少し落ち着いたゲキカラの表情そのままだ。乃木坂46の「16人のプリンシパル」への参加はあったものの、本格的な舞台はこれが初めてとなるはずだが、いい演技をしている。ああ、ゲキカラにまた会えた。実はちょっと泣きそうになった。

続いておたべの登場。演技に少しマジすか4の余韻が残ってはいるが、きちんとマジすか2のおたべを再現しているように見える。何しろ髪型が当時のままだ。

そんな感じで始まった舞台。最終的に演出、演技、脚本、それぞれに見るべきところが多く、好感を持てた作品だった。

まず演出。最初に感じた「つか作品のようだ」という予感は当たり、随所につか的な演出が見られた。特にクライマックスの、何だかよく分からないがただただ美しい演出は、映像ではできない、まさに演劇ならではの力技だ。そして最後の最後の役者紹介。あの紹介のナレーションの口調は、もろにつか作品のそれだった。

演出の茅野イサムは横内謙介の門下生のようだが、これまでの演出記録を調べてみるとつか作品は見当たらない。だがネットでいろいろ調べてみると、やはりつかの影響をかなり強く受けているようだ。もっとも、つかこうへいは日本の演劇界における手塚治虫のような存在だ。多かれ少なかれ影響を受けているのは当たり前田敦子のクラッカーかもしれない。

脚本も、マジすか1を観た多くの人が気になっていた「ゲキカラの過去」に踏み込んだところがグッドジョブである。勝手に想像していたものとは違ったけど、なかなかの壮絶な過去で、ゲキカラ誕生のエピソードとして十分に納得できるものだった。

そして演技の面では、松井玲奈、横山由依以外のメンバーもなかなか良かった。岡田奈々や西野未姫の捨身の演技は笑いよりも感動を呼んだ。

しかし何といっても出色の出来は田野優花であろう。

「オズの魔法使い」の主役にも抜擢されたほどだから、それなりに実力はあるのだろうと思っていたが、想像以上だった。最初はあまりにうざい存在で、これ最後まで続くのはつらいなあ、と思っていたが、終盤では全く違和感がなくなっていた。決戦に挑むゲキカラに傘を差しだす場面では、セリフだけでなく全身の身のこなしで場の空気を作っていた。これにはしびれた。

と、こうしてみると手放しに褒めたくなってくるが、それぞれにいささか物足りない部分も多かったのは事実だ。

演出で言えば、随所につかテイストは見えたものの、全体を通すと一貫性がなく、だれた部分も少なくなかった。恐らく、AKBのステークホルダーが多すぎて、演出家といえど好き勝手にはできなかったのだろう。「AKB歌劇団」のころとは時代が違う。

最後の最後の役者紹介、あれは本来なら舞台の序盤、今回の脚本で言えばゲキカラがマジ女に復帰して修学旅行の話を聞く場面と、京都に付いた場面の間に挟まれるべきものだ。あそこのつながりは良くなかったし、おそらく初期段階ではそうなっていたのでは、と想像される。じゃあなぜそればできなかったのか。そこはいろんな大人の事情や思惑や我儘が交錯した結果に違いない。

脚本はまずまずだったが、無理やりマジすか4につなげるためにカミソリ(小嶋真子)、ゾンビ(大和田南那)を出したことで、全体のバランスが崩れてしまった。逆に、マジすか4につなげるなら永尾まりやは4の最終回に登場したキャラクターにつながる役で出て欲しかった。またおたべがなぜ留年を繰り返しているのか、につながるエピソードも欲しかったところだ。これも何となくだが、もともとは含まれていたのでは、という気がしている。

できればさらにブラッシュアップして再演などして欲しいが、今のAKBがそこまで舞台を重視しているとは思えない。せめてゲキカラ・おたべ以外のメンバーをSKE版、NMB版、HKT版としてそれぞれの土地で上演してくれるのを望むだけだ。そうしたらたぶん、なんだかんだ言いながら遠征して観に行くと思う。

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舞台「マジすか学園 」~京都・血風修学旅行~のホームページ
http://www.nelke.co.jp/stage/maji/

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2015年5月17日 (日)

山本耕史&堀北真希「嵐が丘」 これは観ないと損

キャサリン 堀北真希
ヒースクリフ 山本耕史
ヒンドリー 高橋和也
エドガー 伊礼彼方
ヘアトン 矢崎  広
ジョウゼフ 小林勝也
イザベラ ソ ニ ン
ネリー 戸田恵子
   

自分は「ケータイ刑事(銭形舞)」や「逆境ナイン」のころからのヘビーな堀北真希ファンである。近年、舞台に挑戦しているので、いつも見たいと思いながら実現できていなかった。そして山本耕史の舞台俳優としての力量はよく分かっているつもりだったが、考えたら2003年のレ・ミゼラブル以来見ていなかった。

その2人が共演、となればこれは足を向けないわけにはいかない。しかも、演目は「嵐が丘」。「ガラスの仮面」で読んだのと、松田優作主演の映画でぐらいしか予備知識がなかったが、いつか劇場で観たいと思っていた。数年前、松たか子主演で上演されたときも、チケットを買ったが行けなかった。

しかし、特に松田優作主演の映画で、重ーい話というイメージがあったので、ちょっと不安でもあった。このところ寝不足気味だったし、寝ちゃうだろうなあと。

ところが、一睡どころか、眠いとすら感じなかった。最初から最後までずっと舞台に引き込まれ、実に幸せな観劇の時間を過ごすことができた。

大きな理由は2つ。ひとつは俳優たちの演技の心地よさだ。

山本耕史が見せるスゴ味と、その奥に覗かせる人間味は、ヒースクリフの深い闇と愛の深さを余すことなく伝えてくる。無駄な演技は何ひとつなく、すべてが表現となって観客の心に響く。

堀北真希の演技は一挙手一投足がすべて演技の基本に忠実な、折り目正しいものだった。しかし、なぜかあまり「演劇的」ではない。だがそれがいい。キャサリンの純粋さ、純粋すぎて罪になってしまうその性根が全身から漂う。

高橋和也の役どころは悪役といえば悪役だが、どこか憎めない、心の弱さを前面に出した演技が印象的だった。ソニンを舞台で観るのは久しぶりだったが、相変わらずの存在感で、舞台に大きなアクセントを添えていた。

小林勝也のひょうひょうとした演技は決して笑いを取るものではないが、どうにもおかしい。「君となら」の演技を思い出してしまうとなおさらだ。

そして語り部となるネリーの戸田恵子は、もはや名人芸の域。淡々とした語り口で観客の興味をぐっと引き付ける。

これら各様の演技を楽しんでいると、あまりに楽しすぎてとても眠くなんてならない。

そしてもう一つ、G2氏の職人的な演出が見事にハマっている。つい先日、博多座の「めんたいぴりり」が千秋楽を迎えたばかりだが、その直後にこれだけの仕事をするのだからまさに職人という言葉がふさわしい。「めんたいぴりり」もとても評判がよく、ぜひ観たかったのだがかなわなかった。

原作のセリフを重んじ、正面から向き合い、決して奇をてらうことなく、一方で大胆にエピソードを取捨選択し、冗長にならずテンポよく物語を進めていく。それだけでも眠くならない要因になるが、今回の演出で最も素晴らしかったのは、登場人物ひとりひとりに向けられた眼差しがとても温かい。この物語に出てくる人物はみなそれぞれに悲しい。だがその悲しい生き様を見ながら、不思議に温かな気持ちになるのは、演出の勝利だ。だから観劇後、決して暗い気持ちにならずに劇場をあとにできた。

ストレートプレイを観てこんなに豊かな、満たされた気持ちになったのは何年ぶりだろう。これは観ないと公開する傑作と言える。あー楽しかった!なんて言葉が「嵐が丘」を観て出てくるなんて!

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「嵐が丘」公演情報ページ

http://www.shochiku.co.jp/play/others/schedule/2015/5/post_203.php

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2015年4月19日 (日)

コルム・ウィルキンソン 日本スペシャルコンサート

レ・ミゼラブルの初代バルジャンであるコルム・ウィルキンソンが待望の初来日。ライブで彼の歌を聴けるなら海外遠征してもいいぐらいだが、日本で聴けるというのだからよい時代になったものだ。

自分が彼の歌声を初めて聴いたのは、多くの日本人がそうだと思うが「レ・ミゼラブル10周年コンサート」。NHKがハイビジョン収録していたこともあり、パッケージ発売より早くBSで放送された。

当時、日本でしかレ・ミゼラブルを観たことがない人にとって、あの歌声にはびっくりさせられた。鹿賀丈史や滝田栄の歌に比べてレベルが段違いなのはもちろんだが、バルジャンの歌があんなに高いキーだということを初めて知ったからだ。

今回のプログラムに掲載されているジョン・ケアードのインタビューにもあるように、当初バルジャンの歌はもっと低い声を想定していたようだ。しかし彼の歌声に魅了されたスタッフが、その高音域を生かすために曲のほうを変えてしまった。さらに彼のために新たな曲まで用意された。それが「Bring him home」だ。

自分は以前、それほどあの曲がいいとは思っていなかった。しかし10周年コンサートの映像を観て、こんなにも素晴らしい、もはや崇高とさえ言える曲だったのだと知り、以来すっかりお気に入りとなった。その後、山口祐一郎バルジャンが登場したことで、帝劇でもオリジナルのキーで聴けるようになったが。

上記のインタビューの中で、ジョン・ケアードは「後のバルジャン役者たちは(キーが高くなったことで)みんなコルムを恨んでいたよ」と述べているが、当時のコルムをいちばん恨んでいるのは今のコルム自身ではないか。第一線を引き、世界をコンサートで回るというこの上ないシニア時代を過ごしているのに、行く先々でこのキツい歌を歌わされるのだから。

今回のコンサートでは、レ・ミゼラブルからはこのBring him home、オペラ座の怪人からはThe music of the nightだけしか歌っていないが、やはりこの2曲を聞くと全盛期の力はない。しかし現在70歳という年齢を考えればそれは当然だ。

ところが、それ以外のビートルズ・ナンバーや懐メロを歌うと、その声の響きは全盛期をもほうふつとさせる素晴らしいものに。レ・ミゼラブルやオペラ座の怪人が、歌う者にとってどれだけハードルの高い、過酷なナンバーであるか、ということを思い知らされた。

MCでは終始ニコニコと話し、歌う楽しさを前面に出したパフォーマンスは観ていて心がはずんだ。最後の最後に歌うBring him homeではフランスの軍服、つまりバルジャン衣装を着て登場するサービスっぷり。やはり一流のエンターテイナーは違う。

このコンサートは、もともと2007年から米国ツアーとして行われた「Broadway and Beyond」がベースとなっている。ゲストにも多くのナンバーを歌わせ「コルム・ウィルキンソンとステキな仲間たち」な感じで進行していく。

今回のゲストはまずアール・カーペンター。よくキャスティングできたものだ。昨年から始まった「レ・ミゼラブル」の新演出版ブロードウェイ公演で、ジャベールを演じ、またこの5月からジャベールに復帰することが決まっている、現役ジャベールである。

そして米国ツアーのBroadway and Beyondから参加しているスーザン・ギルモア。日本での知名度はないが、ファンティーヌほか多くの役を経験している実力派だ。

さらに日本から則松亜海。最初誰?と思ったが宝塚の夢華あみだ。たぶん映像でしか観たことがないのだけど、スカイステージでは時々見かけて、歌の実力が図抜けてるな、と思っていた。いろいろあって早々に退団してしまったが、今後の活躍に期待したい。

でもクリスティーヌのナンバーとか歌ったので、やっぱりクリスティーヌ経験者に出てきて欲しかったよ。沼尾みゆきとか沼尾みゆきとか沼尾みゆきとか。なんで元ジェンヌ?と思ったが梅田芸術劇場プロデュースだからか。梅芸は近年ほんと頑張ってる。一昨年の「4stars」(ラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲス、レア・サロンガ、城田優のコンサート)も梅芸プロデュースだった。

今回のコンサート、ミュージカル界では神様レベルの人の声に触れたという満足感はもちろんだが、それ以上に本当に楽しい時間だった。コルムは何度も「アリガトウ、ドウモアリガトウ」と繰り返していたが、御礼を言いたいのはこっちである。日本に来てくれて本当にありがとうございます。

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公式サイト

http://www.umegei.com/schedule/451/

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2015年4月17日 (金)

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」特報第2弾 JJエイブラムスのJを1つ足したい

今年はスター・ウォーズイヤーということでいろいろ盛り上がってきているが、4/16に公開されたこの映像は、これまでのところ一番の盛り上がりを見せている。まだ観てない人はまず見てください。



はい、見ましたか?

もうね、最後の最後でぶっ飛びましたよ。ハン・ソロ大復活。

もちろん、ハリソン・フォードが再びハン・ソロを演じるのはみんな知ってたけど、少なくとも自分は、「元船長」のハン・ソロを演じるのだと何となく思っていた。ところがどっこい、バリバリ現役じゃないですか!

72歳のハリソン・フォードに、普通にハン・ソロの衣装着せるとか、完全に裏をかかれた。さすがはJJエイブラムス。もはやJJエイブラムスじゃない、じぇじぇじぇエイブラムスだよ!( ‘ jjj ’ )エイブラムス!

それにハリソン・フォードがまた素晴らしい。ちゃんとソロの顔になってる。最近のシブい演技とはもちろん違うし、ジョーンズ博士ともちょっと違う。インディは好漢に見えてワルがのぞくけど、ソロは悪漢に見えて人の好さがにじみ出る。うーん楽しみ。でもケガで撮影を離脱したとのニュースも伝えられているが、そこが心配ではある。

今年は年末まであっとうい間の1年になりそうですな。



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2015年4月11日 (土)

明治座 HKT48指原莉乃座長公演 せりーぬ覚醒間近

出演者

指原莉乃、穴井千尋、今田美奈、植木南央、多田愛佳、熊沢世莉奈、兒玉 遥、坂口理子、田島芽瑠、朝長美桜、松岡菜摘、宮脇咲良、村重杏奈、本村碧唯、森保まどか、矢吹奈子(以上HKT48メンバー)

酒井敏也、岡森 諦、高木 禀、犬飼淳治、岩本達郎、藤田直美

HKT48が東京で舞台、との一報には小躍りして喜んだが、「指原莉乃座長公演」と銘打たれていたために喜びも中くらいなりではあった。しかし出演メンバーに熊沢世莉奈(せりーぬ)が入ったと聞いてまたテンション上がる。一報で田中美久や下野由貴がいなくて残念。とまあ、なんだかんだ言いながら劇場には来るわけで。

明治座に入るのは初めて。2003年のモーニング娘。「江戸っ子。忠臣蔵」は来てないからね。モーニング娘。の舞台といえば2006年の「リボンの騎士」( http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2006/08/post_e2c3.html )。これは今までに観たアイドル主演の舞台の中ではダントツの最高傑作だ。

一幕は芝居、二幕はコンサート、という、北島三郎や五木ひろし、松平健といったスターの歌謡ショウのフォーマットを模している。

芝居のタイトルは『博多の阿国の狸御殿』。2004年の鈴木清順によるリメイクも記憶に新しい、美空ひばりら昭和の大スターが出演した人気シリーズ「狸御殿」へのオマージュとなっている。今回指原が演じるたぬきの「きぬた」という役名も、若尾文子や雪村いづみらが演じた名前だ。こうしたディテールのこだわりは好きだ。

そして演出を担当するのが横内謙介。善人会議・扉座以外ではスーパー歌舞伎の演出で知られているが、俺にとっては何といっても愛媛・松山の「坊っちゃん劇場」でロングランされた「幕末ガール」だね。五十嵐可絵ちゃんが主演しているというので遠征して観に行った( http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2012/11/post-0c46.html )。あれは面白かった。四季の、特に「マンマ・ミーア!」でずっと観ていた可絵ちゃんがステキなのはもちろん、坊っちゃん劇場という空間も最高に演劇的だったこともあり、実に幸せな体験だった。

そんなこともあってかなり期待と妄想は膨らんでいたが、舞台としてはアイドルのイベントの域を出ないものだった。いや、これは別に悪口を言っているのではない。メンバーたちの真摯な姿勢は伝わってきたし、脇を固める酒井敏也や扉座の俳優たちも全く手抜きせずに全力で演じている。しかし全体として、「芝居を観た」ではなく「アイドルを見た」という印象が強く残るように設計されている。これは計算されたものだと言っていいだろう。

というわけで、実によく出来た舞台ではあったが、芝居としての評価はしない。それが正しい観方だと思うから。

なのでメンバーの話になります。(ダメだなあ)

座長の指原。きほん、俺はアンチ指原の立場ではあるが、昔からアンチだったわけではない。何しろ研究生時代から知っている。指原や仁藤萌乃らを擁した研究生公演「ただいま恋愛中」はかなりの回数観ている。1日3回観たこともある。しかもAKB史上に残る「アンコールかからなかった事件」のときもその場にいた。ファンがアンコールを発動するタイミングを逸し、運営がヘソを曲げて公演を強制終了してしまった事件だ。あのとき、最後のあいさつに出てきた指原は泣いていた。きれいな涙だった。あの涙には心を動かされた。しかし、後にその研究生時代にいろいろよろしくやっていたことが文春にスっパ抜かれ、完全に指原への興味を失った。この時点では興味を失っただけで、アンチだったわけではない。アンチになったのはHKT入りしてからだ。自分の中で最高に楽しかったHKT48の物語が、いきなり指原の物語に書き換えられてしまうのはイヤだった。だからアンチに転じたのだ。

もっとも指原に関して認めざるを得ない点がひとつある。それはライブにかける姿勢だ。一般的にはテレビのバラエティー番組で如才ない振る舞いをするイメージが強いが、彼女はバラエティーが得意なのではなく、その場で必要とされていることを完璧にやり遂げる、場に対する順応性が著しく高いのだ。だからライブではライブを盛り上げるためのパフォーマンスを発揮する。それを象徴するのが生歌へのこだわりだ。コンサートで生歌ってアタリマエだろ、という突っ込みは置いといて、指原はソロの曲はどんな大きい会場でも必ず生歌で臨む。彼女の意向が強く反映されたといわれる2014年初頭のHKT48九州ツアー1曲目は波紋を呼んだ「ザ☆ピ~ス」だったが、これは全員で生歌。日替わりでメンバーがソロで歌った「FIRST LOVE」も生歌だった。

今回の舞台でも、一幕、二幕ともに数々の生歌を披露。決してうまくはないが、そこに臨場感がある。観客はクラッシックのような完成度の高い音楽を求めてきているわけではない。一緒の空間にいるというライブ感を求めているのだ。だとすれば、録音を使うのは興ざめ以外の何物でもない。指原の生歌へのこだわりについては自分は高く評価している。

そしてヒロイン役というか、指原の相手役は今やHKTどころかAKBグループのセンターをうかがう宮脇咲良。彼女はキャナルシティ劇場のライオンキング公演でヤング・ナラを演じていた。自分も福岡ライオンキング観たよなーと思って調べたら、俺が観たちょっと後に出演していたようだ。惜しかった。それにしてもあの芝清道ムファサVS村俊英スカー( http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2008/01/post_1.html )の舞台に一緒に立ってたなんて、想像するだけで身震いする。

すでに舞台の発声法は忘れてしまっているらしく、上ずった声になることも多いのだが、さすがに母音法を一度くぐって来ているからか、セリフはとても聞き取りやすい。細かい表情まで遠くの客席に届ける輪郭のはっきりした演技もさすが。やっぱりこの子にはタレントより舞台女優になって欲しいわー。

その舞台度胸は圧倒的で、むかし劇場公演でハプニングを全く動じずに処理したのを目撃したが( http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2012/07/post-7885.html )、今回も二幕のコンサートで歌いながら田島芽瑠の衣装を直してあげたりしていた。

その田島芽瑠が、今回の演技では一番目を引いた。2期生ながらデビュー曲のセンターを任され、その才能を当初から高く評価されてきた田島。最近は宮脇や兒玉らに大政奉還しつつあり、なこみく(矢吹奈子、田中美久)に猛追を受けている厳しい立場だが、やはり彼女には強烈な存在感がある。意外に女優向きかも。

指原座長公演といっても、指原一人に注目を集めさせる構成ではない。そこは運営も、たぶん指原自身もよく分かったもので、そうすると逆に指原の持ち味が生きてこない。とはいえ、やはり出演メンバーすべてに見せ場を配分することも難しかったようで、その比率は「指原3、宮脇2、矢吹1.5、兒玉1、多田0.5、朝長0.5、田島0.5、残り1を均等割り」といった印象。森保とかもうちょっと目立たせても良かったと思うが。

で、俺はといえばその残り1を均等配分されていた1人、熊沢世莉奈(せりーぬ)をずっと目で追っていた。1期成で初代チームHメンバーでありながら、シングルの選抜に1度も選ばれたことがないという不遇な扱いを受けている。しかしダンスはチーム内でもっともキレがあり、歌もうまく(『シアターの女神』公演では森保が不在のときにソロユニット『夜風の仕業』を担当している)、顔がちっちゃくて、スタイルがよくて、色白の博多美人で、とにかく完璧でスキがない。テレビのバラエティーで面白いコメントを言うのは苦手のようで、だから浮上できないのかもしれないが、森保まどかのラジオ番組「まどかのまどから」では毎回名言を残すほど面白い。いったいなんで彼女が干されているかいまだに理解できない。

そういえば今年1月に福岡の劇場に行ったときもずっとりーぬを目で追っていた。すると最後の曲「僕たちの紙飛行機」でメンバーが自らが追った紙飛行機を客席に投げるのだが、りーぬの投げた紙飛行機は一直線に俺の目の前に飛んできた。これはりーぬが俺に投げてくれたに違いない。先日の握手会のときにそう言ったら苦笑いしていた。

証拠。この飛行機が
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俺の手元にある。
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だが、その不遇な時代をいよいよ抜ける日も近いかもしれない。最近、微妙に推されはじめた。何といっても今回のメンバーに選ばれたことは大きいし、「マジすか学園4」にも1シーンだけだが出演し、セリフもあった(「なにしにきたってきいてんだよごるあ!」)。握手会でも、まだ人数は少ないがそこそこ切れ目なく人が並ぶ。

みんなやっとりーぬのポテンシャルに気付いてきたか。おせーよ。

だいぶ話がそれた。あと、今回メンバーたちを支えてくれた俳優さんの中では、やはり酒井敏也が素晴らしい。2幕のコンサートの最初に、派手なタキシード姿で紹介の口上を述べるのだが、そのケレン味にあふれた語り口に、ああ、やっぱりの人はつかこうへいの芝居の出身だなあ、としみじみ思った。扉座も近年つか作品に積極的に取り組んでいるし、全体的につかテイストが微妙に感じられたのも、自分にとってのこの舞台の楽しさの隠し味になっていたようだ。

来場者全員に手ぬぐいが配られました
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明治座 指原莉乃座長公演のページ

http://www.nelke.co.jp/stage/hkt_meijiza/

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2015年4月 8日 (水)

ミュージカル「デスノート」

デスノートが舞台化されると聞いても、さして驚きはなかった。これだけのコンテンツだ、そんな話があってもぜんぜん不思議じゃない。もし宝塚でやる、という話だったら、ちょっとはビックリしたかもしれないが。

だが同時に、そんなに観たいとも思わなかった。映画のクオリティーが高くて満足していたからだろうか。あれ以上のものにするなら、相当原作と離れないといけないし、そうなると逆に興味が薄れる。どっちに転んでもあまり俺好みの作品になりそうにない。

でも出演者を聞いて気が変わった。濱田めぐみが死神レム。いったい誰がそんなすごいこと思い付くんだ。あ、ホリプロか。いやそんなことどうでもいい。これは観たい。観なくてどうする。

というわけで観てきましたミュージカル『デスノート』。

夜神 月 柿澤勇人
小池徹平
弥 海砂 唯月ふうか
夜神粧裕 前島亜美
レム 濱田めぐみ
リューク 吉田鋼太郎
夜神総一郎 鹿賀丈史

ここからネタバレありです。

まずめぐ様。四季退団後、どうも個人的にはぐっとくる役がなかったのだがこれはいい。曲が彼女の声にぴったりしてたのか、その声を存分に堪能できた。押さえぎみの演技にも迫力があった。何よりかなり濃い目のメイクと衣装なんだけど、実に美しい。結局それかよ。

主役の月(ライト)はダブルキャストで、この日は柿澤勇人。柿澤っつったらやっぱり四季の『春のめざめ』メルヒオール。本人はもうそのイメージ消したいのかもしれんが、あれはやっぱりハマり役だった。そして今回の月役が、かなりメルヒオール要素強し。最初のシーンがアレだから、もういつ懐からマイク取り出すかハラハラするほど。それはさておき、歌唱力が四季時代よりぐんとレベルアップしていて、聴いてて心地よかった。

対するL役に小池徹平。演技がうまいのは知ってたが、歌があんなにうまいとは。CD出してるから当たり前っちゃ当たり前だが。ストーブさんやるじゃん。

夜神月の父、総一郎には、映画でもこの役を演じた鹿賀丈史。これはよくキャスティングしたなと思う。この数年、言葉が出にくい様子なのが痛々しいが、本人の気力は非常に充実しており、さすがの存在感で舞台をおおいに引き締めていた。

そして、何といってもこの舞台の主役とも言えるリューク役の吉田鋼太郎。近年はテレビで観ることが多くなり、最近は「ウロボロス」の怪演も記憶に新しい。しかしもともとは舞台俳優なので、そのポテンシャルを目の当たりにすることができてうれしい。全体的に重くなりがちなこの舞台を、やりすぎなほどのエンターテイナーぶりで楽しいものに変え、最後はおいしいところを全部持っていった。

アンサンブルでは個人的な趣味だけどやっぱり森実友紀に目がいくよねー。マンマ・ミーア!をさんざん観た身としては。

というわけで、全体的に俳優さんたちはみな充実した仕事ぶりで、観ていて本当に楽しかった。これだけの役者を集めるのって、やっぱりホリプロみたいなところじゃないとできない芸当なんだろうな、などと思ったりもした。

だが、舞台作品としての完成度は、若干物足りないところもある。

人によって感想は異なるだろうが、個人的には脚本がちょっと、うーん、な感じだった。

ストーリー構成はまあこんなものかな、とも思ったのだが、ところどころセリフに「えっ?」というような違和感をおぼえることが多い。夜神総一郎の唐突な「これはLに頼むしかないな!」は、映画「デビルマン」の「ああ、サタンだからな!」並にズッコケた。

また曲の歌詞も、四季の翻訳以上に違和感ありまくり。ミュージカルの歌詞なんてよく聞こえないものだが、聞こえなくてもヘンな言葉が並んでいると不協和音になってしまうのだと知った。

スタッフの顔ぶれを見ると、音楽は「ジキル&ハイド」のフランク・ワイルドホーン、作詞が「カルメン」のジャック・マーフィー、脚本が「ボニー&クライド」のアイヴァン・メンチェル。なるほど、海外スタッフが書いたものを翻訳したからカクカクした感じになっちゃってるのか。

世界に通じる作品を、という意気込みは素晴らしいし、海外スタッフとのコラボレーションは日本の演劇界にも絶対にプラスになる。でも、世界に通じる作品を作ることと、海外スタッフを招き入れることはイコールじゃない。もう少し時間をかければもっと練れたものになったのかもしれないが、今回に関して言えば消化不良に終わってしまった感は否めない。

「デスノート」という素晴らしい題材に、これだけのキャストを揃えることができたのであれば、やはりグウの音も出ないほどの圧倒的な舞台になってほしかった。そういう意味では、やや残念ではある。

実際のところ、マンガの舞台化ってなかなか難しいのだろう。セーラームーンミュージカルやテニスの王子様ミュージカル、BLEACHミュージカルといった作品群は、独自のアプローチで2次元の3次元化を実現した。宝塚は昔からそこは得意技としており、ブラック・ジャックからメイちゃんの執事まで自在に舞台化している。それらに共通しているのは、作品をリスペクトしつつも、そのままカタチにするのではなく、あくまで観客の心に残る読後感のようなものを再現している点にある。

今回の取り組みはマンガの舞台化にプライオリティーを置いているわけではないだろうが、やはりデスノート特有の、殺人というモチーフながら重苦しくなく、純粋なエンターテインメントとして楽しめる感覚がもう少しあってもよかった。

というわけで、若干奥歯にもののはさまったような言い方になってしまったが、結論としては、やはりめぐ様は魔女とか死神とか、そういうファンタジーな役にビターンとはまるよね、ということと、やっぱり夜神粧裕は満島ひかりを超えらんないよね、ということですかね。

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ミュージカル「デスノート」公式サイト
http://deathnotethemusical.com/

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2015年3月 1日 (日)

ビリー・エリオット ミュージカルライブ

昨年12月から全国で順次公開されてきた「ビリー・エリオット」のライブビューイング。昨年9月にロンドンから衛星中継したときの映像をコンテンツ化したものだ。

きほんライブ原理主義者なので、こうした映画館で舞台を観る、というのはあっていいというかもっと機会が増えたらいいとは思いつつも、個人的にはあんまり行こうという気にならない。でも以前ライブで観た舞台となれば話は別。実はハロー!プロジェクトやAKB48のコンサートも、実際に行ったものはDVD・ブルーレイを買うけど行かなかったものは買ってない。

自分がこの作品を観たのは2010年末。大雪で遭難しかけた翌日だ。懐かしいなあ。

http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2010/12/billy-elliot-39.html

上のエントリーでも書いたけど、原作の映画「リトル・ダンサー(邦題)」は、炭鉱の労働争議を描いてはいるけど、全体的には静かなタッチで、田舎の少年が都会に出るまでのしみじみした物語、といった印象だった。しかし舞台はがらりと印象が異なり、労働争議はガチムチなタッチで力強く描かれ、ダンスシーンはより激しく、コメディー要素がふんだんに盛り込まれ、と圧倒的な情報量で迫るエンターテインメント色の濃いものになっている。

今回、映像化された特別上演では、ロンドン初演時のビリーが2幕のハイライトとなる「白鳥の湖」の場面で、成長したビリー役で登場。当時の演技を観たわけではなくても、こうした演出にはテンションが上がる。

この場面は本当に美しく、舞台史に残る名場面だと思う。ただ自分はこの曲が流れると「熱海殺人事件」で木村伝兵衛が電話に向かって怒鳴ってる姿ば浮かんでしまうのだけれど。

映像だと伝わってくる熱量はライブには及ぶべくもないが、その分カメラワークで様々なアングルから堪能できるのがいい。特にこの「白鳥の湖」は実に3D的な演出なので、この場面の魅力を存分に味わうことができた。

しかしこの舞台、なぜ日本公演が実現しないんだろう?エルトン・ジョン作曲ということで、ライセンス料が高いんだろうか?韓国では早々と韓国人キャストでの公演を行っている。もっともロングランするには常時3~4人のビリー役をそろえる必要があるので、日本の男性バレエ人口を考えると難しいのかもしれないが。

硬派な社会派ドラマの要素を背景に、父と子の関係、少年の旅立ちを描くという日本でもウケる要素は満載だ。時間が経っても色あせる作品ではないと思うので、いつか上演してほしいものだ。

ビリー・エリオット ミュージカルライブのウェブサイト
http://littledancer-m.com/

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2015年1月 1日 (木)

ニューヨーク2014 ひとり合宿のまとめ

無事に帰宅してひとり合宿のまとめを。

今回は4日間で14本の計画をしていたが、結果は12本。オフでもう2本観る予定だったが、1本は体調的に無理だな、という判断で、もう1本はラミン・カリムルー休演に伴うスケジュール変更で諦めた。この2本は機会あればまたチャレンジしよう。

今回のハイライトは、イディナ・メンゼル、ノーム・ルイス、ラミン・カリムルーというブロードウェイを代表する3人のミュージカルスターと、ヒュー・ジャックマンというブロードウェイとハリウッドを兼任する大スターを見るというかなーりミーハーなものだった。

ラミン@バルジャンを見られなかったのは残念至極で、そう長くも登板しないだろうから諦めるより他はなさそうだが、舞台が生ものである以上、そういうこともある。大きなトラブルもなかったし、感謝の気持ちでいっぱいだ。

作品としてマチルダ、アラジンを観ることができたし、オフでも「Here Lies Love」に素晴らしい刺激をもらった。実に充実した4日間だったといえよう。

もろもろの事情であまり更新できていないこのブログだが、やはりブログを書くのは楽しい。久しぶりだったのでもともとまずい文章がますますチープになり、書くのに時間もかかって毎晩2~3時間しか寝られなかったが、それも含めて充実感がある。今年こそもうちょっと更新して自分を鍛えたい。

31日の朝に現地を立って、成田に着くのが1月1日の午後なので、いつ新年を迎えたのか分からなかったが、CAさんが教えてくれたので成層圏の初日の出を拝むことができた。

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そんなこんなで今年もよろしくお願いします。

2006年から隔年でこの時期にニューヨークを訪れているが、リーマンショック以降、今回が最も景気がいいように感じた。物価は軒並み上がり、ショーのチケットも高騰しっぱなし。ホテルもレートが上がり、なのに一杯。いつも早めに入れたのに今回は無理。連泊の掃除は午後になっても終了しないし、エレベーターも来ない。

円安もあって、旅行者には厳しい状況だが、街が華やかになっているのはいいことだ。90年代に初めて来たとき、老舗デパート、サックス・フィフィスアベニューのショーウインドーを使ったクリスマスのデコレーションにびっくりした記憶がある。しかし、ここ何回かは縮小気味で、以前は列をなして見物する人がいたのに、足を止める人も少なくなっていた。ところが今回はその豪華さが復活しただけでなく、壁面全体を使ったプロジェクションマッピングが行われ、大勢の人を集めていた。その模様を動画で。

時代は変わる。その変化の息遣いを明確に感じられるのがこの街の魅力だ。しかしその変化と、忘れてはいけない悲劇の記憶との間でどう折り合いをつけるか、それはこの街でも意見が分かれる。正解はないのだろうが、その議論に日本人が学ぶべきことは多いだろう。

11月、旧ワールドトレードセンター跡地に開業したワン・ワールドトレードセンター。その壁面を雲が流れていた。

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2014年12月30日 (火)

Jersey Boys (ジャージーボーイズ)

12/30 19:00
August Wilson Theatre

昨日ラミン・カリムルーが突然休演したレ・ミゼラブル。そんなこともあろうかと今日の夜の回も押さえておいた。

これは買うときに、昼はラミン休演だけど夜は出る、と確認して買ったから大丈夫、と劇場へ行ったところ、昼は出たけど夜は休む、という掲示が。そりゃあないぜラミン・・・。

だがそんなこともあろうかと、この時間帯の別の作品も押さえておいた。

戦いとは、いつも二手三手先を考えて行うものだ――シャア・アズナブル

そう、遠征は戦い。時間との勝負。ラミン・カリムルーのバルジャンが観られないのは涙が出るほど残念だが、残念がっている余裕なんてないのである。

というわけでこの遠征最後の作品は「ジャージー・ボーイズ」に。映画化もされたし、2014年の 掉尾を飾るには相応しい作品と言えよう

じつはジャージーボーイズ、今更ながら初見である。

2006年のトニー賞を総なめにして、マンマ・ミーア!以降大量生産され、そのほとんどが消えてなくなっている既存のアーティストの楽曲を使ったいわゆるジュークボックス・ミュージカルの中で、数少ない成功を納めた作品だ。

これまでこの作品を素通りしてきたのは、フォー・シーズンズなんて世代じゃないし、というのがひとつと、けっこうな英語力を必要とするという2つの理由から。もちろん後者のほうが大きかった。

しかし、ご存じのようにクリント・イーストウッドが映画にしてくれた。それで予習も可能になったので劇場に足を運んだのだ。だが、あの映画を観たのは単なる「予習」ではなく、実に感動的な体験だった。作品としてのテンポがいい。深刻なエピソードについても、あくまでドキュメンタリータッチではなく、エンターテインメント枠組みを外さないように描いている。それらによって、とても「心地いい」映画になっていた。

そうなると、その心地よさが映画独自のものなのか、もともとの舞台にあった要素なのか、というところを知りたくなるのが人情というものである。

舞台が始まると、映画同様、とてもいいテンポで話が進んでいく。シリアスな場面でも笑いを織り交ぜ、決して観客を不安にさせずに物語を展開していくのも同じだ。なるほど、映画はそうした舞台の印象をそのまま映像に持って行ったわけか。

だが、舞台より映画はぐっと情感に訴えかけるものになっていた。逆に、舞台はライブの迫力で押し切っている部分もある。これは、どちらが優れているというよりも、舞台と映像、それぞれの特性を生かした結果だろう。

舞台では、とにかく楽曲披露ごとに大いに盛り上がり、歓声が飛ぶ。クライマックスの「君の瞳に恋してる」ではもちろんショーストップ。その瞬間、劇場の観客はコンサートの観客という役を演じる。これはライブでしかできない演出であり、この作品の大きな魅力を構成している。

映画ではその熱狂は望めない。その部分を埋めるために、脚本をブラッシュアップし、観客にどう感動を伝えるか緻密な計算で作品を構成していく。もちろん、もともとの作品に素養がなければその作業は進まない。映画より先にこの舞台を観ると、ほとんどの人が「いやー盛り上がって楽しかったなあ」という感想を持つはずだが、その先に、磨いて輝かせられる要素を見出したクリント・イーストウッドのプロデュース力はさすがという他はない。改めて、映画人としての彼の存在に強い敬意を抱く。

舞台と映画の両方に接すれば、舞台の熱狂を思い出しながら、映像で何度も繰り返しこの作品を味わうことができる。なんとも贅沢な楽しみ方だ。帰りの飛行機の映画プログラムに入っていたので、さっそく実践してみようと思う。

アプローチは違えど、舞台も映像も、方向性としては同じところに向かっている。紆余曲折や挫折、悲劇があっても、人はそれを乗り越えられる、という、ある意味とてもシンプルな人間賛歌。それを説教っぽくなく、軽やかな音楽にのせてさらっと、スマートに歌い上げる。だからラミン・カリムルーのバルジャンが観られなくたって、気にすることはないのだ(←引きずってる)。

そういえば、4年前、大雪のために新演出のレ・ミゼラブルを観られない事態になったとき、助けてくれたのはニュージャージーの劇場の人たちだった。今度のミゼラブルな状況も、ジャージーな作品に救われたわけか。観劇って、旅って、人生って面白い。

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Jersey Boysのウェブサイト
http://www.jerseyboysinfo.com/

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THE HALAL GUYS

最近、日本でもハラルフードが注目を集めているが、ニューヨークの街角でもその屋台は多い。

その中で最も人気があり、いつも行列ができているのがヒルトンホテルそばに出ている「THE HALAL GUYS」だ。

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並んでいても、オペレーションが確立しているのでさほど待つことはない。基本はライスの上にチキンが乗ったもの、羊肉が乗ったもの、そのミックスだ。そして中東風コロッケのような「ファラフェル」を乗せたものもある。値段はすべて7ドルだった。

ドクターペッパーのボトルを買っても9ドル。何もかも高いマンハッタンでこの値段は魅力だ。

ホテルに持ち帰ってあけてみると、ライスが見えないほど肉を敷き詰めてあり、なかなかのボリューム。2人で食べてもいいぐらいだ。

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味もあまり癖がなくてとてもおいしい。ヨーグルトのような白いソースと、唐辛子の赤いソースがついてくる。白いソースはたっぷりかけるとおいしいが、赤いソースはうかつにかけると即死するレベルの辛さだった。

ミッドタウンに泊まる際、夕食を軽く済ませたいときはおすすめの一品だ。



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IF/THEN

12/30 14:00
Richard Rodgers Theatre

イディナ・メンゼルがいかにすごい人であるか、日本人は本当にわかってない。

「アナと雪の女王」のおかげで知名度はぐんと向上したが、Yahoo!ニュースの見出しで「アナ雪歌手」とか紹介されているのを観るといったんプリントアウトして八つ裂きにしたくなる。

紅白歌合戦によってその認識が変わることを期待したいが、この話もちょっと微妙だ。なんか「松たか子の替わり」みたいになってるのが気に入らない。もちろん松たか子は舞台で何度も観てるし、演技はもちろんのこと、歌の実力があることも知っている。女優としての比較ならいい勝負かもしれないが、ミュージカルという場で比較したら、これはもう比較にならない。いま、現役ばりばりのブロードウェイ女優で、その名前だけで人が呼べるのは彼女ぐらいだ。

「RENT」は彼女が出演しているときにニューヨークに行っているのだが、観ていなかった。そして「ウィキッド」のときはすでに彼女は降板していた。このとき、ウエストエンドのオープニングに出演しているので、今思うとそのときはニューヨークでなくロンドンに行くべきだったなあ、と後悔。

そのイディナ・メンゼルをやっとライブで観られる。「RENT」でも「ウィキッド」でも、CD(RENTは映画でも)でしか聴いたことのない彼女の歌をついに聴けるのだ。

作品は完全オリジナルなので、予習不可。タイトルからすると、もし自分の人生で、別の選択をしていたら・・・という、何だか「ガラスの仮面」の演劇コンクールで劇団一角獣が上演した「運命」ような話か?まあ理解できずとも彼女の歌声さえ聴ければよしとしよう。

幕が上がり、イディナが舞台に登場。「Hi, It's me」の一言だけで拍手が起こる。異様な雰囲気だが、イディナ様の信者としては自分も歓声を上げたいところ。

正直、話はさっぱり分からなかった。すみません。英語力の問題です。

どうも同じ登場人物たちの間で2つの物語が進行している(らしい)のだが、英語が理解できず付いていけなかったので、途中でジョジョ第二部のカーズのように「考えるのをやめた」。

開き直ったところ、逆に楽しくなってきた。細かいストーリーは分からないが、甘々のラブストーリーの中に、ゲイのことや開発の問題など、ニューヨークの「今」を盛り込み、リアルさを感じさせる構成、シンプルながら大きな鏡の効果的に利用した舞台セット、そして「ネクスト・トゥ・ノーマル」でトニー賞に輝いたトム・キットによる音楽は、自然に耳に入ってくる軽やかさで、この物語の「日常感」を演出している。ちなみにこの作品の脚本&演出も、「ネクスト・トゥ・ノーマル」のブライアン・ヨーキーとマイケル・グリフだ。話がこれほど分からなくても、ちっとも眠くならないし、感動もする。これは作品の持つ力だろう。とか英語わかんない奴が偉そうに言うなよ、って感じですが。

脚本は緻密に構成されているが、同時に、イディナ・メンゼルの魅力を200%引き出すために作られていることも間違いない。とにかくモテモテ。なんだか「SEX and The City」に古き良き時代の少女漫画の主人公が成長して紛れ込んだような。

作品自体、決しておざなりに作られたものではなく、別の女優が演じても十分に見応えのあるものとして完成されているのだが、ことイディナ・メンゼルが出ている限りは、もうすべての視線が彼女に集中する、まるで新宿コマ劇場の「北島三郎 新春特別公演」のようだ。でもエンターテイメントなのだから、それでいいんじゃないか?

生イディナ様の歌は、CDで慣れ親しんだウィキッドの「Defying Gravity」のような歌い上げるナンバーでは鳥肌が立つし、日常生活の演技の中でさらっと歌うときにもその歌声に耳が自然と傾く魅力にあふれている。そして演技の面では、映画RENTのモーリーンで見せていたような、ちょっとした表情で笑いを誘う、コメディエンヌの才能も片鱗を見せつつ、細かい芝居で飽きさせない。こりゃ眠くならないわけだよ。

観終わったあとには、とにかくイディナ・メンゼルを堪能した、という満足感でいっぱい。RENTやウィキッドのぶんも取り返した感あり。でもちゃんと作品への敬意もきちんと残る。単なるイディナ様のワンマンショーで終わらせない、ブロードウェイの面目躍如だ。

何しろ、イディナ演じるエリザベスの旧友、ルーカスを演じている男性、すごーく見たことあるよな、と思って幕間にPlayBillを開いたら、アンソニー・ラップじゃん!RENTのオリジナルキャストで、日本のツアー公演にも出演している。そしてやはりエリザベスの友人、ケイトを演じているのは「カラーパープル」でトニー賞主演女優賞を獲得したラシャンズだ。名前に特徴があるので演劇系のニュースサイトでよく名前を見かけている。こんな実力キャスト&スタッフが結集した豪華な作品でもあるのだ。

しかし、アンソニー・ラップが出ることぐらいは予習しとけよ、と反省。RENTの来日公演ではとてつもなく感動しただけに(http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2009/08/post-4.html)誠に遺憾に存じます。

ところでイディナ様、2015年はワールドツアーでの来日も決定(だから紅白出演も快諾したのだろう)した。東京公演の会場は日本武道館だ。あの会場が満席になるのなら、日本でもイディナ・メンゼルが正当に評価されるようになった、と見ていい。すでに自分のチケットは確保済み。今度は日本でイディナ様に会えると思うと、今から「The Wizard and I」でも歌いだしたい気分だぜ。

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IF/THENのウェブサイト
http://www.ifthenthemusical.com/

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Hansel and Gretel (ヘンゼルとグレーテル)

12/30 11:00~
Lincoln Center

海外に来ると、ふだん国内では行かない美術館や博物館に行ってしまうものだが、そんな感覚で前回ニューヨーク・シティバレエを観たところなかなか勉強になった。なので「騙されたと思って食べてみて計画(by チームBII)」を継続し、今回は同じリンカーン・センターのメトロポリタン・オペラだ。

前回の『くるみ割り人形』同様、こちらでもクリスマスシーズンの家族向け演目として『ヘンゼルとグレーテル』を上演中。国内で、バレエよりは少しは観ているオペラだけど、正直、苦手意識もあるだけに、子供向けぐらいがちょうどいい。もちろん子供向けでも出演者は本物の実力者たちだし。

一度入ってみたかった、メトロポリタン・オペラの劇場。すべての座席の前に、字幕表示機が装備されている!

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これがオペラ専用劇場の実力か!この設備はいいなあ。日本でもBunkamuraとか東京芸術劇場とか設置すればいいのに。海外ミュージカルのツアー公演でも活躍しそうだ。

オペラ『ヘンゼルとグレーテル』を作曲したエンゲルベルト・フンパーディンクはワーグナーに強く影響されたと言われており、なるほど自分の乏しいオペラ経験の中でも何度か聴いたワーグナー作品を思い出させる。何となく『銀河英雄伝説』を思い出しながらゆったりと味わう。ミュージカルとは比べ物にならないでかい編成のオーケストラの音に身を委ねていると、たとえ音楽には素人でも、次第に気持ちよくなってくる。1幕のヘンゼルとグレーテルが、そしてその父と母が話し合う場面は正直眠くなってしまったが、二幕で2人が森に出ると、緊張感も出てきて引き込まれてくる。

メトロポリタン・オペラのヘンゼルとグレーテルでもっとも有名な場面は、眠ったグレーテルが見る14人の天使の夢で、なぜか天使たちは巨大なお面をかぶったコック姿、そして魚の顔をした執事も出てくるところだ。
これは写真で観ても異様だが、ライブで観るとまた格別の面白さである。

『ヘンゼルとグレーテル』は本当は怖いグリム童話なわけで、残酷なくだりもあるが、オペラではきわめておだやかな話に書き換えられている。だから安心して家族で来られるわけだ。

リンカーン・センターの噴水といえば「glee」第2シーズンの最終回でグリー部のメンバーが上にのぼってぐるぐる回っていたのを思い出すが、あれ本当にやると怒られるみたいで、誰かが上に立つと速攻で警備員に笛を吹かれていた。

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メトロポリタン・オペラのウェブサイト
http://www.metopera.org/

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2014年12月29日 (月)

Aladdin (アラジン)

12/29 19:00
New Amserdam Theatre

今回は作品よりも役者が目当て、という正常ではない観劇姿勢が多い中、作品的なハイライトは間違いなくこれ「アラジン」だ。

今年3月にブロードウェイで始まったが、早くも来年には日本で四季が上演する。四季にとってはポスト浅利体制になっての最初の大博打。そしてウィキッド以来の、久々の超大作となる。

ディズニーにとってもこの作品への意気込みは大きいだろう。何しろ、この10年ほどディズニーミュージカルは大きな成功を納められていない。リトル・マーメイドが失敗作に終わり、ターザンは興行的にこけ、良かったのはあまり金をかけずに作った「ニュージーズ」が意外なスマッシュヒットとなってツアーに回っていることぐらい。そしてこの間、ディズニーのフラッグシップ劇場であるニュー・アムステルダム劇場はメリー・ポピンズが占拠していた。もちろんこれもディズニーミュージカルではあるけれど、キャメロン・マッキントッシュとのコラボレーションなので、ディズニーとしてはビジネス的なうまみは少なかっただろう。

そこに投入されたアラジン。実は開幕してから漏れ聞こえてくる評価は、あまり芳しいものではなかった。しかし自分の目で確かめないことには何も言えない。

というわけで、通算6回目のニュー・アムステルダム劇場。トイレの位置はもちろん、どのあたりが空調が弱いとか、そんなことまで分かるようになってきた。

Playbillを観ると、ジーニー役がトニー賞授賞式でやんやの大喝采をあびていたジェイムス・モンロー・アイグルハートではない。シャワルマといい、レ・ミゼラブルのラミン・カリムルーといい、きょうはこういう日だなあと諦める。アイグルハートで持っている、とも聞いているだけに残念だが、おかげで作品そのものを冷静に評価できるじゃないか、とポジティブに。

日本での開幕を楽しみにしている人が多いだろうから詳細には書かないけど(ただの手抜き?)、全体の印象としては、予想以上に「ジーニー役がすべて」の作品だった。

この日ジーニーを演じたマイケル・ジェームズ・スコットも相当な実力者で、これで2番手、ってどんだけブロードウェイの層厚いんだよ。しかしそのぐらいの層の厚さがなくては、ロングランできない作品だ。

できるのか?四季で。それが正直な感想。

いや、もちろん四季には多くの実力者がいる。でも、たぶんこの作品で必要な「実力」は、これまで四季が重きを置いてこなかった能力だ。端的に言うと母音法のジーニーなんて、(今の段階では)想像できない。「母音法は早口でも意味が分かるようにするためのものだ」という人もいるかもしれないけど、ここで伝えるのは意味じゃない。ノリだ。

さらに、下の写真を見て欲しい。ロゴの下に何て書いてある?

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「NEW MUSICAL COMEDY」だ。

四季にもコメディはあるって?「ブラックコメディ」?「解ってたまるか」?うん、違うよね。大丈夫かなあ?

事前に聞いた評判なんてやはり当てにならず、十分に面白い作品だったので、四季の公演も成功して欲しい。だからこその不安だが、開幕したら「意外にいけるじゃん!」と思わせてくれることを期待したい。

ただ、四季にとっては経営体制の刷新に限らず、人材の育成や外部からの人材登用など、作品の根幹にかかわる部分で大きな変化が要求される作品になることは間違いない。そこまで計算しての投入なら、その覚悟に俺は賭けたい。

もっとも試されるのは四季だけではない。自分たち、観客も試されることになる。

場内は大いに盛り上がっていたが、それはジーニーの力だけによるものではない。ジーニーのセリフや動きに、いちいち大きなリアクションで反応する観客がいてこそのものだ。

これはお国柄だから仕方ないが、どうしても日本の観客は反応が薄い。「キャッツ」のスキンブルシャンクスのナンバーのように、みんな一斉に拍手するとか、そういうお決まりの作法でしか盛り上げることができない。自分も含めて。

でも、この作品はそれじゃダメだ。全員がそろって、ではなく、観客それぞれが「俺はウケてるぜ!」と舞台に向かってアピールしないと、多分場内の熱気は高まらない。「え?ここ笑っていいの?」と周りの反応をうかがっているうちに、どんどんジーニーは先に行ってしまう。勇気を持って笑おう。歓声を上げよう。もちろん、周りに「俺はこの作品の見方を知ってるよー」と言うのではない(そんな観客が多いのも日本の特徴)。あくまで舞台上の、役者に向かって元気玉を届けるような思いで。

そして、これは「マンマ・ミーア!」や「ウィキッド」で顕著だけど、リピーターが支える形になると、笑わせる場面でも反応が薄くなる。仕方ないといえば仕方ないのだが、無理してでも笑わないと、ジーニーの魔力は下がるばかりだ。そして観客に無理をさせないためにも、四季の俳優には一層の力が求められる。正のスパイラルを起こすために、自分たち観る側も相当がんばらないといけない。「なんで客ががんばらなきゃいけないんだ」というのは正論だが、とりあえず俺は少しがんばろうと思う。

四季が発表したジーニー役候補は、道口瑞之と瀧山久志。いま四季で一番笑いが取れる芸達者といえば、やはり道口だ。そして四季プロパーではない瀧山の起用。この2人ならちょっとやってくれそうな期待感はある。この2人を選んだということは、四季がこの作品を上演するにあたっての課題を、きっちりと認識している証拠でもある。第3、第4のジーニーも早期投入が必要だろうが、まずはこの2人のジーニー、早く見てみたいものだ。

そうそう、この日のアラジン・ジャスミンはオープニングキャストのままだったが、Courtney Reedは写真で見るよりずっと可愛い感じで、露出の多い衣装にニヤニヤしながらいやらしい視線を投げかけてきた。ジャスミン候補は岡本瑞恵と三井 莉穂。岡本ソフィは好きだから、こちらもちょっと楽しみだ。結局それかよ。はい、そうです。

アラジンのウェブサイト
http://www.aladdinthemusical.com/

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Dallas BBQ

前回はステーキを食ったが、今回はどうしようかな、と考えていたところ、「地球の歩き方」に、ニューヨークではステーキと並んでバーベキューも人気だという。

というわけで、42丁目、ニュー・アムステルダム劇場のはす向かいにある「ダラスBBQ」の店へ。TGIフライデーズみたいな、どどーんとアメリカンな料理が出てくる店だ。

これが一番人気のBABY BACK RIB。見た目どおりの、甘くて、辛くて、大味なアメリカ料理だ。いいねえ。

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コーラを頼むととんでもないサイズのグラスが。でも「びっくりドンキー」でこういうのは慣れてるからびっくりしないぜ!

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DALLAS BBQのウェブサイト
http://www.dallasbbq.com/

ちなみに、ダラスに店はありません。

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Les Miserables (レ・ミゼラブル)

さて、レ・ミゼラブルである。お目当てはもちろん、ラミン・カリムルー様のバルジャンだ。

でも、月曜マチネの追加公演なので、ちょっといやーな予感はしていた。

配られたPlaybillに紙が挟んであったので、目をやると

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休演だった。あゝ無常。

しかし、こんなこともあろうかと、明日のチケットも取ってある。限られた期間で同じ演目を2回観るのはもったいないが、仕方あるまい。

ちなみにスタンバイのAaron Walpoleはきれいに出る高音が魅力。なのでBring him homeは素晴らしかった。

ただ、体型が10周年コンサートのフィナーレでイギリス代表として出てきたPhilip Cavillをさらに丸っこくした感じで、どうにもルックスの印象がバルジャンっぽくない。

とにかく、明日また再チャレンジだ。

それにしても、レ・ミゼラブル新演出は、4年前のニュージャージーのときといい、直前に福井の降板劇があった昨年の日本公演といい、そう簡単に観られないのだなあ。

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Peanut Butter & Co.

ここもウエストビレッジにある店。アメリカ人のソウルフードとも言える、ピーナツバターを使ったサンドイッチの専門店だ。店内で食べるのも、テイクアウトも可能。

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いちばん人気は「THE ELVIS」という。ピーナツバターとバナナをはさんだもので、かのエルビス・プレスリーが好んで食べたというメニューだ。

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食べてみると、ピーナツバターがそんなに甘くなくてなかなか美味。ちなみに買うときに「ベーコンとトッピングするか?(+1ドルだったかな)」と聞かれたので、即答で「ノーべーコン」と言ったが、あちらでは甘いソースとベーコンという組み合わせはアリのようだった。

Peanut Butter & Co. のウェブサイト
http://ilovepeanutbutter.com/sandwichshop

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Mamoun's Falafel Restaurant

この日の昼食は、ニューヨーク大学に近く、学生たちも多いウエストビレッジで。近年ニューヨークの物価はどんどん上がっているが、日本でも学生街は値段が20年前のまま、なんてことがよくある。ここもそう。

1971年創業の「Mamoun's Falafel Restaurant」は、中東のコロッケのような「ファラフェル」をはじめ、ケバブなどを売っている店。持ち帰りか店内で立ち食いする。

映画「アベンジャーズ」のラストで、アイアンマンやキャプテンアメリカ、ソーたちが気まずい雰囲気で食べていた「シャワルマ」を覚えているだろうか。あのシャワルマをぜひ食いたいと思い、友人に頼んで「ここならありそうだ」という店に連れてきてもらったのだ。まさにあの映画に出てきたような、およそ世界を救うヒーローたちが入るような雰囲気ではなく、大衆的すぎる感じが心地いい。

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メニューを見ると、「SHAWARMA」がある!喜びいさんで注文すると、きょうは材料がないのでできない、という。残念。

かわりにチキンケバブを頼む。これがすこぶるうまかった。プレートで頼むと量もかなりのもの。堪能した。

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この店、ぜひまた来たい。次こそシャワルマを!

Mamoun's Falafel Restaurantのウェブサイト
http://www.mamouns.com/

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Green Market

ちょっと観光ネタ。ユニオンスクエアで週4回開かれている、ニューヨーク市内や近郊農家などが集まるグリーンマーケットにやってきた。日によって店の数が異なり、この日は少なかったが、テレビの旅行番組に出てくるようなマーケットの光景に、自分がおしゃれな旅行者になった錯覚を抱いて楽しむ。

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日本の品種を輸入したものは大人気。日本ほど丹精込めて育てないので完成度は低いが、こういうクールジャパンは誇らしい。農産物そのものではなく、品種と、育て方のノウハウをセットにして輸出する、というのはありだな。

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名物(?)のホットアップルサイダーはリンゴ果汁に、ジンジャーか何かをいろいろまぜたもの。味はちょっと微妙だが、生姜湯みたいなもので、体が温まる。

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青汁のようなものを売っている店で猫草も売っていた。飾られている写真の猫の名前がグリンダ様。

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9/11 Memorial Museum

9/11テロ事件のあと、ニューヨークに来るのはこれで6回目。しかし、グラウンド・ゼロ近辺に行ったことはなかった。正直、怖かったし、観光で行くのもためらわれた。

しかし今年、ミュージアムがオープン。この機会に行くべきだろうな、と初めて足を踏み入れた。

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よくテレビなどでも紹介されている、ビル跡地に作られた2つの巨大な噴水を見ながら、真新しいミュージアムへと向かう。全米から観光客が集まっているこのシーズンなので、チケットは時間指定でネット予約しておいた。Eチケットをプリントアウトして持参。

X線の荷物検査を経て入場。あまり厳しくはない印象だった。

米国では博物館の設計が十分に研究されていて、子供などにも興味を持ってもらえるにはどういう空間を作ればいいのか、そのノウハウが蓄積されている。同時に、今回のような負の遺産を、精神的なショックを受けずに伝えていくための工夫も多い。

このミュージアムは、そうしうた知見と、最新のテクノロジーを最大限に盛り込んだ施設になっているので、そうしたミュージアムの設計に興味がある人には参考になると思う。

展示されているのは、熱で変形した鉄骨や、命を救った階段など、当時の記憶を間接的に伝えるものが多く、また残っているビルの土台をそのまま見せたり、といった印象的な展示もある。自分はカメラを向ける気にならなかったが、撮影も許されている。

当時のニュース映像などを見ると事件を思い出してショックを受けてしまう人にも配慮し、そうした直接的に記憶をよみがえらせるような展示は、エリアを分けて入り口にその旨を明記し、さらにスタッフを立たせて「この中にはこういう展示があります」と説明したうえで入場させるようにしていた。

他の博物館と同様、ミュージアムショップがあり、そこには鶴の折り方の説明を添えた折り紙も売られていた。

早すぎる再開発や、抑え気味だが多少イデオロギーと関連づけた展示など、批判もあるかもしれないが、負の遺産をどう次の世代に伝えていくか、学ぶところは多い。当時の記憶を呼び覚ましたくない、という人は無理に行かなくていいと思うが、少しでも関心があるなら、行っておくべき場所だと感じた。

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館内の案内アプリもあって、事前にダウンロードしておくと、ロバート・デニーロによる解説を聴きながら回ることができる。日本語版もある(もちろんデニーロではないが)。ヘッドホンが必須となるが、音声だけでなく、文字でも表示できるので、英語が苦手で展示物の解説が読めない、という自分のような者にはとても役に立った。

11月にオープンした、全米一の高さを誇るワン・ワールドトレードセンター。複雑な思いで見上げる人も多い。

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9/11 Memorial Museumのウェブサイト
http://www.911memorial.org/




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2014年12月28日 (日)

The Phantom of the Opera (オペラ座の怪人)

12/28 20:00
Majestic Theatre

かなーり久しぶりにマンハッタンの怪人。いつ以来だろう?と考えてみたところ、たぶん初めてニューヨークに来たとき以来じゃないか。それは確か1996年末だから、実に18年ぶりである。

実は毎回「観ようかな」と思うのだが、滞在日数が限られているからどうしても新作や期間限定公演を優先してしまうため、お流れになっているのだ。

しかし今回は違う。意欲満々でチケットを確保した。何故ならノーム・ルイスがファントムを演じているからだ。

ノーム・ルイスを初めて観たのは2006年。久しぶりにブロードウェイに帰ってきた「レ・ミゼラブル」リバイバル公演だ。彼のジャベールはなかなかの評判を呼んでおり、楽しみにして劇場へ向かったのだが、なるほど演技と歌声に深みがあり、その心の葛藤がにじみ出ているような、魅力的なジャベールだった。その後、彼はレ・ミゼラブル25周年コンサートのジャベールにも抜擢されているので、いかに評価が高かったかはお分かりいただけよう。

そして2年後、再び彼の姿を見るチャンスがあった。失敗作に終わった「リトル・マーメイド」でトリトン王を演じていたのである。ところが、この時はトリトン王がアンダーで、再会は叶わなかった。

というわけで、ノーム・ルイスがファントムを演じるというニュースが流れてから、もういてもたってもいられなくなっていたのだが、何とかこのホリデーシーズンまで続投を続けてくれた。何とも有難い話である。

ちなみに、ノーム・ルイスのファントムデビューと同時に、シエラ・ボーゲスがクリスティーヌ役に復帰。シエラ・ボーゲスはオペラ座の怪人25周年コンサートでクリスティーヌを演じている。そして「リトル・マーメイド」のアリエル役をほぼ完投したことでも知られる。つまりノーム・ルイスとは久々の「親子共演」だったわけだ。

残念ながらシエラ・ボーゲスの登板は期間限定だったため、今回は見られなかったがいたしかたない。昨年、ラミン・カリムルーやレア・サロンガと一緒に来日したときに見ているからよしとしよう。

さてその念願のノーム・ルイスのファントムはどうだったか。

もうね、言葉がありませんよ。ファントムってこういう役だったんだと深く思い知らされました。

登場からいきなりハイテンションで、「激情の怪人」という印象。演出は同じでも、演じる人によって当然異なってくるファントム。我儘な芸術家のようだったり、闇を統べる帝王のようだったり、マッド・サイエンティストのようだったり。ノーム・ルイスのファントムは、強く幼児性を感じさせるものだった。実は、前回(といってもずいぶん前だけど)、ブロードウェイで観た怪人もそうだった。そのとき、自分にはこのファントムの解釈がいちばんしっくり来るな、と生意気にも感じた記憶がある。(そういうどうでもいい記憶はきちんと残る)

歌声もステキだが、ノーム・ルイスの魅力はやはり演技にあると思う。その演技、序盤からずっとやや抑え気味だった。激情型なのに抑え気味、とは矛盾しているかもしれないが、そう感じたのである。

なるほど、こういう感じで最後まで行くのか、と思っていたら、違った。

最後の最後、あのクリスティーヌとのキスシーンから、突然フルスロットルになった。それまで貯めていたエネルギーを一気に放出したのだ。

幼児性を感じさせるファントムだと、あのキスシーンはとても重要な意味を持ってくる。数秒間の中で、ファントムは子供から男になり、そして大人になる、という2段階変身をするのだ。

しかし、ノーム・ルイスのファントムは、子供から男になり、男から大人になり、そのうえでまた子供になる、という「3段階変身」を見せた。これには圧倒された。

最後の「Christine, I love you」があんなに感動的に響いたのは、これまで何十回とこの作品を観てきて初めてのことだ。正直、ちょっと涙出た。これは年のせいかな?

ノーム・ルイスの怪人、ぜひともまた観たいものだ。

あと、ちょっと蛇足な話。カルロッタ役のMichelle McoNNEllもとても良かった。若い感じだな、と思ったらこれがブロードウェイデビューとか。

このエントリー(http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2006/01/post_2c96.html)でちょっと書いてるけど、自分はカルロッタという役が結構、というかかなり好きなんである。カルロッタは、単にお高くとまった大女優ではない。実力があり、少し性格に難があってもオペラに取り組む姿勢は真摯なものがある。すぐに拗ねたりするところは、面倒くさいというより、ちょっとかわいい。カルロッタが嫌な人にしか見えないときもあるが、その上演回は失敗だと言っていい。

そもそも「ドン・ファンの勝利」でなぜピアンジだけが殺され、カルロッタは殺されなかったのか。どちらかというと、直接クリスティーヌをいじめていたカルロッタのほうが怪人のデスノートでは上位に書かれてしかるべきだ。

これは実は単純な話だ。ドン・ファンの勝利の上演に際して怪人は何と言っていたか。ピアンジには「せめて痩せろ」。カルロッタには「演技を真面目にやれ」。その指示に従えなかったピアンジは殺され、従ったカルロッタは生き延びたのだ。芸術に関しては怪人は非常にドライで、シンプルな思考を持っている。

ドン・ファンの勝利の中で、カルロッタはソロもないアンサンブルの役を、実に真面目に、そして楽しそうに演じている。ああ、この人いろいろ言ってるけど、本当はオペラが大好きなんだな、と伝わってくるお気に入りのシーンだ。こんどオペラ座の怪人を観る機会があったら、ぜひこのときのカルロッタに注目してほしい。

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The Phamtom of the Operaのウェブサイト
http://www.thephantomoftheopera.com/

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Here Lies Love(ヒア・ライズ・ラブ)

12/28 17:00
The Public Theater

かつてフィリピンを牛耳っていたマルコス大統領の妻、イメルダ夫人。歴史的な悪女として世界的に有名になった人物だ。その人生には多くのクリエイターが刺激を受けるようで、多くの小説や舞台の題材となってきた。

現在、パブリックシアターで上演されている「Here Lies Love」も彼女を描いた作品だ。トーキングヘッズの元メンバーで、坂本龍一とともに「ラストエンペラー」の音楽を手掛けたデビッド・バーンがファットボーイ・スリムとコラボして創り上げたコンセプトアルバム「ヒア・ライズ・ラブ」を舞台化したもの。2013年の初演が高い評価を受け、再演となった。フィリピンの台風被災者支援のチャリティー公演も行っている。

これを観るために、地下鉄に乗って8丁目へ。パブリック・シアターに入るのは初めてだが、その前は何度も通り過ぎている。この向いにブルーマンの劇場があり、いい目印になっているからだ。

この日4本目ではあるが、居眠りなんかしない。いや、できない。何しろこの作品の上演には、座席がない。

オールスタンディングの空間に、バブル期のディスコのお立ち台のように舞台がしつらえてあり、その上で俳優たちが演技する。

そしてDJがマシンガントークを繰り広げながら、ノリノリの音楽をかけて進行していく。雰囲気は完全にクラブだ(行ったことないけど)。

そして出演俳優はほぼオールアジア系。これは快挙というか、きわめて珍しいことらしい。

ホール内に入ると、開演前から大音量で音楽がかかり、こりゃバーも欲しいな、と思ったらちゃんと用意されている。一杯飲みながら開演を待てるわけだ。俺は飲めないけど。

始まると、お立ち台はスタッフの手によって人力で移動し、その度ごとに観客たちは右へ左へと移動する。これはしかもお立ち台は人力で移動し、そのたびに観客はスタッフの指示に従って右へ左へと移動する。デ・ラ・グアルダの「フエルサブルータ」(2回観た。このときこのとき )と同じシステムだ。

そしてそこには大きな意味がある。観客たちはイメルダ夫人を見守る傍観者、ときに熱狂して国の行く末を大きく変える民衆の役を与えられているのだ。

これは、ちょうど「エビータ」の劇団四季による上演(2005年の新演出)と同じ手法だ。

その手法だけでなく、この作品の物語はエビータに通じる点が多い。もともと女性が権力を握っていく話だからどうしても似てしまうが、ニノイ・アキノがマガルディとチェを足したような感じで登場したりもする。別にパクっているわけではないが、かなり意識しているのが伝わってくる。

この作品、音楽が実にいい。ワールドミュージックに造詣の深いデビッド・バーンの手による曲は、どこかアジアンなテイストで、同じアジア人である自分の心の琴線に触れる。ゼントラーディー人の遺伝子に組み込まれたプロトカルチャーの記憶が、リン・ミンメイの歌によって呼び覚まされていくようだ。

その曲が、ファットボーイ・スリムの手によってダンスミュージックにアレンジされている。外側はノリノリのクラブサウンドだけど、中身はアジアン。この味わいが絶妙である。

上演時間は90分。会場内を右往左往しながら楽しんでいるうちに、あっという間に終わってしまう。面白かったー。この単純に「面白かった」と言わせる作品に、久しぶりに出会った気がする。

この作品を特徴づけるクラブ風の演出は、イメルダ夫人の極彩色の半生(注、彼女はまだ現役バリバリの政治家です)を描くのにはぴったりと言える。だが、意図したものかどうかわからないが、それ以外の感想もある。

自分もそうだけど、アジア系の人たちだけで欧米発のカルチャーにどっぷり浸かっていると、そこには自然と「違和感」が生じる。別にいい、悪いの話ではないし、今の日本のカルチャーの大部分はそうなわけだが、これは現実としてある。欧米人だけのアニメイベントに違和感を感じるのと一緒だ。

人は、そしてその集団は、時として傍から見ると「変な行動」を取るときがある。それは本人たちには分からない。しかも、その「変な行動」は、国を変えるほどのパワーを発揮する。このクラブ演出が感じさせる「違和感」は、それを強烈に思い起こさせるのだ。

あと、これはいつものことだけど、この観劇終了後の充実感は、この再演でイメルダ役に抜擢されたJaygee Macapugayがとっても魅力的だったのと無関係ではない。ずっと「ジュリアナ東京みたいだなー」と思っていたら、フィナーレでワンレンボディコン姿で登場し、思わずのけぞった。

ああ、これまた観たいなあ。来日公演やってくれないかな?日本人による翻訳公演でもいいけど、できればJaygeeの姿を見たいです。

ちなみに「Here Lies Love」は、イメルダ夫人がかつて自分の墓標にはそう刻むよう命じた、とされている言葉だ。

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ヒア・ライズ・ラブのウェブサイト
http://herelieslove.com/

Jaygee Macapugayのツイッター
https://twitter.com/jaygeemacapugay

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The River(ザ・リバー)

12/28 15:00

Circle in the Square

ヒュー・ジャックマンが「美女と野獣」などに出演していたことはよく知られているが、最近もちょくちょくブロードウェイに顔を出している。2011年のホリデーシーズンにはワンマンショーをやっていたし、今年のトニー賞では司会を務め、そのエンターテイナーっぷりをいかんなく発揮していた。

映画の宣伝で来日したときも、サービス精神にあふれた受け答えで好感度を高めている。「レ・ミゼラブル」のときはプロモーションで一度来日したあと、皇太子殿下を招いての試写会のために再びやってきて紳士なふるまいを見せていた。

そんなヒュー・ジャックマンがこの年末にも舞台に立つという。これは観ない手はない。

彼はもともとこっちの人だったわけだが、近年、ハリウッドスターがストレートプレイやミュージカルに出演する機会は増加しており、今年はトム・ハンクスもブロードウェイデビューを飾った。そして年明けからは世界のケン・ワタナベが「王様と私」に出演する。

ミーハーな自分としてはついチケットに手が伸びるところで、2008年には「エクウス」でダニエル・ラドクリフの全裸姿を見ているし、2010年にはあのアル・パチーノの「ベニスの商人」を観た。

「エクウス」
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2008/12/equus-8b35.html

「ベニスの商人」
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2010/12/the-merchant-of.html

今回もヒュー・ジャックマンを直に見られるというだけでチケットを取ってしまったが、その演目はやや重い。ミュージカルではなく、ストレートプレイ。英国出身の気鋭の劇作家にして、映画界からも熱い注目を注がれているジェズ・バターワースの「ザ・リバー」は、イギリスでは2012年に上演され、話題となった作品だ。

登場人物は3人だけで、上演時間も1時間25分と短い。その物語は難解で、ミステリーとも、サイコ・サスペンスとも、不条理劇とも取れるものだという。

ただでさえ英語の壁があるのに、そこに分かりにくさが加わってはお手上げだ。観るのやめようかとも思ったが、何事も経験である。年明けには東京でも岡本健一主演で上演されるといから復習はできそうだ。そして調べたら、予習の道も開けた。脚本がペーパーバックとして売られていたのである。さっそくアマゾンで注文。

到着したのは薄い本(そっちの薄い本ではない)だった。しかも脚本だから長い文章もなく、読みやすい。これなら楽勝、と思って読み始めたが、楽勝なのは最初だけで、どんどん「?」なやりとりが出てくる。セリフもどんどん長くなる。詩のような抽象的な表現も多くなり、さらには詩そのものも多用されている。英検4級の実力をいかんなく発揮して辞書を引きながら繰り返し読むが、さっぱり分からない。

というわけで「どうせ日本語で観ても訳わからないだろう。だったら英語で観ても同じだ」と開き直って劇場へ。

このサークル・イン・ザ・スクエア」は、今はなき青山円形劇場のような作り。大きさもちょうどそんなもの。きわめて演劇的な空間だ。ちなみにこの劇場は「ウィキッド」がロングランされている大劇場、ガーシュイン劇場と同じ建物の地下にある。青山劇場と青山円形劇場のような関係だと思ってくれればいい。

中に入ると、コンパクトな空間にぎっしりと席が並び、その中央に舞台がしつらえられ、観客は3方向から見つめる形になる。最前列と舞台の間は数十センチ。AKB劇場の最前と舞台との距離よりも近い。

実に演劇的な空間。もうそこにいるだけでテンションが上がってくる。

やがて開演。脚本を読んで想像していたとおり、流れる川の音に乗せて、静かに男女3人の物語が始まる。軽口をたたく場面では笑いも起き、意外に重い雰囲気にはならない。そこにはヒュー・ジャックマンのパーソナリティーも影響しているのだろう。

そして、その明るいキャラクターが、物語が進んで展開がナゾめいてくると、別の効果を発揮してくる。だんだん「訳の分からないヤツ」に見えてきて、それがいっそうナゾな雰囲気を深めていくのだ。ハリウッドスターのオーラと、鍛え上げられた筋肉隆々のボディーを身にまといながら、淡々としたセリフと「静」の演技だけで観客にアピールする。そこに凄まじい気迫すら感じられる。

全体像が把握できないまま、時折笑いも交えながらセリフのやりとりだけが延々と続く雰囲気は、どこか「スルース(探偵)」にも似てるな、などと感じながら観ていた。

確かに難解で、けっきょく最後まで訳がわからなかったのだが、脚本を読んだときに全く気付かなかった、ある要素が用意されていた。これは驚いた。それが今回の公演での演出なのか、もとからそうなのかは分からない。しかし、これによって、演劇というものが脚本だけに規定されるものではないことを改めて理解した。

ヒュー・ジャックマンという役者の深みを目の当たりにして、ますますファンになってしまったが、この「ザ・リバー」という作品にも大いに関心が出てきた。2月の岡本健一の舞台、観に行こうっと。南沢奈央も出るしね!

この「サークル・イン・ザ・スクエア」という空間も最高だった。久しぶりにまた演劇らしい演劇を観たくなった、というのも南沢奈央の次ぐらいに2月の舞台を観に行きたくなった理由のひとつだ。

そして同じ建物にあるガーシュイン劇場では、ブロードウェイの中でも一、二を争うキャパシティーを誇る空間を、ウィキッドが10年以上も埋め続けている。この2つの劇場の関係性がまた素晴らしい。

一方で、多くの名作を生み出してきた青山劇場と青山円形劇場は、年明けに閉館が決まっている。

1972年オープンの劇場で、21世紀最大のヒット作を上演し、同じ建物にある実験空間にハリウッドスターが出演する国と、1985年オープンの劇場を「老朽化したから」と閉鎖する国。

その違いは、資本のことだけではあるまい。われわれ観客を含めた演劇、エンターテイメントにかかわるすべての人に突き付けられた課題として、大いに考え直す必要がある。

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ザ・リバーのウェブサイト
http://theriveronbroadway.com/

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The ILLUSIONISTS(ザ・イリュージョニスト)

12/28 11:00
MARQUIS THEATRE

一度、米国でマジックショーを観てみたいものだと思っていたが、ちょうど泊まっているMrriott Marquis併設のシアターで上演されていたのでチケットを予約した。この劇場は3回目。一度目は、さんざん自慢しているけどジュリー・アンドリュースが出演した「ビクター・ビクトリア」。2回目は2012年の「エビータ」。リッキー・マーチンがチェを演じたやつだ。

「エビータ」
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2012/12/evita-52ec.html

このThe ILLUSIONISTは、それぞれ技も個性も異なる7人のマジシャンたちをそろえてユニット化し、世界各地で公演を続けているもの。人気は高く、今回の公演も発売週の売上は相当なものになったとPlayBillが伝えていた。欧米ではマジックショーはエンターテイメントの大きなジャンルのひとつだ。

それにしてもマジックショーなんて観るのは、90年代に東京国際フォーラムでデビット・河童―フィールドを観て以来だ。わくわくして開演を待つ。するといわゆる「前説」が始まった。今後、同じ構成を観る人もいるかもしれないので詳しくは書かないが、この前説からいきなり面白い。そして幕が上がると、7人が音楽に乗って入れ代り立ち代り次々に技を披露する。この前説からオープニングの流れで一気に引き込まれた。

続いてそれぞれのソロタイムに。ずっと観客と喋りながら技を見せる人、音楽に乗ってパフォーマンスする人など演出も全く異なる。客いじりあり、胴体切断あり、CGなどのテクノロジーあり、命がけの脱出ショーあり、カードを使った細かいマジックあり、とにかく飽きさせない。

7人はそれぞれ著名な実力あるマジシャンだが、このユニットでは「The Manipulator」「The Warrior」「The Trickster」といったようにコードネームが与えられている。古きよき時代の刑事物や「ザ・ハングマン」などを観て育った世代には、これだけでわくわく感倍増である。構成が実にうまい。

マジックは、基本的な技を鍛錬によって継承しつつ、錯覚や数々の演出を取り入れ、新たな感動を作り出していくエンターテイメントだ。その「見せ方」の工夫は無限大。そこには演劇やミュージカル、コンサートなど、他のライブエンターテイメントにも生かせる知恵と技とが凝縮されている。このマジックが、日本であまり大きなジャンルにならないのは何故だろうか?そこに、日本という国におけるエンターテイメントに対する考え方の違いがあるような気がしてならない。

そこはちょっと時間をかけて考えてみよう。とりあえず、今後は積極的にマジックを観に行こうと決心した。

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ザ・イリュージョニストのウェブサイト

http://www.theillusionistslive.com/

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2014 Radio City Christmas Spectacular(ラジオシティ クリスマス・スペクタキュラー 2014)

12/28 9:00
Radio City Music Hall

ニューヨーク2日目、きょうは体力の限界に挑む日だ。1日に5本もの舞台を観る予定である。

1本目は恒例、ラジオシティ・ミュージックホールのクリスマス・スペクタキュラーだ。季節感あふれるショウは何度観ても楽しい、というのは言い訳で、当然ロケッツのお姉さん目当て。

ちなみに4回目。

2012年
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2012/12/2012-radio-city.html

2010年
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2010/12/2010-radio-city.html

2006年
http://kingdom.cocolog-nifty.com/dokimemo/2006/12/2006_radio_city_aa21.html

基本的な構成はほぼ同じだが、少しずつ変化もある。その微妙な変化を見つけつつ、麗しいお姉様たちをニヤニヤ笑いながら眺めるのがこのショウの正しい鑑賞方法だ。

2年前のときは、後半のクリスマスプレゼントのくだりが、立体映像を使ったものになっていたが、それはなくなっていた(冒頭にも立体映像があるが、それは継続)。それにしても、くるみ割り人形のときのあの可愛くないぬいぐるみ、いつまで使い続けるんだろう。

今回は、ショウの内容よりもチケット面で大きな変化があった。昨年からなのかもしれないが、Eチケットの導入である。

ブロードウェイのショウはだいたいチケットマスターかテレチャージが扱っているが(日本のように複数のエージェントが扱うのではなく、どちらかが独占)、テレチャージが数年前からPDFのEチケット化を進めているのに対し、チケットマスターではその導入が遅れていた。テレチャージは舞台が中心だが、チケットマスターはスポーツやコンサートがメインなので、そのあたりの違いだろう。

しかし、チケットマスターも公演によってEチケットの導入を始めたようで、この公演も対象となっていた。

これまではチケット受け取り→入場列に並ぶ、という手順だったが、何しろ人が多いので大混雑している。受け取りが省略できるだけでもありがたい。入場列は劇場の外に作られ、それなりに長い時間待たなくてはいけない。じゃあぎりぎりに行けばいいんじゃないかと思うかもしれないが、それだと開演に間に合わない恐れがある。実際、始まってからもどんどん人は入ってくる。

このショウは撮影OK。とはいえ周囲の迷惑にならないようにするのは当然のマナーなので、カメラ構えっぱなしというわけにはいかない。

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日本でこのショウがあったら、ロケッツ目当てのカメラ小僧たちで前列ぎっしりになりそうだが、お国柄だろうか、オタクとリア充の生息地がきっちりしているのか、あまりそういう人も見当たらない。春にスプリング・スペクタキュラーというショウを上演するそうだから、ロケッツ人気はそれなりにあるのだろうが、運営側もあおったりはしないのだ。ロケッツ総選挙とか、やってほしくないものだ。

自分が観た第1部の開演は朝9時。ショーを観る時間じゃないよな。なんばグランド花月の土日公演は9:45開演なので、9:30には前説が始まるが、もっと早い。NGKで朝いちばんの回を観たとき、海原やすよ・ともこが「人が笑う時間じゃないでしょ」と話していたが、本当にその通りだと思った。

ラジオシティ クリスマス・スペクタキュラーのウェブサイト
http://www.radiocitychristmas.com/

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